子どもの感染拡大 ワクチン“努力義務”は外す 最新情報は

新型コロナウイルスのオミクロン株では、これまで少なかった子どもの感染拡大も続いています。

5歳から11歳の子どもへの接種が、ことし3月以降に始まりますが、いまの準備はどうなっているのか。現状をまとめました。

子どもの感染が拡大 ワクチンの効果は?

厚生労働省によりますと、10歳未満の新規感染者数は、2021年12月28日までの1週間では149人でしたが、2022年1月4日まででは353人、1月11日まででは2238人、1月18日まででは1万2947人、1月25日まででは4万1863人、2月1日まででは6万7564人と増加が続いています。

アメリカでは、2022年に入っておよそ420万人の子どもの感染が確認されています。

2月3日までの1週間の子どもの新規感染者数は63万人余りで、減少しているものの、デルタ株の時期のピークの2倍を超えています。

アメリカ小児科学会は、子どもで症状が重くなり入院に至る率は0.1から1.5%、死亡率は0から0.01%だと報告しています。

日本国内でも、ワクチンの接種対象の年齢が5歳までに引き下げられ、ファイザーの臨床試験では、5歳から11歳での発症を防ぐ効果は90.7%で、接種後に出た症状もおおむね軽度から中程度だったとしています。

厚労省 5歳から11歳への接種 当面 “努力義務”にせず

厚生労働省は5歳から11歳の子どもへの接種について、自治体を通じて接種の呼びかけは行うものの、オミクロン株に対する有効性が明確でないことなどから当面は、保護者が子どもに接種を受けさせるよう努めなければならない「努力義務」としないことを決めました。
ファイザーのワクチンの5歳から11歳への接種の進め方をめぐっては先月開かれた厚生労働省の分科会で、予防接種法上の「努力義務」とするかどうかで専門家の意見が分かれ、10日、改めて議論が行われました。

この中で、厚生労働省は、子どものワクチンのオミクロン株に対する有効性のデータが十分でないことなどから、当面、保護者が子どもに接種を受けさせるよう努めなければならない「努力義務」としないことを提案しました。データが十分にそろった段階で、努力義務とするかを改めて議論するとしています。

一方、すでに欧米などで子どもへの接種が認められ安全性も確認されているとして、予診票を家庭に送付するなど自治体を通じて接種の呼びかけを行うとし、提案は了承されました。

また、専門家からは努力義務がなくても希望者が接種を受けやすいよう、企業が保護者が休みを取れるように配慮することなどを求める意見も出されました。

これを受け、厚生労働省は接種を受けやすい環境を整備するよう周知するとともに、ワクチンの効果や副反応などを10日から、ホームページで紹介することにしています。また、今月21日の週から自治体へのワクチンの配送を開始し、準備が整った自治体から順次、接種を始めてもらうことにしています。

海外では“接種推奨”が多数

海外では、ファイザーの新型コロナウイルスワクチンについて5歳から11歳の子どもへの接種を推奨している国が目立っています。

厚生労働省によりますと、▼アメリカとカナダ、フランス、イスラエル、EU=ヨーロッパ連合は5歳から11歳のすべての子どもへの接種を推奨しています。また、▼ドイツは基礎疾患がある子どもなどへの接種を推奨しているほか、▼イギリスは慢性肺疾患などを患う重症化リスクが高い子どもなどは接種を受けられるとしています。このほか▼WHO=世界保健機関は、基礎疾患があり重症化する重大なリスクがある子どもに接種することを推奨しています。

「努力なの?義務なの?」 保護者から困惑の声

子どものワクチン接種や「努力義務」の考え方について、保護者からは「わかりやすく説明してほしい」という声が多く聞かれました。

6歳の女の子の母親は「感染状況が落ち着くにはワクチンが大きいと思うので、子どもには接種させたい。これだけ感染が広がっているのでなるべく早くできるといいと思います」と話していました。

7歳の男の子の母親は「子どもは感染しても軽症の場合が多いと聞くと、接種の必要性がどのくらいあるのかよくわからず、副反応も気になるのですぐには接種せずに少し様子をみたいと思います。子どもも接種を進めたほうがコロナが早く収束するということなら、接種の意味や『努力義務』になる場合とならない場合とでどのように違うのかをもう少し説明してほしい」と話していました。

