カーリング女子決勝【試合詳細】日本は銀 2大会連続のメダル

北京オリンピック、カーリング女子の決勝で日本はイギリスに3対10で敗れ、銀メダルとなりました。日本は前回大会に続いて2大会連続のメダル獲得で、男女を通じて過去最高の成績となりました。

相手のイギリスには前回のピョンチャン大会の3位決定戦で勝って銅メダルを獲得していますが、今大会の予選リーグでは4対10で敗れています。

試合は序盤、互いにミスの少ない緊迫した展開となりましたが第5エンドでイギリスに狭い隙間を縫って絶妙なドローショットを決められ、有利な後攻から1点をスチールされました。これで日本が1対4と3点をリードされて試合を折り返しました。
後半に入ってもなかなか主導権を握れず、2点を追う第7エンド、スキップの藤澤五月選手が、最後のショットで相手のストーン2つを一気にはじき出す「ダブルテイクアウト」をねらいましたが成功せず、イギリスに4点を取られてしまいました。
6点を追いかける苦しい展開となり、有利な後攻の第8エンドも1点にとどまりました。
そして第9エンド、イギリスに2点を追加されたところで日本は負けを認め、3対10で敗れて銀メダルとなりました。

敗れた直後、日本の選手たちは目に涙を浮かべながらもイギリスの選手と握手をしたり抱き合ったりして健闘をたたえ合っていました。

日本は前回のピョンチャン大会に続いて2大会連続のメダル獲得です。
また、男女を通じて過去のオリンピックで最高の成績となりました。

銅メダルはスウェーデン

※決勝得点経過※ 
             計
日本|01000|1010×|3
英国|20011|0402×|10

表彰台では隣の選手にメダルかける

決勝の試合が行われたあと、上位3チームが参加する記念のセレモニーが行われました。日本の選手たちは試合後には涙を流していましたが、笑顔で手をつないで表彰台に上りました。

選手たちは順番に銀メダルを受け取ると、自分の首ではなく隣の選手の首にかけていきました。
最後にスキップの藤澤五月選手がフィフスの石崎琴美選手の首にメダルをかけ、全員で獲得したメダルを象徴するような光景でした。
そしてイギリスの国歌が流れる中で国旗が掲揚され、日本の選手たちは拍手でたたえていました。

選手談話 藤澤「こんなに悔しい表彰式ってあるんだなって」

スキップの藤澤五月選手は「こんなに悔しい表彰式ってあるんだなって初めて感じた。4年前は勝って終わって表彰台に上がって、あの時はうれしい気持ちもあった。4年前とはメダルの色も変わったけれど正直、まだ悔しさの方がある」と複雑な表情でした。それでも「ここまでこのメンバーで最終日までプレーできたことがうれしかったし、このチームを本当に心から誇りに思う」と涙を浮かべながら話しました。

リードの吉田夕梨花選手は「負けてはしまったが、4年前に立ったアイスに4人で戻ってこれた。アイスに乗っているのは4人だけだが、本当にいままで支えてくれたみんなとアイスに乗れたと思う。このチームでファイナルに上がれたことを誇りに思うし、ファイナルはいいな、楽しいなと思った」と話していました。

銀メダルを獲得した日本のセカンドの鈴木夕湖選手は「正直私たちのベストパフォーマンスをすることができなかったので、結構悔しい思いはあるが、ここに来るまでに本当にたくさんの方々にサポートしていただいたので、銀にはなってしまったが、日本で勝ち取ったメダルなのかなと思った」と結果をかみしめました。

サードの吉田知那美選手は「今はゲームや自分に対してすごく悔しい気持ちがあるが、この1試合の負けですべてを否定するのはもったいないと思う。4年間よく頑張ってきたなと感じる」と目に涙を浮かべながら話していました。

試合への出場はなかったものの「フィフス」として選手たちを支えてきた石崎琴美選手は「みんなのおかげでいろんな経験を大会中もさせてもらって、こんなすばらしいメダルまでもらって、本当に幸せです」と話していました。

代表選手のチームの代表 本橋麻里さんがねぎらいのコメント

カーリング女子日本代表の今のチームの代表を務めている本橋麻里さんが今大会の結果について「銀メダルという結果でしたが、課題もあったと思います。成績として前回の上をいけたのは、選手の努力、スタッフの努力、チームを支える人たち皆の努力と願いが形に残ったのだと思います」とコメントしました。
また「選手ひとりひとりが強さと弱さに向き合ってきたこの4年でしたが、成熟度が増して世界で戦えるチームになったと感じています。コーチのレベルの高い作戦を、選手たちがよく理解して氷やストーンを読めていたのは長く積み上げてきた関係があったからこそ出来る意思疎通を感じました」としています。
そして「最後につらい状況になった時の切り替えの速さ、集中力の持っていき方は尊敬しかないです。早くみんなに会いたいです。早く帰ってきてください。みんな、おつかれさま」とねぎらっていました。

