カーリング女子【詳細】日本最終戦で敗れるも準決勝進出決定

北京オリンピックカーリング女子の日本代表は予選リーグの最終戦でスイスに4対8で敗れましたが、予選リーグの最終成績は4位となり、2大会連続の準決勝進出を決めました。

(試合終了)       計
●日本 |02000|0200×|4
○スイス|10112|0003×|8

日本は16日までに8試合を終えて5勝3敗で、17日にスイスとの試合に勝てば準決勝進出が決まる状況でした。
しかし前半、日本にミスが相次ぎ、第4エンドと第5エンドには相手に不利な先攻から得点を奪う「スチール」を立て続けに決められました。
前半終了時点で2対5とリードされる苦しい展開となりましたが、第7エンドにはスキップの藤澤五月選手が相手のナンバーワンをはじく的確なショットを決めて2点を獲得し、1点差に迫るなど意地を見せました。
それでもスイスはペースを崩すことなく手堅い試合運びを続け、第9エンドには3点を奪われて突き放されました。

日本は最終第10エンドの途中で逆転に必要なストーンが足りなくなり、負けを認めて4対8で敗れました。
これで日本の予選リーグの最終成績は5勝4敗となりましたが、4勝4敗で上位を争っていた韓国がスウェーデンに敗れたため、予選リーグの4位に入り、2大会連続の準決勝進出を決めました。

準決勝は18日に行われ、予選リーグを1位で通過したスイスと再び対戦します。

【最終戦ほかの3試合結果】

※試合結果※
                計
●韓国    |02010|01000|4(8位)
○スウェーデン|00101|10212|8(2位)
              計
●ROC  |01010|0110×|4(10位)
○イギリス|20101|1004×|9(3位)
               計
●デンマーク|01020|001××|4(9位)
○カナダ  |10202|320××|10(5位)

【解説】日本 準決勝進出できた理由は

カーリング女子の予選リーグは、16日の競技を終えた時点で準決勝進出を決めていたのはスイスとスウェーデンだけで、残り2枠をめぐる争いでした。日本は最終戦のスイス戦に敗れたことで5勝4敗となり、カナダ、イギリスと並びました。

カーリングでは複数のチームが同じ勝敗で並んだ場合、そのチームどうしの直接対決の成績で順位が決まりますが、日本はカナダに勝ち、カナダはイギリスに勝ち、イギリスは日本に勝っていて、互いに1勝1敗でした。

こうした場合、各チームの「ラストストーンドロー(LSD)」の成績が関係してきます。「ラストストーンドロー」は試合前に第1エンドの先攻・後攻を決めるために行うもので、チームで2人ずつ時計回りと反時計回りで1投ずつストーンを投げ、円の中心からストーンまでの距離の合計値が少ない方が選択権を得ることができます。

予選リーグの「ラストストーンドロー」のうち悪い数値を2つ除いた平均値である「ドローショットチャレンジ(DSC)」の値がより小さいチームが上位になります。
「ドローショットチャレンジ」を比較すると、イギリスが35.27センチ、日本が36センチ、カナダが45.44センチ。このためイギリスが3位、日本が4位となり、準決勝進出を決めたのです。大混戦となった予選リーグ、最後はドローショットチャレンジの数センチの差が明暗を分けました。

↓下の写真は17日のスイス戦前の「ラストストーンドロー」の結果

【試合詳細】

日本時間午後3時5分 試合開始 第1エンド 日本は先攻

日本代表の準決勝進出をかけた予選リーグ最終戦が始まりました。相手は世界ランキング2位のスイスです。
日本は試合前の「ラストストーンドロー」で相手よりもストーンを円の中心に近づけることができず、第1エンドは不利な先攻となります。
選手たちは真剣な表情で会場入りしましたがカメラを向けられると「がんばります!」などと笑顔で手を振っていました。

第1エンド 日本 0-1 スイス(後攻)

先攻の日本は相手の複数得点を防ぐため、相手のストーンをていねいにはじき出していきます。
スキップの藤澤選手が1投目、ガードストーンの裏にあった3時方向の相手のナンバーワンの内側にぴたりとつけるショットを決め、はじき出せない形を作りました。藤澤選手は2投目にもガードストーンの裏に回り込む「カム・アラウンド」を決めてナンバーワンとツーを日本のストーンにしました。
その結果スイスは最後の1投、ドローショットで1点を取りにいくしかなくなり、日本は狙いどおりの試合運びで第2エンドは有利な後攻となりました。

第2エンド 日本 (後攻)2-1 スイス

第1エンドとは逆に日本のストーンを相手がはじき出していく展開になります。スキップの藤澤選手は1投目でガードストーンの裏に回り込ませる「カム・アラウンド」を決めてナンバーワンを奪いました。
スイスは最後の1投でナンバーワンを奪い返しにいきますが、狙いよりも曲がりすぎて円の中に日本のナンバーワンが残りました。
これに対し、藤澤選手は正確にドローショットを決めて日本が2点を獲得。日本はお互いに「ちょっと速い」「ライン完璧」などと声をかけ合ってスイープを調節していて、この試合もよく声が出ています。

