スピードスケート 女子団体パシュート 日本は銀メダル

北京オリンピックのスピードスケート、女子団体パシュートで、日本は決勝でカナダに敗れて銀メダルとなり、2連覇を逃しました。

残り200メートルを切ったところで

スピードスケートの女子団体パシュートは、3人一組で隊列を組んで6周のタイムを競う種目で、スムーズな先頭交代や選手どうしの距離を近く保つなど息の合った滑りが求められます。

日本はカナダとの決勝で、今大会の500メートルと1500メートルで銀メダルを獲得している高木美帆選手と姉の菜那選手、それに佐藤綾乃選手の3人が出場しました。

日本は息の合った隊列で序盤からリードし、先頭交代もスムーズに行って、最後の1周までカナダをリードしました。
しかし、残り200メートルを切ったところで、最後尾を滑る高木菜那選手が転倒し、3分4秒47のタイムでカナダに敗れて銀メダルとなり、2連覇を逃しました。

日本は前回大会の金メダルに続いて2大会連続のメダル獲得となります。

金メダルはオリンピック記録を更新する2分53秒44をマークしたカナダ、銅メダルは個人種目のメダリストがそろうオランダでした。
女子団体パシュートで銀メダルを獲得した高木美帆選手は、オリンピックで通算6つめのメダルとなりました。
JOC=日本オリンピック委員会の記録によりますと、オリンピックのメダルの獲得数で夏と冬の大会を通じて日本の女子選手で最多となりました。
高木選手は前回のピョンチャン大会で、団体パシュートで金メダル、1500メートルで銀メダル、それに1000メートルで銅メダルの3つのメダルを獲得しています。
そして今大会ではこれまでに1500メートルと500メートルでいずれも銀メダルを獲得していて、団体パシュートの銀メダルを加えて3つのメダルを獲得しています。
これで高木選手は通算で6つのメダルを獲得したことになり、日本の女子選手のメダルの獲得数で、夏と冬の大会を通じて最多記録を更新しました。
日本の女子選手では、5大会連続でメダルを獲得した柔道の谷亮子さんのほか、アーティスティックスイミングに競技名が変わったシンクロナイズドスイミングの立花美哉さんと武田美保さんの合わせて3人が5つのメダルを獲得しています。
5種目に出場する予定の高木選手は、17日に行われる1000メートルを残していて、さらなるメダルの獲得が期待されています。

高木美帆「もっと最初のほうで何かできたのでは」

今大会3つ目の銀メダルとなった高木美帆選手は「どの銀メダルも違う思いがあるが、1500メートルの時とは違った悔しさがある」と話しました。

そのうえで「私の中では、もっと最初のほうで何かできたのではないか、後半の戦いになる前にもっとチームにリズムを作ることができたんじゃないかという思いもある。まだどうことばにしたらいいかわからないが、これに関しては気持ちの整理をする時間が必要だなと思っている」と、結果を受け止めきれない様子でした。

高木菜那「最後がなければ優勝できたかもしれない 悔しい」

最終盤に転倒してしまった高木菜那選手は「最後がなかったら優勝できたかもしれないタイムだったので、悔しい」と涙をぬぐいました。
そして、オリンピック連覇がかかる今月19日の女子マススタートについて聞かれると「あとで考える」と、気持ちの整理がつかない様子でした。

佐藤綾乃「カナダが強かった 転倒なくても僅差になっていた」

佐藤綾乃選手は「きょうはカナダが強かったと思えたレースだった。転倒なく自分たちがゴールしたところで、どういう差になっていたのか。本当に僅差になっていたと思う」とレースを振り返りました。

そのうえで「前半の先頭に出たところや後半の前の人へのサポートで、もっとできた部分があったのではないかと反省する部分はある。この結果自体も悔しいし、自分自身にもちょっと悔いが残ったレースになってしまった」と悔しさをかみしめていました。

【記者の目】

2大会連続の金メダルまで残り50メートルのところまで迫っていました。
女子団体パシュートの決勝。前回王者として臨んだ日本がこのレースで残したタイムは3分4秒47。ベストタイムからはかけ離れたその記録は最後まで攻め続けた証しでした。

<勝負のポイントは終盤に>
決勝の相手のカナダは、今シーズン、ワールドカップ全勝と安定感がありました。
強さの秘密は終盤、失速しないことです。
今大会、女子3000メートルと女子5000メートルでメダルを獲得しているエースのイザベル・ワイデマン選手が終盤に先頭を引っ張ることで大きくスピードを落とすこと無くフィニッシュできるのです。

準々決勝のタイムで比較すると、日本はカナダより速いタイムをマークしましたが、その差はわずか0秒36で、ラップタイムを比べると、後半に追い上げられていました。

カナダとの対戦を前に勝負の鍵を握るのはこの後半であるのは明らかでした。

<攻めた高木菜那の滑り>
決勝のレース展開を振り返ります。
まず、エースの高木美帆選手が2周近く先頭を滑ってペースを作りました。
素早い先頭交代で佐藤綾乃選手が先頭に立ち、スピードを維持して前半の時点でカナダに対して0秒59のリードで後半に入りました。

