EU 原発を条件付きで「持続可能な経済活動」と認める方針発表

脱炭素社会の実現を目指すEU=ヨーロッパ連合は、温室効果ガスの排出削減に役立つとして、原子力発電を条件付きで「持続可能な経済活動」として認め、民間の投資を促していく方針を正式に発表しました。脱原発を進めるドイツなど一部の加盟国は反対しています。

EUは温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする目標を実現するため「環境面で持続可能な経済活動」を選定して民間の投資を促していく計画です。

EUの執行機関、ヨーロッパ委員会は2日、原子力と天然ガスを使った発電などについて脱炭素への移行を支えるとして一定の条件のもとで、「持続可能な経済活動」と認める方針を正式に発表しました。

EUでは、気候変動対策などとして原発を新設する方針を打ち出す加盟国が相次いでいます。

ヨーロッパ委員会のマクギネス委員は記者会見で、まだ再生可能エネルギーだけに頼ることはできないという認識を示したうえで、「この方針は完璧ではないかもしれないが、現実的な解決策だ。脱炭素という究極の目標にわれわれを近づけるものだ」と述べました。

今回の方針では持続可能と認める条件として原発を新設する場合、▽2045年までに加盟国の当局から建設の許可を得ることや、▽高レベル放射性廃棄物については加盟国が2050年までに処分場を稼働するための具体的な計画を作るなどとしています。

天然ガスを使った発電所を建設する場合は、▽建設許可の取得は2030年までとし、▽石炭などによる、より温室効果ガスの排出が多い既存の施設の代わりとすることを求め、▽排出量にも上限を設けています。

この方針は今後、最長で6か月以内に加盟27か国のうち少なくとも20か国が反対するなどしなければ、来年1月から適用されます。

フランス マクロン政権は決定を歓迎

原発を推進するフランスのマクロン政権は、原発の新設や既存の原発の運転延長のための資金調達がしやすくなると今回の決定を歓迎しています。

マクロン大統領は去年11月、2050年までの脱炭素の目標を実現し、最近の原油や天然ガスなどエネルギー価格の高騰に対応するために原発の建設を再開すると表明していました。

演説では「エネルギーを外国に依存することなく適正な価格にとどめるには、CO2の排出を抑えたエネルギーへの投資が必要だ」と述べ、エネルギーの自立という経済安全保障の観点からも原発が必要だという考えを強調しました。

さらに、「小型モジュール炉」と呼ばれる次世代の原子炉の開発に、国として10億ユーロ、日本円でおよそ1290億円を投資する計画を示すなど、およそ20万人が従事する原子力ビジネスを国の重点産業と位置づけ、全面的に支援する姿勢を示しています。

マクロン大統領にとっては、ことし4月に再選を目指す大統領選挙を控え、雇用対策やエネルギー価格の問題で強いリーダーシップをアピールする思惑もあり、近く具体的な原発の建設計画を公表すると見られます。

ドイツ オーストリアからは反対の声

脱原発を進めているドイツやオーストリアからは反対の声が上がっています。

ドイツのハーベック経済・気候保護相は2日、「原子力エネルギーにはリスクがあり、コストも高い」としてEUの方針を批判したうえで、今後の対応を検討する考えを示しました。

ドイツは2011年の東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて脱原発を進め、年内にすべての原発の運転が止まる予定です。

また、オーストリアのネハンマー首相は2日、ツイッターに「原子力はグリーンでも持続可能でもない。EUの決定は理解できない」と書き込みました。

オーストリア政府は、ヨーロッパ司法裁判所で争うことも辞さない姿勢を示しています。

また、スペイン環境省は、NHKの取材に対し「EUの方針は、原子力と天然ガスをまぎれもなくグリーンな風力や太陽光エネルギーと同じように扱っており、脱炭素に向けた投資に誤ったシグナルを送る。資金や投資が正しいところに集まらなくなる」とコメントしました。

環境NGO「環境面で持続可能だと呼ぶことできない」

EUの方針について、国際的な環境NGO「気候行動ネットワーク」のヨーロッパ支部のオリビエ・バルダクーリアスさんは「原発には核廃棄物の処理や大規模な事故のリスク、さらにはウランの採掘に伴う環境汚染など、多くの問題があり、環境面で持続可能だと呼ぶことはできない」と指摘しました。

また、天然ガスによる発電についても「温室効果ガスの排出量の基準値から見ると、グリーンとは評価できない」としています。

そのうえで「EUの方針は、原子力と天然ガスをあたかも環境にやさしいように見せかける『グリーンウォッシュ』で、多くの投資家が反発している」と述べ、EUが民間の資金を原子力と天然ガスに誘導しようとしていると批判しました。