小林陵侑が金メダル 日本ジャンプ男子で長野大会以来の金

北京オリンピックのスキージャンプ男子ノーマルヒルで、小林陵侑選手が金メダルを獲得しました。
ジャンプ男子で日本選手が金メダルを獲得したのは1998年の長野大会以来、24年ぶりです。

“2回とも集中していいジャンプができた”

スキージャンプ男子ノーマルヒルは、河北省の張家口にあるヒルサイズが106メートルの「国家スキージャンプセンター」で決勝が行われ、日本からはエースの小林陵侑選手など4人が出場しました。

小林陵侑選手は1回目、最後から2番目の49番目に登場し、不利な追い風で前にジャンプした有力選手たちが飛距離を伸ばせない中、力強い踏み切りから飛び出して安定した空中での姿勢を作り、1回目では全体2番目の104メートル50をマークし、着地も決めて高い飛型点をえました。

1回目のポイントは145.4でトップに立ち、2位に6.2ポイント、飛距離に換算すると3メートルほどの差をつけて2回目に進みました。
2回目も追い風の中でのジャンプでしたが、安定したフォームで99メートル50をマークしました。

合計ポイントを275とした小林陵侑選手は、2回目のオリンピックで初めてのメダルとなる金メダルを獲得しました。

今大会で、日本選手が金メダルを獲得したのは初めてで、ジャンプ男子の日本選手の個人での金メダルは1998年の長野大会で船木和喜選手がラージヒルで獲得して以来、24年ぶりとなりました。

このほかの日本選手は、小林潤志郎選手が27位、佐藤幸椰選手が32位、中村直幹選手が38位でした。
今大会、日本選手初めての金メダルを獲得した小林陵侑選手は「2本とも、いいジャンプをそろえられたので、すごくうれしいです」と喜びをかみしめていました。

そして金メダルを取った直後、兄の小林潤志郎選手と抱き合ったシーンを振り返って「一緒に悔しい思いもうれしい思いもしてきたので、すごくうれしかったですね」と話しました。

一方、小林陵侑選手の兄、潤志郎選手は2回目を飛び終わったあとも弟のジャンプを見守っていました。そして、金メダル獲得を決めるとすぐに駆け寄って陵侑選手を抱きしめました。

潤志郎選手は「感動した。言葉をかけてないが、よっしゃーって抱きしめた」と振り返りました。そして「オリンピックは意外と勝てない人がいたりして 逆にこの人が勝つんだというのがあったりして難しい舞台だが、しっかり調子を合わせてオリンピックで勝ってくれたなと思う」と弟をたたえていました。
小林陵侑選手は会場でのセレモニーを終えたあと再び、インタビューに応じ「金メダルを取った実感はまだわいていない。2回とも集中していいジャンプができた結果、金メダルが取れたので本当にうれしい。2回目のジャンプは緊張したが、その中でいいジャンプができたので本当によかったです」と話しました。
そして「まだ競技は続くので、この金メダルを日本選手団と僕の勢いにつなげていきたい」と早くも次を見据えていました。
また小林陵侑選手は1998年の長野大会以来の金メダルを獲得したことについて「このあとジャンプブームに火がつけばいいと思う。自分としても自信になったしこのあともぶっ飛んでいきたいし、見ている人に楽しんでもらえればいい」とガッツポーズを見せて喜びを語りました。

勝因については「本当に自分のパフォーマンスだけに集中できていたので、どんな風であろうといいイメージができていた」と話したうえで「今までたくさんワールドカップで緊張してきたことや、いろいろな経験をできたことがこの金メダル獲得につながったのではないかと思う」と大一番でも気負わずに競技に臨めていたことを明かしました。

所属するチームの監督を務める葛西紀明選手に金メダル獲得をどのように報告したいか尋ねると「抱き合いたいですけどね、柵があるので。エアでね」とうれしそうに話していました。

「ビッグジャンプを飛びたい」

「ビッグジャンプを見せたい」
試合会場や練習の場で小林陵侑選手が口癖のように繰り返す言葉です。
日本のエースは、その言葉どおりに圧巻のジャンプで、1998年長野大会以来、24年ぶりの快挙を成し遂げました。

小林選手が世界にその名を知らしめたのは、2018年から2019年にかけてのシーズンでした。表彰台の経験がなかった前のシーズンから一気に急成長を遂げてワールドカップで13勝を挙げ、スキージャンプ男子では日本選手初の総合優勝を果たしたのです。

その急成長ぶりはジャンプの人気が高いヨーロッパの人たちに「別の惑星の人間」と表現されるほどの衝撃を与えました。

今シーズンのワールドカップでは「オフの夏から続けてきた良いジャンプのイメージがかみ合っている。だめでも次の試合までには修正できている」と自信を示し、年末年始恒例の「ジャンプ週間」でも日本選手初の2回目の総合優勝を果たしました。

さらにオリンピックまでに出場したワールドカップ16戦のうち半分近い7勝を挙げました。

金メダル候補として迎えた北京大会では大きな期待がかかっていたものの、小林選手は「今のところあまり考えていないのでプレッシャーはない。飛んだことのないジャンプ台なので楽しみ。ヒルサイズくらいのビッグジャンプを飛びたい」といつもの言葉を発して2回目の大舞台に臨みました。