【決勝 試合詳細】

試合前 リラックスした表情も

試合前、日本の選手たちは集まって記念写真を撮るなどしてリラックスした表情を見せていました。
そして、練習時間でストーンやアイスの状態を確かめたり、ストレッチをするなどして試合の準備を進めていました。
藤澤選手は毎試合、右手に自分を鼓舞するようなことばを書いていて、今回も文字を書いているのが見えます。
一方、イギリスの選手たちも会場の状態を確認したり、選手どうしで話し合いをしたりしていました。

試合開始 予選リーグ順位下位の日本は不利な先攻

日本時間午前10時5分に試合が始まりました。
両チームはバグパイプの音色に合わせて入場しました。選手たちはカメラに向かって、笑顔で手をふり、「声出していこう!」とか「コミュニケーションね!」などと声を掛け合っていました。
日本は予選リーグの順位でイギリスを下回っているため、第1エンドは不利な先攻となります。

第1エンド 日本 0-2 イギリス(後攻)

先攻の日本、まずは相手を1点に抑えたいところ。
しかし相手のスキップ、ミュアヘッド選手が1投目で日本のストーンにほぼ縦にピタリとつける「フリーズ」を決め、いい位置にナンバーワンを作りました。
対して日本のスキップ、藤澤選手は最後の1投でこのストーンにくっつける「フリーズ」をねらいました。このショットはナンバーワンにはなりましたが少し並びとはずれてしまう形になってしまいました。
これで円の中心付近にナンバーワン、スリーが日本、ツーがイギリスという状況。
ここでミュアヘッド選手に最後の1投、日本のナンバーワンだけを押し出す見事なショットを決められました。日本は2点を先制され、第2エンドは後攻です。

第2エンド 日本(後攻) 1-2 イギリス

有利な後攻で複数得点をねらいたい日本。しかし相手も正確なショットを重ね、ハウスの中に複数のイギリスのストーンがある状況をなかなか崩せません。
それでもスキップ藤澤選手が1投目でイギリスの3つのストーンのうち2つを一気にはじき出す、ダブルテイクアウトを決めました。
このあと円の中にイギリスのストーンが2つだけと変わり、藤澤選手の最後の1投。理想は次のエンドも後攻になるため2つのストーンをはじきだし、自分のストーンも出してブランクエンドにすることでした。
しかし、はじき出せたのは惜しくも1つだけ。
日本は1点を獲得し、第3エンドは先攻に変わります。
このエンドまでのショット成功率は日本が78%イギリスが89%です。

第3エンド 日本 1-2 イギリス(後攻)

両チームの3人目の「サード」が1投目でそれぞれ相手のストーン2つをはじき出すダブルテイクアウトを決め、円の中にストーンがたまらない展開になります。
スキップの藤澤選手とミュアヘッド選手も相手のストーンをはじき出していき、藤澤選手の2投目を終えた時点で円の中は日本のストーンが1つだけ。
ミュアヘッド選手は最後の1投で日本のストーンをはじきながら自分のストーンも外に出しました。両チームに点が入らない、ブランクエンドとなり、次のエンドも日本が先攻です。
互いにミスの少ない、緊迫感のある好ゲームとなっています。

第4エンド 日本 1-3 イギリス(後攻)

日本とイギリスのストーンが交互に縦方向に4つ並び、イギリスがナンバーワン、日本がナンバーツーという形で両チームのスキップに回ります。
藤澤選手は1投目で相手がドローショットでナンバーツーを取りに来るラインを消す位置にストーンを置きにきました。しかしこれは滑りすぎて、ねらいどおりの位置で止まりません。しかし、相手スキップの1投目もやや短くなってナンバーツーは作れませんでした。
そこで藤澤選手は2投目、今度はしっかり相手にナンバーツーを取らせない位置にガードストーンを置きました。このストーンが効果的で、イギリスの最後の1投もナンバーツーにはなりません。日本は初めて先攻でねらいどおり相手に「1点を取らせる」エンドを作りました。
このエンドまでのショット成功率は日本が86%イギリスが87%とほぼ互角です。

第5エンド 日本(後攻)1-4 イギリス

複数得点がほしい日本ですが、相手に円の中にストーンをためられてしまいました。
最後の1投、イギリスのスキップ、ミュアヘッド選手に狭いストーンの合間を通す形でドローショットを決められ、イギリスがナンバーワン、ツー、フォーという苦しい形になりました。
藤澤選手は最後の1投でここで密集するイギリスのストーンを一気にはじき出す難しいショットで複数得点をねらいに行きました。
しかしこのショットは1つしかはじき出せず、ナンバーワンの位置にも置くことができませんでした。
日本はスチールで1点を奪われ、3点を追いかける展開となりました。

