日大 田中英壽前理事長 脱税事件の初公判 起訴内容認める

日本大学の田中英壽前理事長が、およそ5200万円を脱税した罪に問われている事件の初公判が開かれ、田中前理事長は「争う気はありません」と述べ、起訴された内容を認めました。

日本大学の前理事長、田中英壽被告(75)は、背任事件で起訴された大阪市の医療法人の前理事長や日本大学の元理事から受け取ったリベートなど、およそ1億1800万円の所得を隠し、平成30年とおととしの2年間に、合わせておよそ5200万円を脱税したとして所得税法違反の罪に問われています。

15日、東京地方裁判所で初公判が開かれ、田中前理事長は、黒のスーツに赤のネクタイ、胸元にはポケットチーフを入れた姿で軽く一礼してから法廷に入りました。

そして「争う気はありません」と述べ、起訴された内容を認めました。

また、弁護士も「起訴内容をいずれも認めます」と述べました。
冒頭陳述で検察は「田中前理事長は、背任の罪で起訴された元理事から、日大に関係する業者からのリベートを妻を介して受け取っていたほか、医療法人の前理事長からも、取り引きで利益を得た謝礼などとして多額の金銭を受け取っていた」と述べたうえで「受け取った現金を税務申告せず、自宅で現金のまま保管していた」と主張しました。

このあと、被告人質問で、検察官から理事長としての責任について問われた田中前理事長は「多方面に迷惑をかけて十分反省しています。大学の発展を願っているが、今後は関係を持ちたくない」と述べました。

また、裁判長から、事件についてどう感じているか聞かれると「大変申し訳ないと思い反省していますが、自分でも理解できないところがあり、残念に思っています」と話しました。

次回の裁判は3月7日に開かれ、すべての審理が終わる見通しです。

被告人質問 詳細

きょうの初公判で、事件について初めて公の場で説明した日本大学の田中英壽 前理事長。
被告人質問で田中前理事長が説明した内容をまとめました。
〈質問に”はい”〉

およそ20分間行われた被告人質問。
冒頭で弁護士から「検察官が作成した供述調書に間違いはないか」と問われると、かすれた小さな声で「はい、そのとおりです」と答えました。
その後、妻を介して大学の元理事や大阪の医療法人の前理事長などから多額の現金を受け取ったことについて確認を求められると、田中前理事長は、繰り返し「はい」と短く答えるだけで、自らの言葉で事件の経緯を説明することはほとんどありませんでした。
弁護士から最後に「理事長の在任期間が長期化し、『ガバナンス不全に陥っている』と指摘されたことについてどう思うか」と尋ねられた田中前理事長。「理事長として責任は感じていますが、それ以上のことは考えていません」と述べ、多くを語りませんでした。
〈”反省”も”不満”〉

続いて検察官による被告人質問が行われ、事件に対する認識や受け止めについて繰り返し質問が出されました。検察官から「今回の脱税事件についてどう考えるか」と問われると田中前理事長は20秒ほど考えたあと、「まあ、嫌な思いをしましたよ」と小声で答えました。
さらに納税への意識が足りなかったのではと追及され、前理事長は、「ずっとまじめにやってきましたよ」と反論しつつも「今回の件については反省しています」と述べました。
〈国内最大規模の理事長の責任は〉

国内最大規模の学校法人の理事長としての責任をどう考えるか問われた田中前理事長は、「多方面に迷惑をかけたことについても、十分反省しています」と話しました。そして、今後の大学との関わりについて尋ねられると、「大学の発展を願っているが、今後は関係を持ちたくない」と述べました。日本大学は事件後、「田中前理事長との一切の関係を絶つ」と宣言していて、それを受け入れた発言となりました。被告人質問の最後に裁判長から改めて「日本大学の理事長の立場、地位にある人が、このような事件を起こした社会的な責任について具体的にどう感じているか」と問われます。田中前理事長は、「事件を起こしたことは大変申し訳ないと思い反省はしております」としつつも、最後に「自分でなんでこうなったか理解できないところもありますんで。自分なりに残念に思ってます」と述べました。

田中英壽前理事長とは

田中英壽前理事長は日本大学を卒業後、大学職員となり、平成20年に学校法人日本大学の理事長に就任しました。

大学時代は相撲部で活躍し、職員となったあとも「アマチュア横綱」など数々のタイトルを獲得しました。

理事長に就任して4年後の平成24年には当時、経営の実質的なトップだった総長のポストを廃止し、名実ともに学校法人のトップとして絶大な影響力を持つようになりました。

またスポーツ界にも幅広い人脈を持ち、アマチュア相撲を統括する日本相撲連盟の副会長を現在も務めているほか、平成29年までの4年間は、JOC=日本オリンピック委員会の副会長も務めました。

去年11月に脱税の疑いで逮捕されると、その直後に13年間務めた理事長を辞任。

理事も解任されるなど、日大に関連したすべての役職を解かれました。

去年12月に起訴されたあと保釈されましたが、田中前理事長が事件について公の場で説明することはありませんでした。

事件後の日本大学は…

学校法人トップの田中英壽前理事長らが逮捕・起訴される異例の事態となった日本大学。

前理事長が逮捕された直後には、30人を超えるすべての理事が辞任届を提出し、現在は暫定的な体制での運営が続いています。

大学の元理事らによる背任事件を含む一連の事件の事実関係を調べるため、外部の弁護士などによる調査チームや第三者委員会を設置。

また、大学の管理運営体制などの抜本的な改革を進めるとして、外部の有識者による「再生会議」を発足させ、来月末までに改革案をまとめる方針です。

大学では「改革案などを踏まえて、ことし5月ごろには執行部の体制を一新したい」としています。

このほか、背任事件の舞台となった子会社の「日本大学事業部」については、清算を視野に対応を進めているとしているほか、前理事長や元理事らに対し損害賠償を請求することも決めています。

一方、日大には昨年度、文部科学省から外郭団体の「日本私立学校振興・共済事業団」を通じて、全国の私立大学で2番目に多いおよそ90億円の補助金が交付されていましたが、一連の事件を受けて今年度は交付されません。

これについて日大は、「今回の事案を理由とした学費の値上げは一切行わず、学生・生徒、保護者の皆様に影響が及ぶことのないよう対応してまいります」としています。

日本大学 “深くおわび” “信頼回復に全力”

田中前理事長の初公判について、日大はホームページでコメントを出しました。
前理事長が起訴された内容を認めたことについて「公共性の高い学校法人の理事長として、決して許されることのない行為であり、極めて遺憾です」として、「今回の一連の事案は、本法人の信頼を揺るがす大きな問題であり、学生・生徒等、保護者、卒業生、教職員の皆様には大変ご心配、ご迷惑をおかけしていることを深くおわびいたします」としています。

そのうえで「現在行っている大学の改革を進めながら、関係者の皆様の信頼回復に全力で努めてまいります」としています。