新型コロナ 経験ない規模の感染者数 医療体制への負荷深刻に

新型コロナウイルスのオミクロン株により流行の「第6波」は過去に経験のない規模の感染者数となっています。
増加ペースは緩やかになってきていて、感染のピークが近いのではとの見方もある中、医療体制への負荷は深刻な状況となりつつあります。

経験のない規模の感染拡大

感染の広がるスピードが速いオミクロン株の影響が年末年始の時期と重なったこともあって、国内ではことしに入ってからこれまでに経験のない規模の感染拡大が起きています。

NHKのまとめで1週間の新規感染者数を前の週と比べると、先月上旬には、
▽沖縄県で前の週に比べて25.83倍(1/9)、
▽東京都で10.27倍(1/10)、
▽愛知県で13.21倍(1/10)、
▽大阪府で8.92倍(1/9)と
全国各地で1週間で10倍近く増えるペースとなっていて、
▽全国でも10.03倍(1/9)でした。

このあと増加のペースは次第に遅くなり、厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、8日の時点で1週間の新規感染者数を前の週と比べると
▽全国では1.19倍で、
▽東京都では1.21倍、
▽大阪府では1.15倍、
▽愛知県では1.13倍などとなっています。

増加のペースは下がりましたが、東京都や大阪府など多くの地域でいまだに減少局面とはなっておらず、全国での一日当たりの新規感染者数は1週間平均で9万人を上回っています。

感染者数が減少傾向とはいえ…

一方、ほかの地域より先に先月9日から「まん延防止等重点措置」が適用された沖縄県、広島県、山口県の3県では、先月下旬から今月はじめにかけて感染者数が減少傾向となり、8日時点での1週間の新規感染者数は前の週と比べて
▽沖縄県で0.67倍、
▽広島県で0.81倍、
▽山口県で0.85倍となっています。

ただ、例えば沖縄県では若い世代の感染者数は減少しているものの、高齢者施設などでクラスターが起きるなどして増加の際のスピードに比べて減り方が緩やかになっていて、高齢の感染者が増えたこともあり、重症化する人の割合が増え、医療体制は引き続き厳しい状況となっています。

これについて、政府の分科会の尾身茂会長は8日の衆議院予算委員会で「多くの県で少しずつ増加のスピードが鈍化していてピークアウトは可能だ」として「第6波」がピークを越える可能性を指摘したうえで、「可能性としては、急激には下がらず、なだらかに下がるか高どまりになる。最悪の場合には、なかなか下がらずに(感染が)上がるということも考えられる」と述べています。

また専門家の間からは、仮にピークを越えたとしても減少がゆるやかであれば、感染者数が多いまま3月、4月の歓送迎会や卒業、入学のシーズンを迎えて再び人との接触機会が増えてしまうおそれもあるという指摘も出ています。

深刻な医療提供体制のひっ迫

さらに深刻なのが、医療提供体制のひっ迫です。

感染者情報を集約する厚生労働省のシステム「HER-SYS」のデータから今月7日までの新規感染者に占める年代別の割合をみると、
▽20代の割合は、先月の23.7%から今月に入って15.9%と減少している一方、
▽60代以上では先月の10.7%から今月は14.2%と増加しています。

オミクロン株は、これまでと比べて軽症の割合が多いとされていますが、高齢者や基礎疾患がある人では比較的、重症化のリスクが高いとされ、高齢の感染者が増えると重症者も増えるとみられています。

全国の重症者数は、1か月前の先月8日時点では89人と100人を下回っていましたが、今月4日には1000人を超え、8日時点では1141人となっています。

また、亡くなる人の数も8日の一日で159人報告され、一日当たりの数としては、デルタ株が拡大した去年夏の感染の「第5波」のピークを大幅に上回りました。

これまでの感染拡大では重症者や亡くなる人の数は、感染者数がピークを迎えてから数週間後にピークとなっていて、今回も当面は重症者や亡くなる人の増加傾向は続くおそれがあるとされています。
これについて、8日の衆議院予算委員会で尾身会長は「今、直面する課題の中で最も重要な課題の1つは、高齢者を中心に重症者や死亡者が少しずつ増えていることだ。高齢者施設などの感染対策が徹底されないと、しばらくは重症者数の増加が続く可能性がある。高齢者施設の感染対策については、周りの医療機関や地域の連携が非常に重要な局面にある」と述べています。

厚生労働省の専門家会合でも、高齢者や基礎疾患のある人は、新型コロナで重症化しなくても、感染をきっかけにもともとの病気が悪化するケースもあると指摘されていて、医療体制への負荷が厳しい状況が続くおそれがあります。