7歳の男の子の父親は「『努力義務』という言葉の意味が努力なのか、義務なのか、よく分かりません。子どもの接種がどのくらい重要だと考えているのか、国としての意見や立場をもっとわかりやすく伝えてほしいです」と話していました。

「努力義務」とは

「努力義務」は、接種を受けるよう努めなければならないとする予防接種法の規定です。風疹など定期接種のワクチンの多くに適用されていますが、接種を受けるかどうかはあくまで本人が選択できることになっています。法的な強制力や罰則もありません。

これに対し、厚生労働省の分科会の委員からは「努力義務は強制的なものと伝わってしまっているので、きちんと理解してもらえるよう国民に発信すべきだ」といった指摘が出ていました。
10日の分科会では、子どものワクチン接種について当面、保護者の努力義務としないことが了承されましたが「接種の勧奨はするのに努力義務をつけないということを国民に理解してもらえるか懸念している」などとして丁寧な説明を求める声が相次いでいました。

接種待ち望む子どもたちも

重い病気や基礎疾患のある子どもたちが治療を受ける病院では子どものワクチン接種を早急に進めてほしいという声があがっています。

東京・世田谷区の国立成育医療研究センターは、重い病気や基礎疾患のある子どもの高度医療を行う専門の病院です。8日の時点で小児がんや心臓病などの治療を受けている子どもを中心におよそ20人が新型コロナで入院していて、このうち3人が酸素吸入を必要とする中等症だということです。

国立成育医療研究センターの賀藤均 病院長は「第6波では基礎疾患のある子どもの感染が非常に増えていて、年明け以降は酸素吸入やステロイド投与など治療が必要なケースが明らかに多くなっている。特に免疫抑制剤を使っている子どもなどは感染すれば重症化のリスクが高く、コロナで体調が悪化することで持病の治療計画に影響がでてしまうこともある」と指摘します。

子どもの感染拡大を受けて保護者からは「なるべく早い時期に接種を受けさせたい」という声や接種を受けさせるかどうかの相談も増えているということです。

賀藤病院長は、「海外の状況からもオミクロン株の主戦場は子どもだということは懸念されていたことで、これから接種が始まるのは遅すぎると言わざるを得ない。子どもに対して新型コロナの治療に使える薬が限られているなかでワクチン接種の選択肢があることは重要で、希望する人が可能な限り早い時期に接種できるよう早急に準備を進めるべきだ」と話していました。

自治体 接種準備進むも“確保の見通し見えず”

5歳から11歳までの子どもの新型コロナウイルスワクチン接種を来月から始める予定の東京・江東区は10日、接種券を発送しました。

一方で、現状で国から示されているワクチンの量は対象者の数の2割ほどにとどまっていることから「確保の見通しを早く示して欲しい」としています。
5歳から11歳までの子どもの新型コロナウイルスワクチン接種について江東区は、国の方針に従って来月5日から始める予定です。

けさは、対象になるおよそ3万2000人分の接種券が区役所に届き、担当者が箱を開けて中の接種券を確認するとともに、段ボールの数を確認していました。

区では、▽区の施設での集団接種と▽小児科医がいる病院やクリニックでの個別接種で週に1700人分の枠を用意して接種を進める予定です。

しかし、国からワクチンが供給される具体的なメドがたっているのは現状ではおよそ6000人分と、対象者全体の2割程度にとどまるということです。

このため区では、予約を開始する今月21日については、基礎疾患のある子どものみに受け付けを制限し、翌日から基礎疾患のない子どもたちも受け付ける予定です。

また、予約が埋まってしまった場合には、次の予約開始の見込みはたっていないということです。
江東区の新型コロナウイルスワクチン接種推進室の根本将司 課長は「区内でも子どもの間で感染が相次いでいて、早く打ちたいと期待の声がある一方で、副反応など不安の声も聞かれる。区としては希望する子どもを待たせずに打てる態勢を作りたいので国には早くワクチンのメドをつけてほしい」と話しています。