ハーフタイムで作戦会議

おなじみの「もぐもぐタイム」も今大会最後です。第5エンド終了後のハーフタイムで日本は後半に向けての作戦を話し合い、笑顔でハイタッチをしていました。食べていたのはようかんなどです。
ここまでのショット成功率は、日本は83%、イギリスは88%となっています。日本は大きなミスはないものの、相手の正確なショットに苦しめられ、難しいショットを強いられる展開が続いています。
日本は有利な後攻から始まる第6エンド、複数得点をねらいにいきます。

北海道 地元北見の練習拠点などで応援も

チームの練習拠点、北海道北見市常呂町にある「アドヴィックス常呂カーリングホール」では40人ほどが訪れ、金メダルをかけた一戦を見守っています。
北見カーリング協会の久世和徳会長は「決勝にふさしい戦いをしていると思います。いつもどおりの戦いをしていけば、チャンスが巡ってくると思います」と話していました。

第6エンド 日本(後攻)2-4 イギリス

またしても円の中にイギリスのストーンがたまっていく展開。
それでも藤澤選手は第1投で相手のストーンの内側にストーンを置き、出しにくい位置にナンバーワンを作りました。
これに対し、イギリスは最後の1投で日本のナンバーワンをはじき出すテイクアウトショットではなくナンバーワンを奪い返すドローショットを選択し、正確に決めていきます。
イギリスがナンバーワンとスリー、日本がナンバーツーを持っていて日本はナンバーワンを少し押し出せば、2点を取れる場面。ただ、藤澤選手のラストショットはわずかにずれ、相手のストーンだけでなく日本のストーンも押し出してしまいました。日本は惜しくも1点にとどまってます。

第7エンド 日本 2-8 イギリス(後攻)

慎重な試合運びを進めていた日本ですが、わずかなミスから試合が大きく動きました。
円の中にイギリスのストーンが3つ、日本のストーンが1つという状況で藤澤選手は最後の1投、イギリスのストーン2つをはじき出す「ダブルテイクアウト」をねらいました。
しかし、これが失敗に終わり、相手のストーンを3つとも残してしまったうえ、投げたストーンは外に出てしまいます。
相手は最後の1投、1つ残っていた日本のストーンをきっちりはじき出して一挙4点を獲得。日本は残り3エンドで6点ビハインドという非常に苦しい展開となりました。

第8エンド 日本(後攻)3-8 イギリス

日本は円の中にストーンをためたいところですが、相手の正確なテイクアウトショットでことごとくはじき出されてしまいます。
苦しい形でしたが藤澤選手は第1投、円の中にたまっているイギリスのストーン2つの裏に隠すように「カム・アラウンド」を決め、ナンバーワンを作りました。藤澤選手のコントロールに加え、吉田知那美選手の指示や吉田夕梨花選手と鈴木選手のスイープが効果的に働き、日本の持ち味を出したナイスショットでした。
ただ、イギリスも最後の1投で日本に複数得点をさせないために2時方向にドローショットのラインを防ぐストーンを置きました。藤澤選手は最後の1投で逆サイドからドローショットをねらいましたがこれは成功せず、日本は1点獲得にとどまりました。
日本はこの試合、まだ複数得点を獲得したエンドがありません。

第9エンド 日本 3-10 イギリス ※日本がコンシードし決着

このエンド、なんとかスチールしたい日本。
しかし、イギリスは落ち着いて日本のストーンをテイクアウトショットで円の外に出していきます。円の中のストーンはイギリスが3つ、日本が1つとなり、藤澤選手の最後の1投を迎えました。藤澤選手は相手の3つのストーンを一気にはじき出しにいきましたが相手のナンバーワンは残ってしまいます。そしてイギリスに最後の1投、ドローショットでナンバーツーを置かれ2点を奪われました。第9エンド終了時点で日本がイギリスに握手を求め、負けを認めました。

堂々のプレーで日本のカーリングの歴史を変える「銀」

カーリング女子の日本代表は、北京オリンピックの決勝で敗れはしましたが、銀メダルを手にしました。北海道から世界最高のチームになることを夢見て巣立った道産子たちがオリンピックの大舞台で堂々のプレーを披露しました。
ピョンチャン大会の銅メダルを獲得したあと、さらなる成長の場を求めてカーリングの本場、カナダなどで長期にわたる強化合宿や、ヨーロッパでの最高峰の大会を転戦して来ました。世界からマークされる存在となったあとも互いに支え合い、ときに意見が食い違うときは納得するまで話し合う自然体の楽しいカーリングを忘れずに、ひたむきに1つのストーンを追いかけてきました。
今回の北京オリンピックでは「私たちが故郷で学んだ楽しいカーリングを見せる」と、子どもの頃から変わらないカーリングへの純粋な心を胸にひとつひとつの試合と真剣に向き合い決勝にまで勝ち上がりました。そして、忘れなかった幼いころからの夢、故郷を巣立った時の思いを一途に抱きながら最後まで一丸となってプレーを続け優勝こそ逃したものの、前回大会を上回る銀メダルを手にしました。