第3エンド 日本 2-2 スイス(後攻)

ほんのわずかな差を争う攻防でした。
相手が円の中心付近にナンバーワンを持つ状況で、藤澤選手は最後の1投、ナンバーワンを取りに行きますがわずかに距離が足りません。しかし、スイスのフォースの最後の1投がこの日本のストーンに当たり、内側に押し込まれました。ナンバーワンがどちらのストーンか目視では判断がつかないほどの微妙な距離。
最終的に「メジャー」という器具を使って計測した結果、ナンバーワンはスイスとなりました。それでも日本は相手の得点を1点に抑え、落ち着いた試合運びを見せています。

第4エンド 日本(後攻)2-3 スイス

お互いに円の中の石をはじき出し合う「テイクアウトゲーム」の展開となりました。
後攻の日本は、次のエンドも後攻になるため、相手のストーンをはじき、自分のストーンも外に出して点が入らない「ブランクエンド」にする狙いでした。
しかし、スキップ藤澤選手が最後の1投で相手のストーンに当てることができない、まさかのミスショットとなり日本はスチールで1点を奪われ、スイスに1点のリードを許しました。

第5エンド 日本(後攻)2-5 スイス

第4エンドと同じくテイクアウトゲームとなり、後攻の日本は「ブランクエンド」を目指しました。
しかし、サードの吉田知那美選手の2投目が、ガードストーンの裏に置かれた相手のストーンをはじき出せず、ブランクエンドは難しくなりました。
ナンバーワンとツーがスイス、ナンバースリーが日本という形に変わってスキップ藤澤選手は最後の1投でナンバーワンを取りにいきました。しかし、これがストーンを中心付近にとどめられないミスショットになりました。
日本は2点をスチールされ、点差は3点に広がりました。

ハーフタイム(5分間)

日本は第5エンド終了後のハーフタイム、ゼリーを飲みながら落ち着いた表情で後半に向けての作戦を話し合っていました。
ここまでの全体のショット成功率は日本が79%、スイスは78%とほぼ互角となっていますが、スキップの藤澤選手はテイクアウトショットの成功率が33%と低くなっていて、後半どこまで修正できるかについても注目です。
日本は3点を追いかける展開で、第6エンドは有利な後攻になります。

第6エンド 日本(後攻)2-5 スイス

円の中にストーンをため、複数得点を狙いたい日本。しかし日本のストーンは相手にことごとくはじき出され、形を作らせてもらえません。
日本は途中から戦略を変え、藤澤選手が最後の1投でスイスのストーンをはじき出して「ブランクエンド」に持ち込みました。日本は次の第7エンドも後攻です。

第7エンド 日本(後攻)4-5 スイス

試合は終盤、複数得点がほしい日本。
ナンバーワンがスイス、ツー、スリーが日本という状況でスキップ藤澤選手の1投目は、ガードストーンにぶつけてしまいナンバーワンを取ることができません。ただ、スイスのラストショットがわずかにずれたことでスイスのナンバーワンがはじき出せる位置になりました。
プレッシャーのかかるこの場面、藤澤選手は最後の1投でしっかりとこのナンバーワンをテイクアウトし、2点を獲得しました。
ショットが決まった瞬間、藤澤選手はほっとしたような笑顔を見せ、メンバーは「やっと決めた!」と声をかけていました。1点差で残り3エンドです。
なおスイスはこのエンドからサードの役割だったスキップの選手に代わりリザーブのホーバルト選手が入りました。

第8エンド 日本 4-5 スイス(後攻)

先攻の日本はスチールを狙ってガードストーンを置いていきますが、スイスはこれをはじき出してしまうため円の中にストーンをためていけません。
結局、日本が最後の1投を終えて円の中に日本のストーンが1つだけ残る状況。スイスはこのストーンをはじき、自分のストーンも外に出してお互いに得点のない「ブランクエンド」としました。
試合終盤、リードしているスイスが手堅い試合運びを見せています。

第9エンド 日本 4-8 スイス(後攻)

逆転に向けて大事な第9エンド、ナンバーワンが日本、ツーとスリーがスイスという状況で、先攻の日本が3投を残し、1試合で1回しか使えないタイムアウトを取りました。決まった作戦は、このエンド「スチール」を狙いにいくため真ん中付近のストーンを守るガードを置くというもの。この直後、サードの吉田選手は狙い通りにセンターラインの円から離れた位置にガードストーンを置きました。
その後、ナンバーワン、スリー、フォーがスイス、ツーが日本という形に変わり、藤澤選手は最後の1投で見事に相手のナンバーワンをテイクアウトします。これで日本はナンバーワンを奪いかえすことに成功し、スイスを1点に抑えるチャンスと思われました。しかし、スイスは最後の1投で日本のナンバーワンとツーを一気にテイクアウトするすばらしいショットを見せました。点差は4点に広がり、日本は苦しくなりました。

