人工透析患者 新型コロナ無症状や軽症は自宅待機に 都内

重い腎臓病などで人工透析を受けている患者は、新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすく、原則、入院とする対応がとられていますが、現在の感染の拡大で、東京都内では専用の病床が埋まり入院が難しくなっています。
このため、今月上旬からは、軽症の患者は自宅で待機し、かかりつけの施設に通って人工透析を受ける対応に切り替えられていて、現場の医師は緊急事態だとして危機感を強めています。

日本透析医会や日本透析医学会などでつくる合同委員会によりますと、人工透析を受けている患者で、新たに新型コロナに感染した人は先月13日までの1週間では全国で16人だったのが、27日までは190人、今月3日までは325人、10日までは415人、そして17日までは350人と急増しています。

このうち、東京都内では、17日までの1週間で78人の感染が確認されるなど、都内におよそ140床ある、透析治療とともにコロナの治療を行う専用病床が、先月下旬の時点から満床の状態が続いているということです。

こうした状況を受け、東京都は、重症や中等症の患者の入院を優先させるため、今月4日、都内の透析施設に対し、無症状か軽症で介助の必要がない患者は自宅待機として、かかりつけの透析施設で人工透析を行うよう求める文書を出し、原則、入院としてきた対応が切り替えられました。

東京都は、自宅で療養する患者を透析施設まで搬送するなど、患者を支援する対応を進めています。

合同委員会の委員長で、都内の透析の患者の入院調整を行っている菊地勘医師は「本当はすべての患者に入院してもらいたいが、今は重症度に応じた対応を取らざるをえない。まさに緊急事態で、患者が通院してきたときに体調の変化などをチェックしていくことが大事だ」と話しています。

新型コロナ患者受け入れのクリニックでは

合同委員会の委員長の菊地医師が院長を務める、東京・新宿区のクリニックでは、40人を超える患者が通院で人工透析を受けられる大部屋の中にテントで隔離できるようにしたブースを複数設けて、連日、新型コロナに感染した患者や、感染の疑いがある患者を受け入れています。

18日は、感染が確認されたあと、自宅で療養している40代の患者がクリニックを訪れ、一般の患者とは別の通用口を通って透析を行う大部屋に入り、部屋の端にある、空気が外に出ないようにしたブースの中で人工透析の治療を受けていました。

合同委員会によりますと、重症化リスクが低いとされるオミクロン株が主体の第6波でも、人工透析の患者はおよそ2割が酸素投与が必要とされる「中等症2」以上の状態になっているということです。

クリニックでは、患者が人工透析を受けている間も、防護服を着た看護師が体調に変化がないか聞き取り、血液中の酸素飽和度が低下していないかなどを確認していました。

菊地医師は「周囲のベッドと2メートル以上、間隔を空けたり、透析治療の時間をほかの患者とずらしたりして、空間的な隔離、時間的な隔離をすれば、一般のクリニックでも十分、コロナ患者に対応できる。症状が安定している人は、かかりつけの施設でなるべく見てもらい、重症者が入院できる体制を構築していかないと、今の状況は乗り切れない」と話しています。

人工透析患者の死亡率 「第6波」で2.7%と依然高く

日本透析医会などでつくる合同委員会の調査では、オミクロン株が拡大した先月以降の「第6波」で感染した人工透析の患者は、今月17日までに1386人いて、およそ2.7%にあたる少なくとも37人が亡くなったということです。

国内での感染が始まったおととし以降の死亡率は11.4%で、第6波では大幅に下がっていますが、第6波で感染した人全体の死亡率は0.1%ほどで、人工透析の患者は依然として高くなっています。

第6波での人工透析の患者の死亡率を年代別にみると、30代以下では亡くなった人はいませんが、40代がおよそ1.5%、50代がおよそ0.8%、60代がおよそ2.6%、70代がおよそ3.6%、80代以上はおよそ4.1%と年代が上がるにつれて高くなっています。
合同委員会の菊地勘委員長は「透析の患者の死亡率は、一般の患者と比べて相当高く、高齢や糖尿病の患者が多く免疫力も低下していることが背景にある。感染や重症化を減らすために3回のワクチン接種を早く進めること必要だ」と話しています。