自然を相手に日々、状況の変化に対応しなければならないジャンプ競技。
本番も変わらぬマイペースで臨んだ小林選手が24年ぶりの金メダル獲得という快挙を成し遂げました。

<最終順位>

金メダル:小林陵侑(日本)275ポイント
銀メダル:マヌエル・フェットナー(オーストリア)270.8ポイント
銅メダル:ダビト・クバツキ(ポーランド)265.9ポイント

27位:小林潤志郎(日本)234ポイント
32位:佐藤幸椰(日本)118.1ポイント
38位:中村直幹(日本)114.5ポイント

<1回目の結果>

1位 小林陵侑:得点145.4(飛距離104.5m)
2位 ペテル・プレブツ(スロベニア)得点139.2(飛距離103.0m)
3位 カミル・ストッフ(ポーランド)得点136.3(飛距離101.5m)
26位 小林潤志郎:得点 123.0(飛距離97.5m)
32位 佐藤幸椰:得点 118.1(飛距離95.0m)
38位 中村直幹:得点114.5(飛距離93.5m)

1回目トップで2回目に進んだ小林陵侑選手は「いいジャンプだった。2回目も続けられたらと思う。たぶん、緊張すると思うが自分のいいジャンプのイメージを心がけて飛びたい」と話していました。

32位で2回目に進めなかった佐藤幸椰選手は「勝負にいったが、動きの鈍さがあってタイミングの遅れにつながった。シーズンの結果を表すようなジャンプとなってしまった」と振り返りました。そのうえで「きょうのジャンプをどう受け止めてラージヒルにつなげるかが大事だと考えています」と次を見据えていました。

38位だった中村直幹選手は「悔いが残るようなジャンプだった。風は予選の時よりも安定していて実力が出る状況だと思ったがミスをしてしまった。大きなミスではなかったが、ほかの選手が仕上げてくる舞台では小さいミスも大きいミスになるんだなと実感した」と話していました。そのうえで「あした、あさってと試合は続くので今のジャンプを反省してまた組み立てていきたい」と気持ちを切り替えていました。

「金」の得点分析

得点を詳しく分析すると、不利な追い風に海外のライバルたちが苦しむ中でも、高い技術で飛距離を伸ばし、「飛型点」でも圧倒したことがわかりました。

スキーのジャンプは飛距離を得点化した「飛距離点」と、ジャンプの美しさや正確さ、着地の姿勢などを5人の審判が採点する「飛型点」、さらに風やスタートゲートの位置による影響を得点化したものの合計で順位を競います。

ノーマルヒル決勝の得点を詳しく分析すると、小林陵侑選手が金メダルを獲得した最大の要因はジャンプでは不利となる「追い風」への対応能力の高さにあったことがうかがえました。

特に顕著だったのが1回目のジャンプでした。
ワールドカップのランキングで上位の選手が顔をそろえる40番目以降の選手たちが登場するころになるとほとんどが「追い風」の中でのジャンプとなりました。本来の力を発揮しきれず、飛距離が100メートル台に届く選手は出ませんでした。

一方の小林陵侑選手は最後から2番目、49番目の登場。力強い踏み切りが決まり空中に飛び出してもフォームが乱れることなく着地も決めました。
飛距離は104メートル50で2位、飛型点は60点満点中57.5と全体トップ。
さらに、不利な追い風によるポイントも加算されるなどして、合計ポイントを145.4としてトップに立ちました。

2回目、小林陵侑選手が最後に登場した時点で、トップは1回目5位でオーストリアのマヌエル・フェットナー選手、合計ポイントは270.8でした。
このため小林陵侑選手は2回目で1回目より20ポイントほど少ない125.5以上をマークすれば金メダルに届く状況でしたが、同時に大きな重圧の中でのジャンプでもありました。

風は再び、追い風。データを見ると1回目より強く吹いていたことがわかります。
ただ、ここでも得点を支えたのは「飛型点」でした。
55.5はフェットナー選手に1ポイント足りなかったものの2回目で2位に並ぶ高得点。
飛距離も99メートル50にまとめ、2回目のポイントを129.6にしました。

2回目の順位だけを見れば5位でしたが、1回目のリードを守り切った形で最終的に合計ポイントを275としてフェットナー選手を4.2ポイント上回りました。

得点の分析から見えたのは「金メダル候補」と言われるプレッシャーに加え、「不利な追い風」という困難を前にしても、冷静に自分の力を出し切った25歳の姿でした。

スキージャンプ男子個人のルール等

<競技会場>
国家スキージャンプセンター
<ジャンプ台>
・ノーマルヒル(K点95m、ヒルサイズ106m)
(※K点は「飛距離による得点の基準となる」地点。ヒルサイズはジャンプ台の大きさを表すもので、安全に着地できる限界の距離)
<競技方法>
▽男子個人
決勝は1回目と2回目からなる。
決勝には予選を通過した50選手が出場。
決勝のスタート順は、1回目はワールドカップランキングの下位の選手から上位の選手の順。2回目は1回目の成績の下位の選手から上位の選手の順。
1回目の上位30選手が2回目に進む。上位30選手は2回のジャンプの合計点で順位が決まる。