第10エンド ※エンド途中に日本がコンシードし敗れる

日本は大量得点を狙うしかなく、日本のストーンを円の中にため、ガードストーンを置いていきます。しかし、スイスのフォース(4番目に投げる選手)によって、ためていた日本のストーンがはじき出され、逆転に必要なストーンがなくなりました。日本は2投を残して「コンシード」、負けを認め、4対8で敗れました。
日本が準決勝に進めるかどうかは同じ時刻に行われている韓国対スウェーデンの結果次第となりました。
日本の予選リーグの最終成績は5勝4敗となりましたが、4勝4敗で上位を争っていた韓国がスウェーデンに敗れたため、予選リーグの4位に入り、2大会連続の準決勝進出を決めました。

各選手談話 鈴木夕湖「今世紀最大のサプライズ」

カーリング女子の日本代表の4人の選手は、ミックスゾーンで取材を受けている途中にコーチから「4位だよ」と準決勝進出が決まったことを知らされました。選手たちは涙を流しながら抱き合い、喜びを分かち合っていました。

スキップの藤澤五月選手は「チャンスを与えてもらったのはスウェーデンのおかげだと思う。泣いても笑っても残り2試合なので頑張りたい」と涙を流しながら準決勝に向けた意気込みを話していました。

またサードの吉田知那美選手は「チームで戦えるだけで幸せなので、自分のふがいなさや情けなさ、悔しさを全部捨てて、次の試合では氷に上がりたい」と気持ちを切り替えていました。

セカンドの鈴木夕湖選手は「今世紀最大のサプライズで驚いている。神が与えてくれたチャンスだと思う。チームの力を出し切って私たちらしさ120%で頑張りたい」と話していました。リードの吉田夕梨花選手は「まだ戦うチャンスがあるというのはすごくうれしい」と話していました。

笑いも涙も 山あり谷あり 厳しかった予選リーグを振り返る

カーリング女子、大混戦の予選リーグを戦い抜いて準決勝進出を決めた日本代表。連勝も連敗も、笑顔も涙もあった厳しい道のりでした。

<初戦 王者との対戦から始まった>
2大会連続のメダル獲得を目指す日本。
初戦の相手は前回大会で金メダルを獲得した世界ランキング1位の王者・スウェーデンでした。
この試合、日本は相手のスキップ、アンナ・ハッセルボリ選手の巧みなショットに苦しめられ、最終的に敗れたものの前半は試合の主導権を握っていました。
吉田知那美選手が「小さな調整の積み重ねをすればいい結果がついてくると思う」と話すなど手応えとしては悪くない初戦でした。

<逆転劇の連続だった中盤 第2戦-第5戦>
そしてここから日本の快進撃が始まります。
第2戦ではこれまでオリンピック6大会でメダル5個を獲得した強豪・カナダに勝利。
そして第3戦のデンマークとの一戦、2点ビハインドで迎えた最終第10エンド、非常に苦しい状況でしたが藤澤選手が最後の1投で3点を獲得するすばらしいショットで劇的な逆転勝利をつかみます。

ROC=ロシアオリンピック委員会との試合でも3点差を逆転し、中国戦にも勝って4連勝を決めました。

藤澤選手のショットの成功率は85%と今大会に出場している10チームで4番目に投げる選手の中ではトップの成績。

「こんなにつかみどころのないアイスは初めて」とアイスの状態に困惑する場面もありましたが、互いに声をかけ合って情報を共有し、苦しい局面も笑顔で乗り切ってきました。

<苦しめられた第6戦 韓国・第7戦 イギリス>
いい流れを止められたのが第6戦の韓国戦でした。
立ちはだかったのは韓国のスキップ、キム・ウンジョン選手。

ショットの成功率は90%、テイクアウトショットでは驚異の100%で、日本のチャンスをことごとくつぶし、プレッシャーをかけてきました。
難しいショットを強いられた藤澤選手は成功率が71%に下がり、連勝はストップ。

次のイギリス戦でも日本はショットのずれを修正しきれず、今大会初の連敗。笑顔が減り、雰囲気も重くなっているように感じられました。

<踏みとどまった第8戦 アメリカ戦>
正念場となったアメリカ戦。
ここで敗れると予選通過が厳しくなる重要な一戦でしたが、日本には持ち前の明るいムードと笑顔が戻ってきていました。
ショットの前にはしっかり時間をかけて4人で話し合い、ショットの最中にも「ちょっと速い」などと声をかけあってスイープを調節していて、テレビの画面越しにも4人の声がよく出ていたのがわかりました。
藤澤選手のショット成功率も80%に上がり、崖っぷちで踏みとどまる、非常に大きな1勝を上げました。

スイスとの最終戦では中盤以降、相手に傾いた流れを再び引き寄せることができずに敗れ、選手たちは涙を流していましたが、最終的に5勝4敗で予選リーグを突破しました。

18日から、メダルをかけた戦いに臨む日本代表。
準決勝に進出したスイス・スウェーデン・イギリスは、いずれも予選リーグで敗れている相手です。

(吉田知那美選手)「自分のふがいなさや情けなさ、悔しさを全部捨てて、次の試合では氷に上がりたい」

予選リーグの最後の最後に残ったのは悔しさ。
今度はそれを晴らす時です。