「餃子といえば宮崎だ!」 新“ギョーザ日本一の街”のヒミツ

「餃子といえば宮崎だ!」 新“ギョーザ日本一の街”のヒミツ
ギョーザの街と聞いて思い浮かべるのは、どこですか?
浜松?それとも宇都宮?

ここに、宣言します。
新時代のギョーザの街は…「宮崎」です!

※注意:おいしそうな写真があります。ごはん前、ダイエット中の方はご理解のうえお読みください

(年間結果の発表を受けて内容を追加しました)

手前みそ…ではありません

「これ書いてる記者が宮崎だからだろ!」なんてコメントが聞こえてきそうですが、実はデータでも明らかになっているんです。
1世帯がどれだけギョーザを買うかまとめた国の調査、今月8日に発表された去年1年間の調査で、宮崎市が初のトップに!長くギョーザ界に君臨する2強で、おととし1位の浜松市に456円、2位の宇都宮市には1055円の大差を付けた独走だったんです!

「でも、宮崎って聞いて思い浮かべるグルメと言えばさあ…」
マンゴーに、チキン南蛮、あるいは宮崎牛…ですよね。宮崎でギョーザなんて聞いたことないって人もまだまだ多いはず。
そこで今回は、新たな日本一のギョーザの街・宮崎、その秘密を4つだけ教えちゃいます。

ヒミツ1「そんなに食べるの!?」

訪れたのは宮崎市内にあるギョーザの持ち帰り専門店。平日の午後にもかかわらず、駐車場はほとんどいっぱいです。

店に入ってみると…
次々とギョーザを袋詰めするこちらの女性。50個入り×3パック、30個入り×2パック、20個入り×5パック、合わせて310個、8000円分をお買い上げ!
女性
いやいや、全部自分で食べるわけじゃないですよ(笑)出先からの帰りなんですけど、LINEで同僚に「ギョーザ買ってから事務所戻るね」って言ったら、「私の分も」「私は何個」って次々と返事が来て…
さすがにそうですよね、ビックリしました…
でもこの50個入り2パックは自宅用です。月3、4回はこれくらいの量をまとめ買いして、冷凍してます
女性
うちには食べ盛りの子どもが3人いるんですけど、みんなギョーザが大好きで。多いと週に2回は焼きギョーザにしたりスープに入れたりして食べています。仕事で行った先にお店があれば…必ず買っちゃいます
別の男性は20個入りを1パックお買い上げ。量としては控えめですが…
男性
週に2回は買いに来ます。食事メニューもギョーザを中心に考えてますね
このほかにも、週に数回は買いに来るという人に何人も出会いました。実は宮崎市、購入の額だけではなく、購入の頻度でも日本一。1世帯当たり換算で年間9.3回と、2位長崎市を1.6回上回っています(総務省統計、去年1月~11月)。

ヒミツ2「そんな時にもギョーザ!?」

宮崎のギョーザ愛を象徴する、こんなエピソードを話してくれた人もいました。
結婚の両家顔合わせの時に、夫の父がギョーザを持ってきたんです。それも大量に…50個パックを何個も。「誰がこんなに食べると?」って思うくらい、親戚中で分けてもみんなおなかいっぱいになるくらいでした
冠婚葬祭の定番と言えばお寿司やオードブルですが、宮崎ではそんな時にもギョーザ。お世話になった人へのお礼の品、遠方の実家に帰るときのお土産…ありとあらゆる場面でギョーザが活躍していることが見えてきました。

ヒミツ3「宮崎のギョーザ消費は○○○り」

さて、ここまで読んでみて、きっとあなたも宮崎のギョーザを食べたい!と思ったでしょう。宮崎行きのキップを買い、おなかをすかせて宮崎市の繁華街へ繰り出したくなったことでしょう。

