休校で仕事できない親を支援 でも、申請を拒む企業も…

止まらないオミクロン株の感染急拡大。
小学校や保育園の休校・休園も広がり、子どもを自宅で世話するために仕事を休まざるをえない保護者も増えています。

このままでは収入が減ってしまう…。

こんな時、申請できるのが国の経済的な支援策「小学校休業等助成金」です。

一人当たり最大一日1万5000円を上限に助成金が支給される制度なのですが…。

“申請が面倒くさいと会社に怒られた”など、制度が使いづらいといった声がSNSなどで相次いでいます。そして、制度の改善を求める声も上がっています。

教員などへの3回目接種が前倒し

保育や教育の現場を止めない。
ワクチンの追加接種が急いで行われています。

東京 港区は、保育所や小中学校などでのこれ以上の感染拡大を防ぐため、保育士や教員などの3回目のワクチン接種を当初の予定から前倒しして1日から始め、会場のホテルに仕事を終えた教員などが訪れて接種を受けていました。

区内の小学校に勤める女性教諭は「児童にうつしてもいけないし、かかってもいけないという不安が常にありました。ワクチンを打った瞬間にほっとしましたが、過信はせずに対策していきたいです」と話していました。
港区の野上宏ワクチン接種担当課長は「子どもの施設での感染も多くなっているが、少しでも安全な環境でお子さんを預けてもらい、社会生活が止まらないようにするためにも、子どもに接する施設の職員になるべく早く接種してもらえるように取り組んでいきたい」と話していました。

企業や保護者が申請できる「小学校休業等対応助成金」とは?

休校によって、仕事を休まざるを得なくなると、収入に影響が出る保護者も出てきます。
厚生労働省は、そうした休校や休園で仕事を休まざるをえない保護者を支援するための助成金「小学校休校等対応助成金」を設けています。

この助成金は原則、企業が労働局に申請し、法律上の年次有給休暇とは別に有給の休暇を所得させた場合に賃金相当額を企業に支給します。
一人当たり、
▽1月と2月は一日1万1000円を上限に
▽「まん延防止等重点措置」の対象地域では一日1万5000円を上限に支給される制度です。
非正規雇用で働く人も対象です。

全国の労働局に「特別相談窓口」を設置して対応しているほか、電話相談の窓口を設けて相談を受け付けています。

厚生労働省によりますと「小学校休業等対応助成金」は保育園などが休園しなくても、行政や施設から登園の自粛を求められた場合も利用できるということです。
対象には保育園のほかにも放課後児童クラブや放課後等デイサービスなども含まれます。
ただし、保護者の判断で登園させなかった場合は助成金の対象になりません。
電話相談の窓口は午前9時から午後9時までで、電話番号は「0120-60-3999」です。

でも…SNS上にあふれる“申請できない”の悲鳴

しかし、保護者を支援するはずの「小学校休業等対応助成金」を巡って、SNS上では「助成金を会社にお願いしたら申請が面倒くさいって逆に怒られた」などといった当事者たちの悲鳴のような投稿が相次いでいます。
助成金は個人でも労働局に申請できますが、その場合も出勤状況や直近の給与の確認などのために、労働局から企業に問い合わせがあります。

SNS上では「労働局に連絡したらクビにする的な事を言われました。有給も無くお金がありません。助けて」といった切実な投稿もありました。

このうち、実際に助成金を利用したいと会社に伝えた男性は「同じように休園になっても出勤している人がいる中で、助成金制度を使うと不公平になるので使わない」と言われたということです。

また、30代のシングルマザーの女性は、会社に相談したところ、労働基準法上の年次有給休暇を取得するように求められ「拒否するなら欠勤扱いにする」と言われたといいます。

女性は、「休校などで同様に休まざるをえなくなったら、有給休暇が足りなくなるかもしれないと怖さを感じています。困っている保護者が制度を使えるように、利用方法の周知と企業の理解を進めてほしいです」と話していました。

“利用できる制度に見直しを” 労働組合が声をあげる

こうした声を受けて、労働組合が声をあげました。

保護者や労働組合が2日会見し、企業が協力を拒んだ場合も申請できるよう制度を見直すべきだと訴えました。

都内で会見を開いた「首都圏青年ユニオン」は、
▽保護者が希望すれば企業が必ず申請するよう制度上、義務づけたり、
▽保護者が個人で申請した時に企業の協力がなくても申請を認めるべきだとしています。

会見に参加した3人の子どもを育てる40代の女性は「アパレルの会社で正社員として働いていますが、去年9月、仕事を休んだ時に会社に申請をお願いしました。しかし『法的拘束力がないから協力しない』と言われ収入は大幅に減少し、貯金を取り崩しながら生活しました。多くの人が苦しんでいることを知ってほしい」と話しました。

厚生労働省は「これまでも制度を利用してもらえるように企業への周知をしてきたが、申請に協力するよう働きかけをさらに行っていきたい」としています。

独自に “一日7500円” 支援に乗り出す自治体も

実際に、独自の支援に乗り出した自治体もあります。
新型コロナウイルスの感染拡大による学校の休校や保育所の休園で、仕事を休まざるをえない保護者を対象に、滋賀県米原市は一日当たり7500円を支給する独自の支援制度を設けています。

子どもの預け先が見つからず仕事を休まざるをえない保護者が相次いでいて収入が減少するなどの影響が懸念されていることから、米原市は仕事を休んだ時に企業から賃金が支払われない保護者を対象に独自の支援制度をおととし6月から設けています。

対象は正社員や非正規雇用で働く人、それにフリーランスが対象で申請に基づき1日当たり7500円が支給されます。
米原市によりますと、保護者の勤務時間が一日4時間以下の場合は半額の3750円となるということです。

2日までに延べ合わせて89件の申請があり、およそ480万円が支給されていて、感染の急拡大が続く中、保護者からの申請は増える傾向にあるということです。

米原市は「国の支援が届かない保護者をサポートしたい。感染の急拡大で市内でも休校や休園が相次いでいるので収入が減少する保護者を支援したい」としています。