スノーボード【記者解説】ハーフパイプ 技の名前 採点方法は?

北京オリンピック、11日に行われたスノーボード男子ハーフパイプで、平野歩夢選手が金メダルを獲得。オリンピックのスノーボードで日本選手が金メダルを獲得したのは初の快挙でした。
一方で…
「フロントサイドトリプルコーク1440」
「スイッチバックサイド1260」
実況や解説で聞こえてきたさまざまな「技」も注目されました。
そして採点方法。2回目の滑走で大技に成功したにもかかわらず平野選手の得点がのびず、ネット上でも話題になりました。
スノーボードに関する用語や技の名前や、採点方法など、現地で取材をしているスポーツニュース部のスノーボード担当の小林達記記者が解説します。

-ハーフパイプはどのように採点するのか

(小林記者)
6人のジャッジが、それぞれ100点満点で選手の滑走を評価します。
選手の得点は、最高と最低を除いた残りの4人の平均になります。
「エアの高さ」「技の豊富さ」「難解さ」「創造性」「着地、滑走の構成」などを総合的に判断します。
例えば6人のジャッジがこのような得点だったとします。
ジャッジA:「95」 
ジャッジB:「90」
ジャッジC:「90」
ジャッジD:「90」
ジャッジE:「90」
ジャッジF:「85」

この場合、最高の95点の(ジャッジA)と最低の85点(ジャッジF)の評価は、反映されず、得点はジャッジB,C,D,Eの4人の平均、つまり「90点」となるんです。

ー採点基準はあるのか

特に基準はありません。
エアの高さがあるとか、難しい技に成功したからといって必ずしも高い得点になるのということではないんです。
あくまで個々のジャッジが、各選手の滑走を見て判断することになっています。

ー技の名前について教えてほしい

ハーフパイプでは「トリプルコーク」や「ダブルコーク」、さらには「1440(フォーティーンフォーティ)」や「1260(トゥエルブシックスティ)」など様々な技があります。

技の種類は、縦や横の回転、それに板の向き・回転の方向・板をつかむ場所によっていろいろあるんです、

技の名前は、わかりやすくすると、
【板の向き・回転の方向】+【縦回転】+【横回転】で表記されます。
例えば平野選手が決勝で、オリンピック史上初めて決めた大技「フロントサイド トリプルコーク 1440」を見てみますと…

▽フロントサイド(前向きの回転)
▽トリプルコーク(軸を斜めに縦3回転。「コーク(コークスクリュー)」は、軸を斜めに縦と横が合わさった回転技)
▽1440(横に4回転)(1回転「360」度×4で「1440」度)

前向きに踏み切って、空中で軸を斜めに縦に3回転しながら横方向にも4回転するという技なんです。
平野選手は、以前取材でこの「トリプルコーク」について「踏み切りや回転スピードが欠けると死に関わるぐらい紙一重の技」と話していました。
回転数が増えれば増えるほど高さが必要になり、それだけ失敗したときの危険性が増すほか、着地の際の衝撃も大きくなります。
一方、銀メダルを獲得したスコッティ・ジェームズ選手が出した技が「スイッチバックサイド1260」です。

▽スイッチ(スタンスが逆向き)
▽バックサイド(背中側から)
▽1260(横に3回転半)

板の向きや回転の仕方が難しいため、回転数が少なくても高い評価がつくことがあります。

ー平野歩夢選手の2回目 得点はなぜ伸びなかったのか

(小林記者)
平野選手は2回目の滑走の冒頭のエアで「トリプルコーク1440」を決め“人類史上最高難度”と話題になった技を盛り込んだ演技構成で、初めて最後までほぼミスなく滑りきりました。
しかし、得点は伸びず得点は「91.75」。
この時点でトップのスコッティ・ジェームズ選手の「92.5」を0.75下回りました。
<平野歩夢選手の2回目の得点「91.75」>(X印は不採用)
▽ジャッジ
スウェーデン:「96」X
フランス:「92」
カナダ:「90」
アメリカ:「89」X
日本:「95」
スイス:「90」
<スコッティ・ジェームズ選手の2回目の得点「92.50」>(X印は不採用)
スウェーデン:「92」
フランス:「93」
カナダ:「94」X
アメリカ:「91」X
日本:「93」
スイス:「92」

このとき現地では、海外のチームスタッフや関係者のブーイングが起きていました。
で解説を務めた渡辺伸一さんはこう推察しました。

【解説 渡辺伸一さん】
「もっと平野選手の点数が出ていいと思いました。ジャッジが、平野選手が新しい技を持っているのを知ったうえで『まだ点数出せるだろう』という余裕を持たせる意味で厳しくつけたのではないか。そんな印象を受けました」

渡辺さんが推察したとおり、仮にジャッジが平野選手の大技について知っていたとすれば平野選手の底知れない実力こそが、今回の状況を生んだと言えるかもしれません。

平野選手がこの2回目の判定について「怒りもあった」と言うように、ハーフパイプでは客観的な数字を用いた採点基準が示されていません。
こうした採点のあり方について、平野選手は疑問を投げかけています。

【平野歩夢選手】
「スノーボードは自由さも魅力だが、高さや技を測れるようなものを整えていくべきだと思うし、競技として測るシステムのようなものをつくる時代になってきたのではないかと思う」

ー「トリプルコーク」はどのようにして生まれたのか

(小林記者)
「自分独自の道を進みたい」というのが挑戦のきっかけでした。
ハーフパイプ界では、ここ数年、技の難度が高まっています。
エアの回転数が高まっただけでなく、銀メダルを獲得したジェームズ選手のように「スイッチバックサイド」といった難しい技術で点数を伸ばそうとする選手も出てきました。
そんな中、平野選手は「みんながスイッチバックサイドをやるんだったら、そうじゃないところで勝負したい」とあくまでオリジナルの技にこだわりました。
「自分はスイッチを使わない技で圧倒したい」と東京オリンピックが終わってから本格的にトリプルコークの練習をスタートさせ、この大技をわずか半年で習得したんです。

ー「ハーフパイプ」は人気が出そう

(小林記者)
東京オリンピックでスケートボード、北京大会ではスノーボードが盛り上がり、いわゆる「横乗り系」の関心が高まり、子どもたちの中にも平野選手のようになりたいという人が出てくるかもしれません。

一方、平野選手が言っていたように、今後、競技として成熟したものになっていくには、数字を使った一定の採点基準を示すことも必要になってくるのではないでしょうか。