でもそこには、浜松や宇都宮で見られるような熱々のギョーザを出す店が建ち並ぶ光景はありません。
ギョーザ店社長 馬渡陽一郎さん
宮崎の人たちはギョーザを飲み会の手土産にしたり、地域の集まりなどでギョーザを持ち寄って食べたりします。もともと根強いテイクアウト文化、これは他県より圧倒的に強い部分だと思います
宮崎のギョーザを支えている習慣、それが「持ち帰り」の文化。そして外食が制限されたコロナ禍で、持ち帰り主体の宮崎のギョーザが大きく消費を伸ばした…ということなのです。実際に馬渡さんの店では感染拡大前に比べて売り上げが3割アップ、先に取材した持ち帰り専門店でもここ2年連続で2割増しになっていました。

祝・ギョーザ日本一!なんだけど…

一躍ギョーザの街の仲間入りをした宮崎ですが、実は当の宮崎市民、その実感が実に薄いんです。

持ち帰りギョーザを買いに来た人に聞いてみても「1位の自覚はなかった」「あんまり考えたことない」との声が次々と聞かれます。「謙虚」、あるいは「自己主張が苦手」とも言われる県民性がゆえか、実に奥ゆかしい「王者の風格」です。
そんな中で奮闘するのが「宮崎市ぎょうざ協議会」の渡辺愛香さん。市内でラーメンとギョーザを提供する店を営む傍ら、2020年9月に協議会を立ち上げ、会長として宮崎市のギョーザを全国に広める活動を続けています。

渡辺さんには、ほろ苦い経験があります。
渡辺さん
ちょうど協議会を発足した年、上半期の購入額では全国トップだったんです。「これはいける!」と思いました。でも下半期、8月に宇都宮市に抜かれ、11月には浜松市にも抜かれてしまって…
結局、年間順位は3位。浜松・宇都宮と宮崎、どうして差がついたのか…慢心、油断か…
渡辺さんは悔しさを胸に奔走を続けました。「餃子食べ歩きMAP」を作成し観光客や地元の人にPR。県内の名店を一堂に集めたイベントも開催。

さらには…
なんとライバルの宇都宮まで行き、神社で願かけをしたとのこと。完全アウェーに乗り込む、道場破り、挑発と言われてもおかしくない行動です。

ちなみに、どんなお願いをしたんですか?宇都宮のギョーザが全部ワンタンになりますように!とか…?
宮崎をギョーザ界の3強として、仲間に入れさせてください、って…
やっぱり、宮崎人の謙虚さはぬぐい去れないようでした。

ギョーザはその土地を包んでいる

渡辺さんがここまでギョーザ日本一に情熱を注ぐ理由、それはギョーザに使っている宮崎県産の野菜や肉の生産者から聞いた悩みの声でした。
渡辺さん
せっかく自分が作った野菜でも、それが県外に出荷されるとどう消費されてるのかわからなくなってしまったり、県外への長い輸送過程でダメージを受けて返品されたりという声を聞いてきたので
ギョーザは宮崎のお肉やお野菜を包み込んでくれているんです。自分が生産したものがこのギョーザに包まれてる、それが地元で多く消費されているって聞くと、きっとモチベーションになるし、ハッピーになれると思うんです。

ギョーザ関係者だけじゃなく、農家さん、さらには宮崎全体が元気になるんじゃないかなって。だから今回こそ、1回でいいんで、なんとか1位をとらせてくださいという気持ちです

日本一の挑戦は まだまだ続く

持ち帰り需要が中心とは言え、宮崎でもギョーザ店は感染拡大の中で難しい状況に立たされています。そんな中での「日本一」の称号は、ギョーザに携わる人たちだけでなく、宮崎という街にも元気を与えてくれる存在になるはずです。

宮崎ギョーザの挑戦はまだまだこれから。

浜松や宇都宮と比べて、観光資源としての知名度は高いとは言えません。実はこれといった定義がない宮崎ギョーザはブランドという面でも課題は多く残っています。

それでも、宮崎がギョーザにかける情熱はこれまでになく高まっています。

宮崎のギョーザが「日本一」になるという新たな時代の幕開け。
これまで食べたことのないあなたも、さあ、大きな口を開けて、“日本一のギョーザ”をほおばってみませんか?
(取材:宮崎放送局 玉木絢子/編集:ネットワーク報道部 國仲真一郎)