コロナでも“使用済みおむつ”持ち帰らなきゃならないの?

コロナでも“使用済みおむつ”持ち帰らなきゃならないの?
保育園で子どもがしたうんちやおしっこ。

地域によっては、使用済みのおむつを持ち帰らなきゃならないって知っていましたか?

「おむつを持ったまま買い物に行くのが気が引ける」なんて声も。

コロナ禍の今もなお続くこの慣習、あなたはどう思いますか?

(大阪拠点放送局 井上幸子/ネットワーク報道部 鈴木有・斉藤直哉)

おむつ持ち帰り問題 ネットで議論に

「おむつ持ち帰りは、本当に、重い」
「夏場は特に帰り道の臭いがキツかった」
「母親が働くことへの罰なのかと思い涙が出た」

SNSでは保育園から使用済みおむつを持ち帰ることについて話題になっています。

双子は持ち帰るおむつもダブル

関西に住む5歳の息子と生後10か月の双子を育てている女性。
おむつを持ち帰らなくていい地域があることを知り、衝撃を受けました。

5歳の息子がおむつをつけていたころは、毎日、保育園から使用済みのおむつを持ち帰ってきました。

夏はにおいがするのでまわりに迷惑がかかるのではないかと思い、スーパーなどに寄ることはできなかったといいます。
この4月から双子を保育園に預ける予定ですが、持ち帰る使用済みのおむつも2人分です。
女性
「3人の子どもを連れて、またおむつを持ち帰らなくてはならなくなると思うとうんざりします。働く親が利用する施設なのに、おむつ持ち帰りはナンセンス。おむつを持ち運ぶことで感染対策としてどうなのかも心配です。園で処分をしてもらえたら」

子どもごとにおむつバケツ

一方、おむつを持って帰ってもらう保育園の側にも事情があります。

紙おむつを持ち帰ってもらっているという東大阪市のこども園。
トイレにはおむつ専用の棚があります。
子どもごとに分けたバケツがあり、お迎えに来た保護者が使用済みのおむつを持ち帰る仕組みです。

コロナ禍でもあり感染対策にも気を付けていて、空になったバケツや棚は、職員が毎日消毒をしているということです。
保育園の担当者
「おむつの持ち帰りは保護者に大変に負担をかけていると思います。一方で、ゴミは毎日回収に来てもらえるわけではなく、園のゴミ置き場では保管しきれません。夏場などはにおいも問題になる。保護者に持ち帰ってもらわずに使用済みの紙おむつを保管しておくのも、園にとっては大変な負担です」

東京23区は持ち帰りゼロ 関西は持ち帰り多数

地域ごとにどうなっているのか調査した団体があります。
その名も「保育園からおむつの持ち帰りをなくす会」。

去年4月から7月にかけて、関東と関西の8都府県の公立保育園の状況を調べました。
保護者が使用済みの紙おむつを持ち帰っているという自治体は、361自治体中168の自治体。47%にのぼりました。

東京23区では一つもありませんでした。
一方、関西では、京都が88%、大阪が65%、奈良が64%などとおむつを持ち帰る自治体のほうが多い状況でした。
保育園からおむつの持ち帰りをなくす会 東ネネさん
「コロナ禍で、使用済みおむつを持ち歩くことについて感染症対策の点で心配する親もいます。子育てしやすい社会にするためにも全国で紙おむつを持ち帰らなくてすむようにしてほしい」
持ち帰りのおむつをなくすための署名には、これまでに1万6000人を超える署名が集まったということで今後、厚生労働省に届けることにしています。

「おむつ持ち帰りやめました」

おむつを持ち帰らなくてもすむ自治体は増えています。

奈良県香芝市は、今月21日からおむつの回収事業をスタート。
市内に5か所ある公立保育所におむつを真空パックできる密封機を設置。
便のついたおむつは洗い流したうえでパックして保育所で保管し、一般ごみとして回収することになりました。
香芝市こども課 担当者
「保護者の方からの要望や議会の意見などもいただいて導入を決めました。新型コロナウイルスだけでなく、ノロウイルスや手足口病でも感染を広げるきっかけになってしまうので、子どもの健康を守るとともに保護者や保育士の負担軽減につなげていきたい」

