自動車部品大手 マレリHD 再建へ「事業再生ADR」活用で調整

自動車部品大手のマレリホールディングスは、厳しい経営状況に陥っていることから、取り引き銀行に金融支援を求める方向で調整に入りました。「事業再生ADR」と呼ばれる国の制度を活用して、事業を継続しながら再建を目指す方針です。

マレリは、さいたま市に本社を置き、エンジン関連をはじめ幅広い部品を手がける大手自動車部品メーカーです。

関係者によりますとマレリは新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、売り上げが減少したことなどから、去年12月末の時点で負債が資産を上回る債務超過に陥るおそれが出ています。

このため抜本的な経営の立て直しが必要だとして、企業の再建を支援する「事業再生ADR」と呼ばれる国の制度を活用する方向で、取り引き銀行との間で調整に入りました。

負債の総額は1兆円規模と見られ、会社は銀行に対して借金の返済の猶予を求めたうえで、債権放棄などの金融支援も要請する方針です。

マレリは現在、アメリカの投資ファンド「KKR」の傘下にありますが、前身の会社は日産自動車の子会社で、いまも日産をはじめ大手自動車メーカーと取り引きがあり、国の制度を活用して事業を継続しながらスポンサーとなる企業を探し、経営の立て直しを目指す方針です。

「マレリ」とは

マレリは空調システムやインバーターなどの電子部品、それにエンジン関連部品やマフラーといった幅広い部品を手がける大手自動車部品メーカーです。

前身は日産自動車の子会社「カルソニックカンセイ」で、2017年にアメリカの投資ファンド・KKRがすべての株式を取得し、その傘下に入りました。

2019年にKKRが買収したフィアット・クライスラーの部品部門だった「マニエッティ・マレリ」と経営統合し、社名をマレリに変更しました。

2020年12月期の売り上げはグループ全体で1兆2000億円余りと、世界でも有数の規模の自動車部品メーカーです。

国内では埼玉県本庄市や群馬県邑楽町などに工場があります。

ただ、ここ数年は新型コロナウイルスの感染拡大や、半導体不足などの影響で自動車メーカーからの受注が減少し、業績が悪化していました。

このため、本社を売却したり生産拠点を統合したりするなどコスト削減の取り組みを進めていました。

「事業再生ADR」とは

「事業再生ADR」は、第三者機関が選んだ弁護士や会計士が企業と金融機関などの債権者との調整を進めて事業再生などを目指す私的整理の一種で、民事再生法や会社更生法といった法的整理とは異なります。

ADRで対象となる債権は基本的に金融機関のもので、商取引の債権者は含まれないことから、申請したあとも企業と取引先が取り引きを続けることができるメリットがあります。

ただ金融機関の債権については債権放棄などの金融支援を伴うことが大半で、ADRの成立にはすべての債権者の同意が必要となります。

このため同意しない債権者がいた場合はADRは成立せず、その後に法的整理に移行するケースもあります。

過去には自動車部品の曙ブレーキや婚礼サービス大手のワタベウェディングなどが事業再生ADRを申請しています。