保育園休園で仕事行けない…オミクロンが子育て世帯直撃

保育園休園で仕事行けない…オミクロンが子育て世帯直撃
散らかり放題の部屋で「一緒に遊ぼう」と笑顔のわが娘。
でも今から仕事の打ち合わせが…。

娘の保育園が突然休園になったため、急きょ在宅で娘をみることになったのです。

「在宅で仕事しながら面倒見るの無理ゲーすぎ」
「子どもと在宅の1日、長すぎる…」

ネット上では同じような思いの保護者の声が相次いでいます。過去最多の保育園休園ラッシュ、乗り越えるための策や知恵を探ってみました。
(おはよう日本 馬渕茉衣 ネットワーク報道部 柳澤あゆみ 芋野達郎)

休園で急きょ在宅勤務に

先月下旬、大阪府に住む真美さん(仮名・30代)が投稿したツイートです。
「仕事はバリバリやらなきゃいけないので、娘の相手出来ないのが申し訳ない」
娘が通う保育園で感染が広がり、今月1日まで2週間にわたり休園となりました。

共働きの夫は在宅勤務が認められていない仕事なため、金属メーカーに勤める真美さんが急きょ在宅勤務に切り替えることになりました。
ふだんは保育園に預けている午前9時から午後5時半までの間、5歳の娘の面倒を見ながら仕事をしました。

悩まされたのは、会議や電話への対応です。
製品の品質管理を担当する真美さんは、社外から営業担当者に入った問い合わせにも応じなくてはなりません。

しかし、娘は遊びたい盛り。
1人で遊べるようにとおもちゃや幼児用のワークなどを日替わりで準備していてもだんだん飽きてきてしまい、真美さんに話しかけてきます。

「お話しているから静かにしててね」

お願いしてもパソコンをのぞき込んだり、ひざの上に乗ってかまってほしいとアピールしてくることも。

問い合わせは苦情への対応であることも多く神経を使うので、娘の相手をしながらだと2倍の疲労感があるといいます。

休み時間もとれず…

さらに大変なのが、昼食の準備でした。
自分だけなら簡単にすませられますが、育ち盛りの子どもの栄養バランスを考えると、主菜1品、副菜1品、汁物というメニューに。

ひと息つきたい昼休みは返上し、台所に立って料理をしなくてはならなくなりました。
真美さん
「1日、2日ならなんとか耐えられますが、1週間、2週間となると疲労も蓄積してつらさが増していきます。ゴールが見えないまま全力疾走させられているような感覚で、いつまで頑張ればよいのか不安でした」

休園いつまで?わからずモヤモヤ…

休園で急に出勤できなくなった保護者の中には、いつまで休園が続くのか見通しが立たずにもどかしい思いで過ごす人もいます。

東海地方に住む理恵さん(仮名・40代)は、6歳の双子の娘2人が通う幼稚園で園児の感染が確認されたため、先月27日、休園になりました。

週3日パートで働く理恵さんは仕事を休んで自宅で娘たちと過ごすことになりましたが、最大の気がかりは「娘たちが濃厚接触者にあたるかわからない」ということでした。
感染が確認された園児は娘たちとは別のクラスでしたが、休園の前日、幼稚園全体で発表会の練習が行われていたため、当初は不特定多数の園児と接触があった可能性もあるとされていました。

理恵さんは「娘たちは無症状だし、そもそもクラスも別なので濃厚接触の可能性は低いのでは」と思いましたが、とにかく園からの連絡を待つしかありません。

しかし…。
幼稚園からのメール
「保健所の業務がひっ迫しているため、濃厚接触者の調査がまだ行えていません」
翌日も、その次の日もこうした状況が続きました。

そのたびに休園期間の変更が伝えられたといいます。
「濃厚接触者ではない」という保証がないままでは娘たちを外に遊びにも連れ出すこともできず、スーパーに買い物に行くにもやむをえず家に残した娘たちを心配しながら行かざるをえませんでした。

ようやく濃厚接触者ではないとわかって休園の期限が決まったと連絡が来たのは休園が始まって5日目になってからのことでした。
理恵さん
「保健所も大変な状況にあることはわかっています。でも、濃厚接触者ではないと、もう少し早く知ることができたらよかったです。保健所だけに濃厚接触者の調査などの業務を集中させるのではなく、保健所以外でも調査を行えるような体制があればと思います」

子育てアドバイザーに聞いてみた

突然の休園で、子どもとの在宅生活が続く保護者たちの悩み。
子育ての専門家に、乗り越えるためのアドバイスを聞いてみました。
子育てを支援するNPOの理事を務め、みずからも3児の母の「子育てアドバイザー」の高祖常子さんです。
高祖さんはまず何より大切なことは「無理をしないこと」だと指摘します。
高祖常子さん
「在宅勤務の場合は一つ屋根の下で『職場の機能』と休園中の子どもの『保育機能』が混在することになりますが、人も増やさず全部を自分でやっていくのは絶対に無理です。そういう前提に立って例えばシッターさんの手を借りるとか、解決策を考えていくべきだと思います」
すべて自分たちだけでやりきる必要はないという指摘、確かにそうですよね。