「予算がない」「健康状態を保護者に知っていただく」

一方で、おむつは保護者が持ち帰るとしている自治体にもその理由を聞きました。

東京都国立市は保護者の要望を受けて、数年前からおむつの処分費用の予算を提案しているものの、予算上の理由からいまだに実現できていないといいます。

自治体のなかには、新型コロナ対策のための交付金などを活用しているところもありますが…
国立市児童青少年課 担当者
「衛生上の観点や保護者の負担軽減のためにも実現したいと考えている。コロナ対策の補助金などを使っても期限が過ぎたら市の負担になってしまうので、ほかの自治体の状況をみて検討していきたい」
神奈川県伊勢原市の担当者からは「子どもの健康状態を保護者に知っていただくため」という答えが。
伊勢原市子ども育成課 担当者
「布おむつ時代からお持ち帰りいただくことが続いていて、これまでに変更がないという状況です。ほかにも財源の問題などさまざまな要因があります。今後どうなるかわかりませんが保護者の方からの要望も特にありませんので、変更について検討していません」

厚生労働省に聞いてみた

自治体によってバラバラな対応。国はどう考えているのでしょうか。

「おむつ交換後、特に便処理後は、石けんを用いて流水でしっかりと手洗いを行う」
「交換後のおむつの保管場所について消毒を行う」

厚生労働省が出している『保育所における感染症対策ガイドライン』
おむつの交換については記載がありますが、その後の廃棄については明記されていません。

持ち帰りについてはどう思うか担当者に聞いてみると…
厚生労働省 保育所の担当者
「ガイドラインは保育所の中の感染予防や対策について書かれたもので持ち帰りについては検討がなされていないのが現状です。持ち帰りについて今のところ検討の予定はありません」
では、大人のおむつはどうなっているんだろう。

厚生労働省の高齢者施設の担当部署におむつを持ち帰っているかどうか尋ねると…

「おむつを捨てないでどうするんですか!?」

まず、質問自体に驚かれました。

『介護現場における感染対策の手引き』には「おむつ等は速やかに閉じて排泄物等を包み込み、ビニール袋に密閉して廃棄します」と書かれ、すぐに捨てることを求めているそうです。
厚生労働省 高齢者施設の担当者
「保育所は毎日帰る。介護施設では通所だけではなく入所されている方が多いので、その差かも知れません」

「望ましくないと思います」

国や自治体で明確な規定がない、保育施設での使用済みおむつの処理。
感染対策の面から検討が必要だという専門家もいます。
神戸常盤大学 三浦真希子助教
「使用済みおむつを複数の人の手に渡らせることは、感染対策の点からみれば望ましくないと考えます。保護者が使用済みおむつを持ち帰るよう準備する作業過程は煩雑です。保育施設で業者委託するほうが作業自体がシンプルになるため、感染対策の面において、また、保育士・保護者ともに負担が減るという面でメリットがあると思います」
三浦さんは、おむつ処理のモデルを作るため、研究を進めているそうです。
神戸常盤大学 三浦真希子助教
「感染対策において重要なのは、必ずしも持ち帰りにする、しないということだけではないと考えています。例えば、おむつ交換の手技が徹底されていない場合、交換作業の過程で感染が広がる可能性も考えられるからです。私たちは、保育園などの協力を得てデータをとり、そういった側面からも研究をすすめていきたいと考えています」

くさいものフタをしないで

おむつの持ち帰りだけでなく、おむつの持ち込みもやめる保育園も徐々に増えています。

保育園には自分の子どもが使うおむつに1枚1枚名前を書き入れて持って行くのが一般的です。
私(記者)も毎朝忙しい時間帯におむつに名前を書き込んでいました。
そんな負担も減らそうという取り組みが始まっています。

「おむつのサブスクリプション」です。

月額制でおむつが使い放題。
保育士もおむつを個別に管理しなくてよく、負担が減ります。

渋谷区では去年、おむつのサブスクの実証実験を行い「満足」と答えた人が9割に上ったことから、ことしからすべての区立保育園で導入を始めました。

くさい物にフタをするのではなく、持ち帰り問題をきちんと考えてみませんか。