【詳しく】緊張続くウクライナ ロシアが侵攻したら何が起きる?

ウクライナを巡って軍事的な緊張が続いています。アメリカなどは大規模な軍の部隊をウクライナ国境周辺に展開させるロシアが侵攻する可能性があると強く警戒しています。

仮にロシアがウクライナに侵攻した場合、どのようなことが起きると考えられるのでしょうか。ロシアによる軍事的行動の想定シナリオをまとめた、アメリカのシンクタンクの情報をもとに詳しく解説します。
(ワシントン支局記者 渡辺公介)

ロシア軍のウクライナ侵攻の可能性がある?

アメリカは、その可能性があると強く警戒しています。

ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は2月11日「ロシアによる軍事侵攻は北京オリンピックの期間中を含め、いつ始まってもおかしくない」と述べています。

一方、ロシア側は「ウクライナに侵攻する意図はない」と主張しています。

アメリカがロシアが侵攻する「可能性がある」と主張する根拠は?

アメリカは、ロシア軍の動きや増強の様子から侵攻の可能性があるとみています。

ロシアは現在、隣国のウクライナを以下の4方向から取り囲むように軍を配置していて、その勢力は合わせて10万人以上とみられています。
▽ウクライナ東部の国境付近
▽ウクライナの北側に位置するベラルーシ
▽ウクライナ西側の国境で接し、モルドバの東部から1990年、一方的に独立を宣言した沿ドニエストル地方。ここにもロシアが軍を駐留させ、影響力を及ぼしています。
▽ロシアが8年前に一方的に併合したクリミア

ロシアが仮に侵攻した場合、そのねらいは、かつてソビエトとして同じ国だったウクライナをロシアの影響圏に置くことや、欧米各国でつくる軍事同盟、NATO=北大西洋条約機構との軍事的な緩衝地帯をつくることなどにあるとみられます。

ロシアが侵攻するとしたらどんな軍事的な行動が考えられる?

アメリカの外交・安全保障政策に強い影響力を持つとされるシンクタンク、CSIS=戦略国際問題研究所は、1月末に発表した報告書で、ロシアが取り得ると考えるシナリオを公表しました。

6つのシナリオが詳細に分析されていて、注目されています。
6つのシナリオのうち、1つ目は、ロシアが国境付近に展開させている軍の部隊を撤収させる一方で、ウクライナ東部の親ロシア派と呼ばれる武装勢力を支援し、かつ、サイバー攻撃などを仕掛けるというものです。
2つ目は、ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力が8年前から支配する地域まで軍を進めるというものです。

この2つは、ロシアが本格的な戦闘は回避しながら、ウクライナ政府に揺さぶりをかけるねらいがあるとみられます。

そして、軍事行動の規模が拡大するのが、3つ目のシナリオ以降です。
3つ目は、ロシア軍が、ウクライナの中央部を南北に流れるドニエプル川の東側を占領するというものです。

首都キエフをロシア側とベラルーシ側から挟み撃ちにし、親ロシア派の支配地域とクリミアから東部を攻撃して占領するというものです。

報告書の執筆者は、地理的な境界線でウクライナを東西に分割し、政権を崩壊に追い込むねらいがあると指摘しています。
4つ目のシナリオは、ウクライナ東部に加えて、南部の黒海沿岸の一帯を占領するというものです。

5つ目は、黒海沿岸の一帯だけを占領する。4つ目と5つ目のシナリオは、国際貿易拠点で、黒海への重要な玄関口オデッサを奪い、経済的な打撃を与えるとともに、ロシア軍が駐留する沿ドニエストル地方への補給路を確保する思惑があるとみられます。
6つ目のシナリオは、ウクライナ全土を占領するというものです。

可能性が高いのはどのシナリオ?起きた場合その影響は?

これらのシナリオは、あくまでシンクタンクが独自に予想したものですが、報告書をまとめた安全保障の専門家でCSISの上級副所長、セス・ジョーンズ氏は、ロシアが侵攻した場合ウクライナ軍の激しい抵抗も予想されることなどから、ロシアは、ウクライナ全土に軍を進めるのではなく、ウクライナ東部に軍を進める2つ目と3つ目のシナリオの可能性が高いと指摘します。

そのうえで、シナリオが現実のものとなったとしたら、世界に与える影響についてこう説明します。
CSIS セス・ジョーンズ上級副所長
「(ロシアの軍事侵攻は)ウクライナを東西に分断する可能性がある。東西ドイツや北朝鮮と韓国のような結果になるかもしれない。ウクライナは、非武装地帯を中心に二分され、一方は親欧米のウクライナの政権、もう一方はロシアが支配する事態もありうるだろう。新たな『鉄のカーテン』が引かれる決定的な分かれ目になるかもしれない」

もし侵攻したらどれほどの被害が出るおそれがある?

CSISの報告書は言及していませんが、アメリカの複数のメディアは、ロシア軍がウクライナに大規模に侵攻した場合、首都キエフは2日以内に陥落し、最大で5万人の市民が死傷するとアメリカの情報機関が分析していると伝えています。

ロシアがウクライナに侵攻したらアメリカ軍は現地で戦う?

バイデン大統領はウクライナへ軍を派遣することはないと否定しています。

その理由として、CSISのジョーンズ氏は、
▽ウクライナはアメリカの同盟国ではなく、防衛義務がない
▽アメリカは、去年8月にアフガニスタンから軍を撤退させたばかりで、いつ終わるともわからない戦争に巻き込まれたくない
▽米ロが軍事的に直接対じすれば核戦争にエスカレートしかねない
といったことを挙げています。

一方で、ジョーンズ氏は、ウクライナが分断されることになれば、アメリカはウクライナの親欧米勢力に武器を供与し、かつてのアフガニスタンのように内戦状態に陥る可能性もあると警鐘を鳴らしています。
CSIS セス・ジョーンズ上級副所長
「1980年代、アメリカ軍はソビエトが侵攻したアフガニスタンに通常の部隊を展開しなかったが、ソビエトに抵抗する勢力を軍事的に支援した。米ロ両国の兵士が地上で直接対じするよりもありうる方法だ」

ロシアの侵攻を防ぐためアメリカは何をしている?

アメリカはロシアへの軍事的な抑止力を強化し、強力な制裁を科す構えを示しながら、対話による解決を迫っています。

ウクライナに隣接するポーランドとルーマニアなどに合わせて3000人規模の部隊を派遣し、2月11日には、さらにポーランドに3000人規模の部隊を追加で派遣すると発表しました。
8年前にロシアがクリミアを一方的に併合した時には、アメリカはロシアに徐々に制裁を強化したものの、抑え込むことはできませんでした。

こうしたことを踏まえ、今回、バイデン大統領は「仮にロシアが侵攻すれば、ロシアの銀行はドルを利用できなくなり、壊滅的な被害を受けることになる」と述べ、「迅速かつ厳しい」制裁を科すと警告しています。

さらに、真偽はわかりませんが、ロシアが侵攻の口実にしようとウクライナから攻撃を受けたかのようにねつ造する映像を制作する計画がある、といった情報も明らかにしています。

ロシアによる情報戦を想定し、機先を制するねらいです。

ウクライナを巡り、フランスやドイツなどヨーロッパの国による外交努力も続けられていますが、対話を通じて事態を打開できるかは、予断を許さない状況です。