ただ解決策といってもできることが限られている場合もあるし、休園が何度も相次いだりといつ終わるかわからないこの状況をじっと耐え続けるのは大変、という声もありますが、どのような心持ちで過ごせばいいのでしょうか。
高祖さん
「どうやったら大変すぎないか、楽しく過ごせるかを考えてほしいですね。パパ友、ママ友とLINEで対策を相談したり、オンラインのコンテンツを利用してちょっと子どもに見てもらったり。いろんな人に相談して、いろんなコンテンツをうまく活用するといいと思います」

先生は画面の中に

こうしたオンラインのコンテンツ、さまざまなものが利用されています。
画面の中の先生
「おはようございます!きょう、朝ご飯、食べた人!何を食べたのかな?」
朝10時。
画面の中にいる幼稚園の先生のあいさつが聞こえてきました。
これは、大手教育事業者が先月下旬から無償で配信を始めた「オンライン幼稚園」です。
「恐竜って、知ってる?大昔に、地球に住んでいた動物だよ!」
午前10時から午後2時まで、まるで幼稚園や保育園に通っているようにリアルタイムで、時間割に沿って工作や知育、読み聞かせなどの動画が次々に流れます。

登園できずに元気が有り余っている子どもたちのため、体を動かせるダンスのコーナーまであります。
ネット上には、利用した人たちのさまざまな声が。
「オンライン幼稚園に喜んでる!助かる!ありがたい!」
「刺激が強かったのか、PM6時に就寝。(昼寝なし)その間仕事はかどる」
「一緒に見てたのに飽きたみたいで早々にYoutubeへ…」
配信する教育サービス大手「ベネッセコーポレーション」は、おととしの新型コロナの感染が広がり始めたころに配信を始め、その後配信を取りやめていました。

しかし感染再拡大で休園が相次ぐなかで、自宅にいても子どもたちが生活のリズムを保てるよう保護者に役立ててもらおうと、配信を再開したということです。

自治体・国の支援も

自治体も支援に動き出しています。

群馬県高崎市は休園になった保育所の園児を一時的に預かる託児所を今月上旬にも開設することを決めました。
対象は濃厚接触者にはあたらない園児で、市内の保育施設の空きスペースを活用して、それぞれの保育所の保育士に対応してもらう予定だということです。
高崎市は「感染状況を見極めながら柔軟に対応していきたい」と話しています。
また、休園で仕事を休む保護者への国の経済的な支援策もあります。

厚生労働省は、新型コロナウイルスによる学校の休校や保育所の休園で仕事を休まざるをえない保護者を支援しようと「小学校休業等対応助成金」という制度を設けています。
助成金は原則、企業が労働局に申請するもので、企業が法律上の年次有給休暇とは別に有給の休暇を取得させた場合に賃金相当額を企業に支給します。

助成金は保育園などが休園しなくても、行政や施設から登園の自粛を求められた場合も利用でき、保育園のほかにも放課後児童クラブや放課後等デイサービスなども対象に含まれるということです。
厚生労働省は全国の労働局に設置した「特別相談窓口」のほか、
電話相談窓口「0120‐60‐3999」で、午前9時から午後9時まで相談を受け付けています。

専門家“社会活動維持との両立模索を”

子育て世帯を直撃しているオミクロン株の感染拡大。

子どもや職員が感染し全面休園となった保育所やこども園は、先月27日の時点で37の都道府県の644か所に上っています。

1週間で2倍近くに増えて2週続けて過去最多となり、感染拡大が続けば今後もさらに保護者への影響が大きくなるおそれもあります。

感染拡大防止と社会活動の維持とをどう両立させていけばいいか、厚生労働省の専門家会合のメンバーで国際医療福祉大学の和田耕治教授に話を聞きました。
和田教授は感染防止に必要な対策をとることを前提としたうえで、感染者が出た場合に休園とするだけでなく、どの程度なら機能を維持できるのかや休園からの再開はどう判断するかなど影響をできるだけ小さくするために自治体や施設が模索・検討していくことが重要だとしています。
国際医療福祉大学 和田耕治教授(公衆衛生学)
「保育園は小さな子どもたちが近づいて密になりやすい面はあるが、その中でも継続できることは模索していくことが大事だと思います。また、どうやったら続けられるか模索する支援を国や自治体がしていくことが大事です」
和田教授はこうした模索が必要な背景として、オミクロン株の感染拡大は今後も当面続くと考える必要があると指摘しています。
和田教授
「オミクロン株の感染は、おそらく春まではある程度続くという中期的な視点が必要だと思います。地域によってはこれからピークを迎えようとしているところもあるのでしばらく感染は続きそうです。そういった意味で、できることを続けていくにはどうしたらいいかということを、保護者も含めて模索していただくしかないと思います」

“保育園の偉大さ”

この記事の冒頭でご紹介した大阪府の真美さん(仮名)は、今月1日までで保育園の休園が終わり、2日から2週間ぶりに職場に復帰です。

真美さんは長い休園期間中、ストレスを感じていたのは自分だけではなかったと振り返ります。
真美さん
「娘も外で遊ぶことができずストレスを感じていて、申し訳ない気持ちになりました。再開日が確定したときには心底ほっとしましたし、保育園の偉大さを感じました」
過去最多の保育園休園ラッシュというピンチを乗り越え、親子とも笑顔で過ごしていくにはどうすればいいのか。

ここにあげきれなかったものも含めて、さまざまな工夫や知恵を今後も取材・発信していきたいと思います。