3人目として先頭に立った高木菜那選手が攻めの滑りを見せます。先頭交代をしたあとは通常タイムロスが生じてラップタイムに影響が出ますが、菜那選手はここでスピードを上げてカナダとの差を広げました。

そして、残り2周を切ったところで再び美帆選手が先頭へ。
一糸乱れぬ隊列でスピードを維持します。

残り200メートルでカナダとの差は0秒32。わずかながら最後までリードを保って勝負の最終盤に入りました。このまま行けば金メダルでした。

残り50メートル。最終カーブの出口付近でした。最後尾を滑っていた菜那選手がバランスを崩しました。

日本のオリンピック連覇はなりませんでした。
菜那選手は懸命に起き上がり、最後まで滑りきりました。
タイムは3分4秒47でした。

<3人が抱いた自分に出来たこと>
レース後、3人は流れる涙を拭いながらインタビューに応じました。

高木菜那選手
「あの時こうすれば転ばなかったのではないかというのはたくさんある。最後、転ばなかったら優勝できたかもしれない」
佐藤綾乃選手
「銀メダルだが、チームワークは世界一だと思う」
高木美帆選手
「このメダルの意味を、受け止めるにはもう少し時間がかかると思うが、ここまで強くなった。前を向いていきたい」

最後のことばに力を込めました。

連覇ならずも 4年間の成長でつかんだ銀メダル

スピードスケートの女子団体パシュートで日本は惜しくもオリンピック連覇には届きませんでしたが、その戦い方は「組織力」に加えてこの4年間の成長を感じさせる銀メダルでした。

前回のピョンチャン大会の女子団体パシュート。
日本は空気抵抗を抑えるための一糸乱れぬ隊列と、素早い先頭交代という「組織力」で世界に対抗し、決勝でオランダを破って金メダルを獲得しました。

次のオリンピックでも金メダルを手にするためにはどうするべきか。
日本がチームとして出した答えは「組織力」に加えてメンバーそれぞれのレベルアップが欠かせないということでした。

エースの高木美帆選手が世界トップクラスのオールラウンダーに進化を遂げると、今シーズンは佐藤綾乃選手と高木菜那選手がワールドカップの女子1500メートルで表彰台に上がるなど地力をつけてきました。
その力を結集させる団体パシュートで、日本はピョンチャン大会のあと、さまざまな作戦を試してきました。

タイムロスが生じる先頭交代を極力減らし、後ろの選手が前の選手を押し続けながら滑る「プッシュ作戦」や、より安定して押すため3人の選手が手をつなぐ作戦なども試しました。
ただ、レースで転倒するなど、新たな作戦と日本の持ち味の「組織力」が融合しきれず、今シーズン、ワールドカップでは1回も優勝することなく、オリンピック本番を迎えることになりました。

高木美帆選手は「今回、実戦の場で積み上げられたものはそこまで大きくない。4年前とは状況が決定的に違う」と心境を話していました。

迎えた北京オリンピック。
日本が選択したのは、先頭交代を3回する、ピョンチャン大会と同じ作戦でした。
日本の最大の強みである「組織力」を生かしたうえで、この4年間でレベルアップした個々の選手の力を上積みできれば、安定して速いタイムが出せると考えたからでした。

そのねらいどおり、日本は準々決勝で、前回大会で自分たちがマークしたオリンピック記録を更新。決勝では、準々決勝よりも速いペースで金メダルをねらいましたが、最後のカーブで転倒。オリンピック連覇には届かなかったものの、この4年間積み重ねてきた力を振り絞ってつかんだ銀メダルです。

パシュートの概念覆したカナダの“壁”

女子団体パシュートの決勝で日本と対戦したカナダ。
これまでの団体パシュートの概念を覆すチーム構成で、初めての金メダルを獲得しました。

前回大会で4位とメダルに届かなかったカナダですが、今シーズンワールドカップ全勝と躍進し、日本の最大のライバルと目されて今大会に臨みました。

その躍進を支えたのが、今大会の3000メートルと5000メートルでメダルを獲得している、1メートル87センチと長身のイザベル・ワイデマン選手です。

団体パシュートは似ている体型の3人が一心同体になって滑ることが有利とされていますが、ワイデマン選手は他の選手より20センチ以上も身長が高くなっています。

長距離選手のワイデマン選手は、スピードを上げるのに時間がかかるため、序盤は後方で滑りますが、後半の3周を先頭で滑ります。

疲れがたまるこの後半はスピードが落ちますが、長身のワイデマン選手が前に出て「壁」となることで、後ろの選手たちは風の抵抗を受けにくくなり、スピードの低下を抑えることが最大の強みとなっていました。