東京都“宣言”要請の新たな指標 重症患者用の病床使用率など

東京都は、緊急事態宣言の発出を要請するにあたって、オミクロン株の特性を踏まえた新たな指標を設けました。

感染が収束傾向ではないことを前提として、重症患者用の病床使用率か、入院患者のなかで酸素投与が必要な人の割合のいずれかが30%から40%となり、かつ、新規陽性者数の7日間平均が2万4000人に達した場合に宣言の発出の要請を検討するとしています。

東京都は感染の主流となっているオミクロン株の特性に合わせて、宣言の発出を要請する際の新たな指標を設けました。

それによりますと、感染が収束傾向ではないことを前提として、
医療提供体制のひっ迫度合いと、社会経済活動への影響について新たに設ける指標が、いずれも満たされている場合に要請を検討するとしています。

このうち医療提供体制のひっ迫度合いをはかる指標は、
▽重症患者用の病床使用率と、
▽入院患者のなかで酸素投与が必要な人の割合のふたつがあり、
いずれかが30%から40%となった場合、病床全体の使用率なども参考に判断するとしています。

今回、新たな指標で判断するにあたり、重症患者の対象を広げ、人工呼吸器などでの管理が必要な人だけでなく、高濃度の酸素の大量投与が必要な人なども新たに加えます。

具体的には、これまでの基準に基づく
人工呼吸器やECMO=人工心肺装置での管理が必要な患者に加え、新たに、高濃度の酸素を大量に投与する「ハイフローセラピー」を行っている患者のほか、ICU=集中治療室や救命救急センターに入院している新型コロナの患者も含めます。

また、社会経済活動への影響は、新規陽性者の7日間平均が2万4000人に達することが新たな指標として設けられました。

2万4000人という数字について、都は都内で働く人の1割が欠勤しているおそれがある水準だと説明しています。

都は、オミクロン株の特性を踏まえた新たな指標を設けることで、社会経済活動を維持しながら感染拡大を防ぎたい考えです。

新たな指標のポイントは?

【なぜ新たな指標作ったの?】
新たな指標を見るときのポイントの一つは、重症患者をどう考えるかです。これまで、重症患者の基準は国と都で異なっていました。都は、人工呼吸器かECMO=人工心肺装置での管理が必要な患者を、国は、都の基準に加えて、ICU=集中治療室などでの管理が必要な患者を、重症患者と定義しています。
言いかえると、都は「患者の状態」に着目していたのに対して、国は「患者の状態」に加え「使っている部屋」にも着目しています。デルタ株が主流だったころは、症状が軽くても「隔離」するためにICUに入っていた患者も多数いました。このため都は、国とは違う独自の基準を使い続けていました。

しかし、オミクロン株が主流となって以降は、状況が変わりました。これまでのデルタ株のように「新型コロナによる肺炎などで重症になる患者」よりも「感染はしているが、がんや腎不全などもともとの疾患が重症化した患者」が多くなっていたということです。こうした患者は、これまでの都の基準では、重症患者にカウントされませんがICUなどに入っていることがわかってきたということです。

そのため都は、今の医療現場のひっ迫度合いをより実態に近い形で示すために、人工呼吸器やECMOでの管理が必要でなくても、ICUなどの「部屋」に入って重症化しているコロナ患者がどのくらいいるのか、把握することにしたということです。

【なぜ指標に幅を持たせた?】
そうして集計した新たな重症患者数をもとに計算される病床使用率。今回の新たな指標の一つは、この重症患者用の病床使用率が30%から40%となった場合です。なぜ、幅を持たせているのか。ポイントは「コロナ以外の通常の医療がひっ迫しているかどうか」だということです。

例えば、寒さが厳しく、脳卒中などで搬送される救急患者が増える冬は、コロナ患者の重症病床使用率が30%でも通常の医療がひっ迫する可能性があります。一方、通常の医療のひっ迫度合いがそれほど高くない場合は、30%を超えても医療現場が持ちこたえられる可能性もあり、推移を注視するとしています。

都は幅の範囲内で、その時々の通常医療のひっ迫度合いに応じて、判断したい考えです。

【重症患者に3つの数値】
都の基準と国の基準の2つの「数値」があった重症患者は、今回、新たな指標のもとで集計される別の「数値」が加わりこれで3つになります。

都の担当者は「オミクロン株の特性を踏まえて新しい指標を付け加えたので、その趣旨を含めてご理解いただけるようにしっかり広報していく」と話していました。

小池知事「新指標で総合的な判断を検討する」

小池知事は、記者団に対し「オミクロン株は非常に感染力が強い一方で、症状はこれまでとは違うということから、追加の指標を決めた。『命を守る、暮らしを守る』という2つの柱の中で、指標を見ながら総合的な判断を検討していく」と述べました。

そして、3日が節分であることに触れ、「『鬼は外』と言うが、今、オミクロンは家の中にも外にもいる。いつ自分や家族がかかってもおかしくないという認識で、だらだらと続けないために皆さんとともに、たたかっていきたい」と述べ、感染拡大防止への協力を重ねて呼びかけました。

東京都医師会 猪口副会長「より実態に近い形に」

都の会議で医療提供体制を分析している東京都医師会の猪口正孝副会長は、記者団に対し「今度のオミクロン株は、今まで経験してきた変異株と様相が違う。オミクロン株の感染によって人工呼吸器を使うという状態ではなく、むしろ、基礎疾患が悪くなって重症病床に入ってくる。コロナだけの指標では、病院の重症病床のひっ迫はなかなか表すことができないので、より実態に近い形にした」と述べました。

新指標 今の数値は

東京都が、緊急事態宣言の発出を要請するにあたって設けた新たな指標。

▽重症患者用の病床使用率と、
▽入院患者の中で酸素投与が必要な人の割合はいずれかが30%から40%となった場合、
▽新規陽性者数の7日間平均は、2万4000人に達した場合です。

それぞれの項目で今どれくらいの数値になっているのか見ていきます。

【重症患者用の病床使用率】
都は、新たな指標を設けるにあたり、オミクロン株の特性を踏まえて、「重症患者」とする対象を広げるとしています。
都によりますと、対象を広げた場合、重症患者用の病床使用率は、2日時点で15.1%です。

【酸素投与が必要な人】
入院患者の中で酸素投与が必要な人の割合は、2日時点で8.0%です。

【新規陽性者7日間平均】
また、新規陽性者数の7日間平均は、3日時点で1万7058.6人です。