保育所やこども園の全面休園 全国で777か所 現場からは悲鳴

厚生労働省が全国からの報告をまとめたところによりますと、新型コロナウイルスに子どもや職員が感染し全面休園となった保育所やこども園は、3日時点で43の都道府県の777か所に上っています。前の週は37の都道府県の644か所でしたが、1週間で100か所以上増え、3週続けて過去最多となりました。

相次ぐ休園 “これ以上の感染対策は難しい”

新型コロナウイルスの感染拡大で函館市では休園する保育園などが相次いでいますが現場からはこれ以上の感染対策は難しいという声も出ています。函館市では7日現在で5か所の保育園と幼稚園などが休園していて、このうち園児92人が在籍する認定こども園の函館上湯川保育園では5日、園児1人の感染が確認され、7日、休園しました。園では定期的な消毒や換気に加えておもちゃや絵本を入れて丸ごと消毒できる「殺菌ボックス」を使用するなどしていたほか、第6波の感染拡大以降は園児を送迎する際の保護者の立ち入りを建物の玄関までとするなど感染対策を強化していました。

園では感染が確認された園児が在籍するクラスはほかのクラスの園児との交流を中止するなどの対応を決めたということですが、これ以上の感染対策は難しいとしています。
函館上湯川保育園の奥山早苗 園長は「私たちの仕事は愛着関係を大事にしていて小さい子どもはだっこやおんぶをするので離れて接するというのは難しく保育士も悩んでいます。これまでも感染対策は十分に行ってきたのでさらに対策を強化していくのは難しいです」と話していました。

濃厚接触者減らす取り組みも

函館市の保育園では、保育士が担当する園児をこれまでよりも限定することなどで濃厚接触者を減らす取り組みを始めています。

函館市桔梗町の保育園では6人の保育士が0歳から5歳までの子ども12人を預かっています。感染の急拡大を受けてこの保育園では1月中旬から、保育士は担当する園児以外は食事の介助やおむつ交換などを行わないようにしたほか、共有されていたおもちゃを年齢ごとに分けて使用するようにするなど対応を改めました。
7日も園内ではおやつの時間になると担当の保育士が1歳の子どもたちを部屋に集めてパーティションで区切ったテーブルで食事の介助などを行っていました。職員や園児どうしが接触する機会を減らすことで、感染者が出ても濃厚接触者が限られるため感染拡大を防止し休園を防ぐのがねらいです。
「きっずぱーく桔梗園」の小笠原彩主任は「園内でいつ感染が起きてもおかしくない状況になっている。いままで以上におもちゃの消毒や検温をこまめに行うなど負担が大きくなっています」と話しています。

ベビーシッターへの依頼急増 1日1000件超える日も

新型コロナウイルスの急拡大で、保育園の休園や学校の休校が相次ぎ、ベビーシッターを家庭に派遣する会社には依頼が急増しています。

東京・渋谷区にあるベビーシッターの派遣などを行う会社には、「子どもの保育園が休園し、ベビーシッターを派遣してほしい」といった依頼が1か月前の3倍に急増していて、1日1000件を超える日もあるということです。

各家庭には、子どもが濃厚接触者になっていないことを条件としたうえで、ベビーシッターはマスクや体温計はもちろん、抗原検査キットを持ち歩いてこまめに体調を確認し、家庭に訪問しています。これまでのところ、条件を満たす依頼には応じられているということですが、ベビーシッターの中には、濃厚接触者になって働けなくなる人も出てきていて、こうした場合は対応できる別のシッターに代行してもらっているということです。7日、社内で開かれた感染対策を検討する会議では、3回目のワクチン接種について、3300人分の枠を確保できたことが報告され、可能な人には早めの接種を呼びかけていました。
ベビーシッターの派遣などを行う会社の轟 麻衣子社長は「困っている保護者の声を毎日聞く中で、感染を防ぎながら社会活動を止めないようにという思いを強くしています。働く保護者の支えになりたい」と話していました。

“出張給食”への問い合わせ相次ぐ

新型コロナの感染拡大で保育所が休園になっても、給食のように栄養のバランスがとれた食事を子どもに食べさせてあげたい。保護者のニーズに応える“出張給食”のサービスに問い合わせが相次いでいます。
このサービスを始めたのは、東京・港区の企業で、保育所の休園や学校が休校になった家庭には料金を値引きして、シェフに出向いてもらっています。3日、0歳と2歳の子どもを育てる江東区の20代の女性が利用しました。2歳の子どもが通う保育所は感染者が出て休園になり、女性は自宅で子どもの世話をしながら家事をこなすことに難しさを感じていたほか、給食のように栄養のバランスがとれた食事を食べてほしいと、野菜をふんだんに使った料理をオーダーしました。シェフは筑前煮や野菜の肉巻きなど数日かけて食べられる料理を8品作り、保存用の容器に小分けにしていました。料金は、割引を利用すると5600円ほどで、出前などを頼むより安いと感じているということで、早速、子どもが味わっていました。
女性は「子どもが家にいると『かまって』と言われるのを『ちょっと待ってね』と返事をしながら、家事をするのが大変です。薄味にしてほしいといった相談もできるのがいいです」と話していました。

シェフは「コロナの影響で困っている家庭の依頼が増えていると感じます。感染状況が落ち着かないので、家でも、栄養のある食事を食べられるよう利用してほしい」と話していました。
“出張給食”の依頼が相次ぐ一方で、シェフの家族が感染するなど働けなくなるケースも出ているということです。サービスを提供する企業は、事業を継続するために別のシェフをすぐに紹介できる態勢を整えています。また、一般家庭を訪問するサービスのため、感染対策についてのガイドラインを見直すなど対策を進めているということです。
サービスを提供する企業の井出有希 共同代表は「私自身も子どもの休園を経験していて、子どもが家にいながら、日々の食事作りや仕事するのはとても大変なことだと感じていました。問い合わせも一気にきたので、本当に皆さん困っていると強く思います。おととしの春、第1波のときに休校や休園が相次いだ時と比べると、経済を回すため、家庭と仕事の両立をうまく図っていこうと考える方が多いと感じるので、感染対策を行いながら家庭の食事で困っている方をサポートしていきたい」と話していました。