新型コロナ対策 基本的対処方針変更 外国人の新規入国緩和へ

政府は、新型コロナ対策の基本的対処方針を変更し、オミクロン株対策として外国人の新規入国を原則停止してきた水際対策の緩和を新たに盛り込みました。

水際対策の緩和

変更された基本的対処方針では、オミクロン株に対する知見の蓄積などを踏まえ、来月1日から、現在の水際対策の骨格を段階的に緩和するとしています。

具体的には、
▽入国後の待機期間について、今の7日間を原則としつつ、3日目の検査で陰性が確認されれば、それ以降の待機を不要とするとしています。

▽オミクロン株の広がりが見られる「指定国・地域」からの入国者に求めてきた検疫所が指定する施設での待機期間は一律3日間とするとしています。

一方で、
▽3回目のワクチン接種を済ませた人は、「指定国・地域」からの入国者でも自宅での待機とし、「指定国・地域」以外からの入国者は待機を免除するとしています。

また、
▽原則停止してきた外国人の新規入国は、受け入れ責任者の管理のもとで観光目的以外の入国を認め、
▽一日当たりの入国者の上限を、今の3500人を5000人に引き上げるとしています。

子どものワクチン接種

5歳から11歳の子どもへのワクチン接種は、関係する政省令などを今月下旬に公布・施行したうえで行うとしています。

保健所業務の軽減

業務のひっ迫が指摘されている保健所の業務負担を軽減するため濃厚接触者や感染経路を調べる「積極的疫学調査」は、医療機関や高齢者施設など、特に重症化リスクが高い患者が入院・入所している施設で、クラスターが発生した場合に重点化するとしています。

医療提供体制・病床の確保

一方、重症化リスクが高い患者の病床を確保するため、入院後4日目以降に、酸素投与が必要な「中等症2」以上への症状の悪化が見られない患者は、宿泊施設や自宅での療養に切り替えるか、早期退院患者を受け入れるほかの医療機関への転院を検討するよう推奨するとしています。

また、高齢者施設で感染が確認された軽症の患者は、施設内で療養できるよう、医師や看護師を派遣するなど、医療提供体制を強化するとしています。

水際対策 来月から段階的に緩和へ

外国人の新規入国を原則停止している水際対策が、来月から段階的に緩和されることを受けて、末松文部科学大臣は、外国人留学生の円滑な入国に向け新たな措置の内容を大学に周知するなど、環境の整備に取り組む考えを示しました。

オミクロン株対策として、外国人の新規入国を原則停止している水際対策をめぐり、岸田総理大臣は17日、1日当たりの入国者の上限を、今の3500人から5000人にするなど、段階的に国際的な人の往来を増やす方針を示しました。

これを受けて末松文部科学大臣は閣議のあとの記者会見で「わが国への入国を待ちわびていた外国人留学生の入国を実現するうえでの第一歩になると考えているが、待機しているすべての留学生が入国するには、いましばらく時間がかかる」と指摘しました。

そのうえで「関係省庁と緊密に連携し、入国を希望する留学生が最後の1人まで入国できるよう着実に取り組みたい」と述べ、留学生の円滑な入国に向けて、新たな措置の内容を大学に周知するなど、環境の整備に取り組む考えを示しました。

松野官房長官「第6波の出口に向かって準備」

松野官房長官は午後の記者会見で「危機管理の要諦である最悪の事態を想定して対応にあたり、特にオミクロン株については、発生当初から慎重の上にも慎重を期すという考えのもとで対応してきた。来月1日からは基本的な条件を守りつつ段階的に緩和し、第6波の出口に向かって準備を進めていく」と述べました。

また、新年度からの外国人留学生の受け入れに向け、1日当たり5000人とする入国者の上限を、さらに引き上げるべきだという意見が与党内から出ていることについて「入国者の総数のさらなる引き上げは、入国需要の動向、検疫体制の整備や防疫措置の実施状況を踏まえて今後検討したい」と述べました。

自民 世耕参議院幹事長「1日も早く上限取り払いたい」

自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「1歩前進だが、1日当たり5000人の枠はまだ大きな障害だ。世界各国は上限をかけておらず、入国の扱いは基本的には相互主義に基づくべきだ。3回目のワクチン接種が済んでいる人は、検査キットを渡して自宅や宿泊先で検査してもらう体制に切り替えるなど、政府はあらゆる知恵を出して、1日も早く上限を取り払ってもらいたい」と述べました。

自民 福田総務会長「政府はいいバランスで判断」

自民党の福田総務会長は記者会見で「世界とつながる中で生きていく日本としては、もう少しアクセルを踏んでもいいと思うが、感覚論で『そろそろいいだろう』というのではなく、しっかりとしたファクトに基づいてやらなければならない。感染症対策と社会活動のバランスを取るという観点からすれば、政府はいいバランスで判断している」と述べました。

水際対策 緩和の経緯

オミクロン株の世界的な感染拡大を受け、政府は、去年11月末に外国人の新規入国を原則停止するなど、水際対策を強化しました。

岸田総理大臣は「オミクロン株は、まだ未知の部分が多く、G7=主要7か国で最も厳しいレベルまで引き上げた」と説明し、当初は、あくまで緊急避難的な措置だとしていました。

その後、国内ではしばらく比較的落ち着いた感染状況が続き、去年12月のNHKの世論調査では、8割を超える人が水際対策を「評価する」と答えました。

岸田総理大臣は、一連の水際対策について、さらに感染状況を見極めたいとして延長する意向を示し、最終的には今月末まで継続されることになりました。

一方で、ことしに入って国内でもオミクロン株の市中感染も相次ぎ、専門家からは効果を疑問視する声があがるようになりました。

また、経済界や与党などからは、世界各国の流れに逆行して、日本だけ厳しい措置をとり続ければ経済への打撃になると、早急な緩和を求める要望が相次ぎました。

さらに、多くの留学生が入国できない状況が続く中、欧米のメディアでは「サコク」という日本語でとりあげられる事態にまでなっていました。

こうした中で岸田総理大臣は、オミクロン株の特性に関する知見も蓄積され、ワクチン接種が今後さらに進むとみられるとして、来月から段階的に緩和することを決めました。

入国者数の上限の引き上げなど、さらなる緩和を求める声が出ていますが、空港の検疫体制が不十分だといった指摘や、感染の再拡大への懸念もあり、政府は難しい対応を迫られそうです。