楽天G・三木谷社長 通信のミライを語る

楽天G・三木谷社長 通信のミライを語る
第4の事業者と言われる楽天モバイル。本格参入からまもなく2年です。

安さを前面に出したロケットダッシュ。しかし大手3社がたちまち追随。そうこうするうちに時代は5Gに突入。

ひと桁のシェアをどう高めるのか…。反転攻勢のシナリオは…。
三木谷社長がNHKに語りました。

(経済部記者・谷川浩太朗)

悲願の人口カバー率96%達成

2月4日夕方。世田谷区の楽天グループ本社には、経営幹部や社員たちが続々と集まっていました。

携帯電話事業の参入にあたり、人口カバー率が、当面の目標としてきた96%に到達したことを祝うためです。総務省に提出していた計画より4年余り前倒しとなったこの日、イベントを終えた三木谷社長に話を聞きました。
三木谷社長
「最終的にはやはり99%以上の、他社さんに並ぶあるいはそれを上回るカバー率を作らなくてはいけないと思っていますが、おそらく通常のスピードであれば、この何倍もかかってきたことを、われわれの技術力と社員の努力と、協力会社のご尽力によって達成できたので本当によかったと思っています」
本格参入当時の人口カバー率は23%。これがおよそ2年で96%に広がりました。

楽天は、グループが手がけるインターネットの通販サイトに出店する事業者にも、基地局の設置で協力をあおいだということです。

格安プラン武器に市場参入

「日本のスマホ代は高すぎる!」

楽天モバイルが本格参入した2年前は、大手3社が5Gサービスの大容量の料金プランを月額7000~8000円台で提供していました。これに対して楽天は税抜き月額2980円のプランで参戦。

先行する携帯大手3社の牙城を突き崩そうとしてきました。
三木谷社長
「やはり日本の携帯電話料金が高どまり、むしろ上がっていっていたような状況で、家計に大きな負担をかけていた。そうしたなかわれわれが参入することで携帯電話料金がより安価になって家計が潤えばいいかなと思った。そういう社会的ミッションは本当に大きく感じていましたね」

他社追随で苦境に、反転のシナリオは

しかしその後、携帯業界に激震が走ります。

当時の菅政権の要請を受ける形で、NTTドコモは「ahamo」、auのKDDIは「povo」、ソフトバンクは「LINEMO」と、次々と割安なプランの提供を始めたのです。総務省の調査では、去年2月以降に導入された新料金プランに乗り換えた利用者は10か月間で2930万件を超えたといいます。

「高すぎる日本の携帯電話料金」の引き下げに一石を投じたとも言われている楽天モバイル。しかし、契約者数のシェアを見ると、去年9月の時点で2%台。

これまで自前の基地局でカバーできなかったエリアはKDDIの回線を借りていたため、その使用料の重い負担がのしかかり、本格参入以降赤字が続いています。

三木谷社長は反転攻勢のシナリオをどう描いているのでしょうか。
三木谷社長
「すべてのデバイスがネットワークにつながり、AI(人工知能)が非常に使いやすい状況になってくる。個人でもAIが使えるようになってくると思います」
「昔のSFみたいにスマホに話しかけたら、全部ちゃんと声で答えてくれたり、画面で答えたりするようになると思いますね。スマホにタイプやフリップで入力することもなくなってくるでしょうね」
「スマホはもうある意味、単なる電話じゃなくてテレビやラジオであり、そして健康管理ツールでありお財布であり、またこれからの世界では、その中にAIみたいなものも乗ってくる。人間にとって最も重要なパーツのひとつになってくると思います」
「それらをいかに簡単にできるかというのもわれわれの役目だろうなと思っている」
三木谷社長が語ったイメージは、こんな感じです。
「近々○○をする!」という明確なプランはなかなか引き出せませんでした。

ただ、これらのことばの中に、楽天モバイルの存在感をもっと引き上げるための戦略、ヒントが隠されているのかもしれないと感じました。

データ通信量増は追い風に

技術の進歩で、将来、データ通信量が増えることは確実です。

「基地局やサーバーなど設備投資はかなりのものになるのでは?」わたしたちが便利になる分、通信事業を手がける会社にとっては、経営体力があるところだけが残るサバイバルゲーム…。厳しい競争だと思いますが、三木谷社長はむしろ“追い風”と捉えています。

その理由は、楽天モバイルが使う「完全仮想化」のネットワークです。
他の大手の通信網では、膨大にある全国の基地局1つ1つに専用の設備を備え付け、携帯電話から送られてくるデータの処理を行うのが一般的です。
これに対し楽天は、専用設備を置かずデータの処理はクラウド上で集約して行います(汎用の設備は設置)。

5Gの次の世代の通信規格となっても、クラウドのホストコンピューターをアップデートすることで対応、こうすることで基地局建設のコストを抑えることができるそうです。

このネットワークをうまく使えば、今後、5Gの利用が本格的に拡大し、データ通信量が急激に増えた場合でも、設備そのものを増強する場合に比べて、安い料金プランを提供し続けられると三木谷社長は考えています。
三木谷社長
「これからデータ容量は5G時代になって、ますます増えてくるわけですよ。そうすると他社さんであれば、例えば20ギガバイトで2980円の料金プランを提供していて、うちと似たような価格になっていますが、20ギガじゃ足りない時代がもうすぐ来ると思います。データ使用量が2倍3倍4倍になっていくというデータも出ていますから、価格の差別化が今後行われてくるのかなとみています」
5Gから先の世界、私たちがふだん、当たり前のように使うデータの使用量が今より格段に増えたとき、ふたたび料金競争が起きるのかもしれません。

楽天経済圏を活用し契約者増を

25年前にネット通販サイトの楽天市場を立ち上げ、その後も旅行予約サイト、ネット証券、クレジットカードと「楽天経済圏」と呼ばれるサービス網を構築してきました。
いまは基地局建設の設備投資などもかさんで、楽天グループは赤字が続いています。

「人口カバー率96%」を達成したときのように、グループ内のコラボレーションをこれから先もどんどん起こしていきたいと考えているようです。
三木谷社長
「楽天グループのサービスを通じて1億以上のIDがある。カード会社はナンバーワンになったが、その加入スピードの3倍くらいのスピードで(携帯事業の)立ち上がりは行っているので、それなりの自信はあります。やっぱりアントレプレナー(起業家)というのはチャレンジする。それは新しい技術でチャレンジするということだと思う」

「例えば金融に進出したときもそうでしたし、野球のチームをつくったときもそうでしたけど、今振り返ってみれば当然だったよね。いろんな投資家の方とかがモバイルビジネスについて当初、疑問符をつけたと思うが、5年後、10年後、当たり前だったねとなっていると思います」

頂点に立つことはできるのか

楽天がプロ野球・パリーグで初めて戦ったのは2005年。38勝97敗1分でリーグ最下位。

そして9年目の2013年。田中投手の24勝無敗が原動力にもなり、リーグ優勝、日本シリーズも制しました。

「もっとつながりやすくしてほしい」

そうした声があるのも事実です。ここから巻き返し、野球同様、携帯市場の頂点に立つことはできるのか。

ことし57歳。若手ベンチャー社長のような勢いも感じた三木谷社長のチャレンジをこれからも見ていきたいと思います。
経済部記者
谷川浩太朗 
2013年入局
沖縄局・大阪局を経て去年11月から情報通信業界を担当