“まん延防止”から1か月 人出減少も幅広い世代に感染広がる

まん延防止等重点措置が沖縄、広島、山口に適用されてからまもなく1か月、首都圏など13都県にも拡大されてから2週間あまりがたち、人出は減少し、若い世代の感染拡大は鈍化した一方、10代以下や高齢者など幅広い世代に感染が広がり、感染の拡大が続いています。重点措置の効果について、専門家は「さまざまな場面での対策強化の呼びかけにつながったと考えられる。重症者数や入院病床のひっ迫がある程度減ってくるまでは呼びかけを続ける必要がある」と指摘しています。

先行の沖縄 広島 山口で感染減少

先月9日、ことしに入って初めてまん延防止等重点措置が適用された沖縄、広島、山口の3県では適用される直前、感染の急拡大がみられた先月初旬から夜間の繁華街の人出が大きく減少しました。

厚生労働省の専門家会合に出された繁華街の人出のデータによりますと、人出の減少傾向は重点措置が出された後も続き、先月下旬の夜間の人出は、▼沖縄県では、去年12月下旬と比べて半減したほか、▼広島県でも半減、▼山口県でも30%程度減少しました。
また、1週間の新規感染者数は3県では、まん延防止等重点措置が適用された先月9日ごろには▼沖縄県では前の週に比べて25.83倍(1/9)▼広島県で36.67倍(1/6)▼山口県で14.30倍(1/6)と過去に例のない急激な感染拡大となっていましたが、その後、感染の減少傾向が▼沖縄県では1月20日ごろ、▼広島県、山口県では今月初めごろからみられるようになりました。6日時点では▼沖縄県で前の週の0.64倍、▼広島県で0.86倍、▼山口県で0.84倍と減少傾向は続いていますが、急拡大した局面と比べて感染が減るスピードは緩やかになっています。

1月21日から適用の地域では拡大続く

先に重点措置が適用された地域では感染は減少傾向となっていますが、先月21日以降に重点措置が適用されたほとんどの地域ではまだ拡大が続いています。先月21日から重点措置が適用された首都圏の1都3県や愛知県など13都県では、重点措置が適用される前後から夜間の繁華街の人出が減少しました。このうち、▼東京都では、先月下旬の夜間の人出は、去年12月下旬と比べて30%あまり減ったほか、▼愛知県では30%ほど減少しました。また、1週間の新規感染者数は、先月10日に▼東京都で前の週と比べて10.27倍、▼愛知県で13.21倍と急拡大したあと、重点措置適用の10日ほど前から増加率が鈍化し始めました。ただ、6日時点では▼東京都と愛知県ともに前の週の1.23倍になるなど過去最多の感染者数の中でも増加が続き、減少には至っていない状況が続いています。

専門家 「感染対策強化の呼びかけにつながった」

重点措置の効果について厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治 教授は「飲食店での対策を始め、イベントの制限や企業でのテレワークの推進など感染対策の強化の呼びかけにはつながったと考えられる。ただ、感染が減少したり、増加傾向が鈍化したりした背景には、重点措置だけでなく、恒例行事で人の集まる機会が多かった年末年始が過ぎた影響もあると考えられる」と指摘しました。

また、重点措置の期限が近づいていることについては「通常の場合は感染のピークから2、3週間後に重症者数がピークになるので、重症者数や入院病床のひっ迫がある程度減ってくるまでは呼びかけを続ける必要があると考えている。ただ、感染の場は飲食店から家庭などに移っている。仮に延長をする場合には、例えばどうすれば安全に飲食できるのか検討するなど、解除するまでの準備をする必要がある」と話しています。

幅広い年代で感染続く

感染者数がなかなか減少せず、減少に転じた地域でもそのスピードは緩やかな状態が続いています。その背景には、活動が活発な20代など若い世代から始まった感染拡大が10代以下の子どもと高齢者に広がるなど、幅広い年代で感染が続いていることがあると専門家は指摘しています。感染者情報を集約する厚生労働省のシステム「HER-SYS」のデータによりますと感染者全体に占める20代の割合は、去年の年末にはおよそ20%だったのが、ことしに入って急速に割合が増加し、先月8日には39.7%とほぼ2倍になったあと、人出が減少したのと同じタイミングで先月末には18.0%にまで下がりました。その一方で、▼10歳未満は、先月上旬には5%ほどだったのが、下旬には15%ほどに増加、▼10代は先月上旬には10%ほどだったのが、下旬には15%ほどに増加、そして、▼高齢の世代でも60代、70代、80代以上がそれぞれ5%前後になるなど増加しています。

年度末までに高齢者に3回目のワクチン接種を

去年夏の感染拡大の第5波では、ワクチンの効果もあり、高齢者で亡くなる人を減らすことができたと考えられていますが、今回、オミクロン株では、重症化リスクは低くなっているとはいえ、ワクチンの追加接種がなかなか進まないこともあり、今後、さらに感染が高齢者に広がれば、亡くなる人の数は、第5波より多くなるおそれがあると指摘されています。

和田教授は「オミクロン株では多くの人にとって重症化や死亡のリスクは下がっているが、特に75歳以上ではどうしてもリスクがあり、高齢者に感染が広がれば去年夏の第5波よりも亡くなる人が多くなるかもしれない。今後、3月の年度末、4月の新年度と再び人との接触機会が大きく増加するタイミングが近づいている。それまでに少なくとも65歳以上の高齢者になるべく早く3回目のワクチン接種を行うことが必要だ」と話しています。