欧州にLNG融通へ 国内需要は確保 ウクライナ緊張続き 経産相

ウクライナをめぐり緊張が続く中、ヨーロッパで天然ガスの調達が滞るのを避けるため日本政府は国内に必要なLNG=液化天然ガスを確保したうえで、一部をヨーロッパ向けに融通する方針を決めました。アメリカのバイデン政権の要請を受けた異例の対応です。

これは9日夕方、萩生田経済産業大臣が記者団に対して明らかにしました。

この中で萩生田大臣は「ヨーロッパの厳しいガス不足の状況を踏まえ、アメリカからの要請を受けて協力することを決定した」と述べて、政府としてLNGをヨーロッパ向けに融通する方針を決めたことを表明しました。

萩生田大臣はこれに先立ち、EU=ヨーロッパ連合のフロア駐日大使と、アメリカのエマニュエル駐日大使と相次いで会談し、LNGを融通する方針を伝えました。

ヨーロッパは、電力などに必要な天然ガスの需要のおよそ3割から4割をロシアからパイプラインを通じて供給を受けています。

ウクライナ情勢は緊張が続いていますが、アメリカとEUは、ロシアがウクライナに侵攻した場合、経済制裁を科すと警告しています。

これに対してロシアが対抗措置として天然ガスの供給を絞る可能性も排除できない状況です。

こうした情勢を踏まえ、アメリカ・バイデン政権はヨーロッパのエネルギー確保のために日本側に協力を求めていました。

日本政府としては、国内の電力を安定的に供給するための十分な量は確保したうえで価値観を共有するヨーロッパを支援するためにLNGを融通する方針を決めたとしています。

萩生田経産相「G7との連携は今後も必要」

ヨーロッパへのLNGの融通を決めた理由について、萩生田大臣は「ウクライナをめぐるさまざまな国際情勢の中で、G7・特に価値観をともにする国との連携は今後も必要になる」と述べました。

そのうえで2011年の東日本大震災の時にヨーロッパやアメリカが協力を申し出てくれてたことに触れ「同志国との信頼関係の上に何ができるかを考え、精一杯の貢献として決断した」と述べました。

また今回の決定に対して9日に会談したエマニュエル大使とフロア大使から心からの感謝の意を表されたことを明らかにしました。

岸田首相「わが国は去年冬の経験踏まえ必要な在庫確保」

岸田総理大臣は総理大臣官邸で記者団に対し「ウクライナ情勢をめぐるヨーロッパの厳しいガス供給の事情を踏まえ、日本としてどんな貢献ができるか、経済産業省を中心に検討してきた。わが国は去年冬の経験を踏まえ、電力やガス各社には必要な在庫を確保してもらっており、現時点で電力やガス供給には問題ない」と述べました。

そのうえで「同盟国であるアメリカからの要請とヨーロッパの厳しいガス不足の状況を踏まえ、日本への安定供給が確保されることを大前提としたうえで、余剰分をすでにヨーロッパに向かわせている」と述べました。

LNG 日本国内での確保状況は

日本の発電量に占める電源別の割合では2020年度実績で
▽火力発電が76.3%
▽太陽光が7.9%
▽水力が7.8%
▽原子力が3.9%でした。

火力発電のうちもっとも多くを占めるのがLNGで全体のうち39%を占めています。

LNG依存の高い日本は中国に次ぐ世界最大規模のLNG輸入大国でもあります。

この冬は過去10年間で最も電力需給が厳しくなると見込まれています。

電力に欠かせないLNGは足りているのでしょうか。

去年11月15日時点ではLNGの在庫は全国でおよそ220万トンと、前の年の同じ時期よりもおよそ60万トン多く、過去5年で最も高い水準となっていました。

その後、先月上旬、寒波の影響で全国的に冷え込みが強まって発電量が増え、今月6日時点では去年の同じ時期よりもおよそ14万トン多いおよそ163万トンとなっています。

一方で今月後半にかけては電力各社がLNGを追加調達する予定で在庫は今よりも増える見通しだとしていて、経済産業省は「今後の天候によって予断を許さないものの、この冬はLNG在庫が少ないことによって電力がひっ迫する事態は起きないと考えている」としています。

国や電力会社にとって苦い経験となったのが昨シーズンの電力需給の厳しさでした。

想定以上の厳しい寒さとなって暖房需要が増え、LNGの在庫量が全国的に不足するという事態に陥りました。

これを教訓に経済産業省はこの冬、大手電力会社に対してLNGの確保を呼びかけるとともに全社の在庫の総量を毎週確認して公表するという異例の取り組みを行っています。

LNGの輸入と融通方法

日本の電力会社やエネルギー会社が輸入するLNG=液化天然ガスのうち7割程度が10年間から20年間といった長期契約での取り引きです。

カタールやオーストラリアなどの売り主から毎年、ほぼ決まった量のLNGを輸入しています。

一方、すぐに取り引きするスポット市場での調達は3割程度を占めます。

企業が必要な時にLNG船で1隻ずつすぐに売り買いすることができ、需要の変動に対応できます。

主に長期契約の中にはLNGをほかの企業に転売することを原則禁止する「仕向地条項」という契約がついています。

資源国に有利な契約形態で電力会社などからすると需給に合わせて柔軟に転売できないデメリットがあります。

経済産業省によりますと、今回ヨーロッパ向けに融通するLNGは長期契約のうち、この「仕向地条項」がついておらず、余剰分としてスポット市場に売りに出すものを振り向けることを想定しています。

EU駐日大使「協力関係を見事に反映 高く評価」

EU=ヨーロッパ連合の駐日代表部が声明を発表し、この中でフロア駐日大使は「日本の支援は私たちの長年の緊密な協力関係を見事に反映するものであり、これを歓迎するとともに高く評価する」とコメントしています。

米駐日大使「日本の多大な取り組みに感謝」

アメリカのエマニュエル駐日大使は「ヨーロッパの友好国がエネルギー需要を満たすための、日本による多大な取り組みに感謝する」とする声明を発表しました。

そのうえで「日本のヨーロッパへの支援は、バイデン大統領と岸田総理大臣が志を同じくするパートナーと緊密に連携して、ロシアのウクライナ侵攻を阻止し、共通の価値観を支援する取り組みの表れである」としています。