台湾 原発事故後の福島など5県産食品の輸入規制 近く緩和方針

台湾当局は、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと続けてきた福島など5県産の食品の輸入規制を近く緩和する方針を発表しました。

台湾当局は、2011年3月の福島第一原発の事故のあと、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産の、酒類を除くすべての食品の輸入を停止しました。

さらに2015年5月からは、5県以外の食品についても産地証明書の添付を義務化するなど規制を強化していて、日本側は「科学的根拠に基づかない一方的な措置だ」として、規制の撤廃を求めてきました。

これについて、台湾当局は8日記者会見し、5県産の野生の鳥獣の肉やキノコ類などを除いて近く輸入を認める方針を発表しました。

ただ、輸入を解禁する5県産の食品には放射性物質検査報告書の添付を義務化し、台湾側でもすべてを検査するとしています。

また、5県以外も含めて日本産のすべての食品に産地証明書の添付を義務化する規制も継続するとしています。

記者会見した行政院の報道官は「日本は国際基準より厳しい管理を行っている」としたうえで「国際基準と科学的証拠は無視できない。世界の大部分の国が規制を緩和してきた中で、われわれは日本の理にかなった要求から逃げるわけにはいかない」と述べました。

台湾では、日本産食品の輸入規制解除に反対する世論も根強くあり、今回の緩和の方針について野党の国民党は「不意打ちで民意に背くものだ」と批判していますが、蔡英文政権は日本との懸案を解決することで、去年9月に申請したTPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入に向けてさらなる後押しを得たいというねらいもあるとみられます。

福島の柿生産者「ほかの国にも輸出広がれば」

台湾当局が東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと続けてきた食品の輸入規制を緩和する方針を示したことについて、福島県内の果物の生産者からは輸出拡大に向けて期待する声が聞かれました。

福島県特産の「あんぽ柿」は渋柿を硫黄でいぶした干し柿で、柔らかい舌触りと強い甘みが特徴です。

福島県伊達市の佐藤孝一さんは、あんぽ柿を50年近く生産しています。

あんぽ柿は、原発事故のあと出荷の自粛が2年間続き、出荷量は今もかつての8割ほどにとどまっていて、福島県は販路拡大につなげようとアジアなどへの輸出に力を入れています。

台湾当局が福島県産などの食品の輸入規制を近く緩和する方針を発表したことについて、佐藤さんは「うれしいニュースです。福島県産の農産物の輸入をまだ規制している国もあり、今回の規制の緩和はほかの近隣諸国にも影響を及ぼすと思います。少しずつでもいいので、ほかの国にも輸出が広がっていけばいいと思っています。あんぽ柿は甘くてジューシーなので、多くの人に食べてもらいたい」と話していました。

韓国は8県の水産物の輸入を禁止

韓国政府は東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて水産物への汚染が懸念されるとして、2013年から福島県など※8県の水産物の輸入を禁止しています。

この措置をめぐっては、日本政府が規制は不当だとしてWTO=世界貿易機関に提訴しましたが、WTOは2019年4月に措置の撤廃を求めた日本側の主張を退ける判断を示しました。

※8県は福島県、宮城県、岩手県、青森県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県。

これまでの経緯

東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、台湾は国民党の馬英九政権が5県産の食品の輸入停止を決めました。

馬前総統は、任期中に規制の解除も検討しましたが、与野党ともに反対意見があり、実現しませんでした。

2016年に発足した民進党の蔡英文政権が規制の緩和に動こうとしたところ、野党になった国民党が強く反対し、18年には輸入停止継続への賛否を問う住民投票を提案。

住民投票では、賛成が圧倒的多数を占め、規制の継続が決まりました。

これに対し、当時の河野外務大臣がWTO=世界貿易機関で紛争解決手続きを行うことも含めて対応を検討する考えを示すなど、日台関係における懸案となっていました。

投票結果の2年間の効力がなくなったあと、蔡英文政権は輸入規制見直しのタイミングを慎重に探っていましたが、去年12月、事実上アメリカ産を対象とした豚肉の輸入禁止の賛否を問う住民投票が不成立に終わったのを受けて「台湾の人たちは国際基準を受け入れ、高いレベルの貿易システムに参加する決意を示した」として今回の方針発表につなげました。

台湾は去年9月、TPPへの加入を申請していて、8日に記者会見した行政院の報道官は「輸入規制の緩和は台湾のTPP加入に役立つ」と述べ、日本は交換条件としていないとしながらも、TPP加入に向けた日本からの後押しに期待を示しました。

農水省 引き続き規制撤廃を働きかけ

台湾当局による福島県産などの輸入規制の緩和。

農林水産省はすべての品目で輸入を停止していたこれまでの状況からは改善したものの、野生の鳥獣の肉やキノコ類など一部の品目で輸入停止が続いているとして早期の規制撤廃にむけて、働きかけていくとしています。

東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと55の国と地域が輸入規制を行っていました。

農林水産省では現在も中国や韓国、台湾など5つの国と地域が「輸入停止」、9つの国と地域が検査証明書を要求しているとして合わせて14の国と地域で輸入規制を継続しているとしています。

農林水産省は「科学的根拠に基づけば、日本産食品の安全性は証明されている。引き続きあらゆる機会をとらえて早期の規制撤廃に向けて働きかけていきたい」としています。

松野官房長官「大きな一歩で歓迎 被災地復興の後押しに」

松野官房長官は午後の記者会見で「日本産食品などの輸入規制の撤廃に向けた大きな一歩であり、被災地の復興を後押しするものとして歓迎したい。日本と台湾の間の経済関係および友好関係がさらに深化することを強く期待している。台湾の残された輸入規制が科学的根拠に基づいて早期に撤廃されるよう引き続き、粘り強く働きかけていきたい」と述べました。

一方、輸入規制を続ける中国や韓国への対応について「日本産食品の安全性について、科学的根拠に基づき説明し、引き続き中国側および韓国側に対し、規制の早期撤廃を強く求めていく」と述べました。

中国外務省 報道官 輸入規制の緩和を批判

今回の発表について、中国外務省の趙立堅報道官は、8日の記者会見で「民進党当局が、台湾同胞の生命と健康にかかわる問題で行ったことについて、多くの同胞の目はごまかせないだろう」と述べ、輸入規制の緩和を批判しました。

中国は、福島の原発事故のあと、新潟県産のコメを除いて、福島、宮城、東京など10の都と県で生産されたすべての農作物や水産物、それに家畜などに与える飼料の輸入を停止していますが、趙報道官は「日本の食品について放射性物質による汚染のリスク評価を継続しており、要件を満たさない食品の輸入を防ぎ、国民の生命と健康を守っている」と述べ、これまでの措置を正当化しました。

ただ、台湾側が今回、TPP=環太平洋パートナーシップ協定への加入申請を念頭に置いたとみられる輸入規制の緩和方針を打ち出したことで、同じく加入を申請している中国政府の今後の対応が注目されます。