モーグル 堀島行真選手の銅メダルに日本の技術

モーグル 堀島行真選手の銅メダルに日本の技術
スキーフリースタイル男子モーグルでエースの堀島行真選手が今大会、日本選手初のメダルとなる銅メダルを獲得しました。そこには日本の技術が注ぎ込まれたスキー板の存在がありました。(ネットワーク報道部・松本裕樹)

世界が支持するスキー板

堀島選手が使ったスキー板を製造・販売しているのは大阪府守口市にある会社の社長、藤本誠さん(63)。率いる社員はわずか3人です。
藤本さん
メダルが獲得できてよかったです。堀島選手は成長したなと思いました。ほかのメダリストも含めてよく知っているので、そのこともよかったです。
藤本さんのスキー板は海外のトッププレーヤーも高く評価。男子モーグルで金銀銅の選手がいずれも使っていました。また現在の男女世界トップ30に入る約8割の選手が藤本さんのスキー板を愛用しています。

きっかけは「上村愛子を勝たせたい」

藤本さんがスキー板を作り始めたのは23年前。当時、海外メーカーのゴーグルやグローブの国内代理店を営んでいた中でサポートしていた日本代表の上村愛子選手に「オリンピックでメダルを目指すためのスキー板を作る」と約束したのがきっかけでした。
藤本さん
上村選手の滑りを見て板が合っていないと感じたので、「僕が作ってやろうか?」と軽い感じで言ったから上村選手も半信半疑だったと思うんだけど。作るからにはナンバーワンのスキー板を目指そうと誓いました。

従来の素材を大胆に見直す

まず取り組んだのは素材の見直しでした。従来のポリウレタン製のスキー板は、着地の衝撃などで折れることがあり、藤本さんは最適なしなりと強さがあり、アレンジもしやすい木材に注目しました。
使ったのは国産の木材。試行錯誤の結果、柔らかいブナの板を3枚、硬いイタヤカエデの板を2枚の合わせて5枚を組み合わせることで、今のスキー板に近い形にたどりついたと言います。
さらに新潟県にある国内唯一のエッジメーカーに依頼して、板の縁にあるエッジに切れ目を入れる工夫も施しました。これによってエッジのしなやかさが増し、モーグルのコースにある「こぶ」などへの衝撃をうまく吸収できるようになりました。
藤本さん
新しい板を作っては上村選手や強豪の海外選手に試乗してもらいました。そして改善点などを聞く作業を繰り返しました。

スキー板の長さもアドバイス

今回、銅メダルを獲得した堀島選手は、前回のピョンチャンオリンピックで11位に終わった悔しさから、スキー板の長さを変えていました。世界トップクラスのターンをさらに高めるため、藤本さんは堀島選手から「それまでより10センチ長くしたい」と相談を持ちかけられていたのです。
これに対して「いきなり10センチも長くするのはさすがにむちゃだ」と藤本さんがアドバイスし、5センチにすることで落ち着きました。そして今シーズンのワールドカップでは、開幕戦から9戦連続で表彰台という好成績にもつながっていました。

これから目指すのは金メダル

藤本さんは新型コロナの影響で現地に赴くことができず、テレビ画面を通じての応援しかできませんでした。この先選手に寄り添いながら目指すのは金メダルです。
藤本さん
体が動くかぎりは板の開発に取り組んでいきたい。日本選手が金メダルをとれるようにサポートしていきたい。その様子を現地で見たい。いいものを作る自信はあります。

ウエアのデザインにも工夫が

ウエアにも堀島選手のターンをはえさせる工夫がありました。日本代表にウエアを提供したスポーツアパレルメーカーでは、選手一人一人を入念に測定してターンの時にひざがきれいにそろっているのがよりわかるように、ひざの部分にあるラインの位置を調整しました。

また滑走時に風で崩れたり、シワがついたりしないようにほかのパーツより生地を厚めにしました。
スポーツアパレルメーカー 細木博文さん
色合いや着心地など選手と相談しながら作り上げたウエアでした。堀島選手をはじめ、選手のパフォーマンスに少しでも貢献できたとしたらとてもよかったと思います。たくさんの感動をありがとうと伝えたいです
今回の堀島選手の銅メダル、日本の総合力がもらたしたメダルだったとも言えます。
堀島選手の動画はこちら
↓↓↓
https://www3.nhk.or.jp/sports/olympics/video/detail.html?vid=a92b7d34-6f7b-4ccf-a414-c1cc6a112888