ワクチン3回目接種 高齢者への接種本格化 「交互接種」課題に

新型コロナウイルスワクチンの3回目の接種で、今月から高齢者への接種が本格化します。希望者への接種を進めるうえで課題となるのが、異なるメーカーのワクチンを使用する「交互接種」がどこまで受け入れられるかです。

高齢者が3回目接種を受ける時期について厚生労働省は、
▽介護施設などの入所者は2回目から6か月後に短縮し、
▽一般の高齢者も今月から7か月後に前倒しするよう求めています。

対象者は1月までが650万人だったのに対し、2月は2241万人と、月別でも最も多くなる見通しです。

これまで、医療従事者などに加え、ワクチンの量に余裕がある自治体では64歳以下の一般の人への接種も前倒しで始まっていますが、1月31日までに接種を受けた人は448万人と全人口の3.5%で、1月末までに対象となる人数の30%となっています。

この理由について厚生労働省は、前倒しの方針を示したのが去年12月で、接種券の発送が遅れるなど自治体の準備が追いついていないことなどが背景にあるとしていて、自治体に対し接種券が届いていない人にも接種を行うことや大規模接種会場を設置することなどを求めています。

そして、今後、希望者への接種を進めるうえで課題となるのが、2回目までと異なるメーカーのワクチンを接種する「交互接種」です。

2回目までにファイザーを打った人は8360万人、モデルナは1600万人でおよそ8対2の割合だったのに対し、3回目接種のために国が3月末までに配送するワクチンはモデルナが4090万回で、ファイザーの3740万回を上回っています。

2回目までファイザーを打った人の多くが3回目もファイザーを希望すると供給が追いつかないおそれがあるとして、厚生労働省は、3回目はモデルナの接種も検討するよう呼びかけています。

厚生労働省は「交互接種の安全性や有効性はイギリスの研究でも確認されている。接種体制に余力がある自治体は、さらに前倒しして6か月たった人への接種を進めてほしい」としています。

2月以降に接種できるのは

厚生労働省によりますと、2月中に3回目接種の対象になるのは、18歳以上で、かつ2回目の接種から次の期間が過ぎた人たちです。

▽医療従事者や高齢者施設の入所者などは6か月。
つまり、去年8月までに2回目の接種を終えた人が対象となります。

▽そのほかの一般の高齢者は、2回目から7か月たった人で、去年7月までに接種を終えた人が対象です。
3月からは接種間隔が6か月に短縮され、去年9月までに接種を終えた人が対象になります。

▽64歳以下の一般の人は、2回目から8か月たった人で去年6月までに接種を終えた人が対象です。
3月からは接種間隔が7か月に短縮され、去年8月までに接種を終えた人が対象となります。

この結果、2月中に新たに対象となる人は合わせて2276万人で、このうち98%に当たる2241万人が高齢者です。

厚生労働省は自治体に対し、ワクチンの量や接種体制に余力がある場合は、64歳以下の一般の人も含めて6か月たった人から順次接種を行うよう求めています。

3回目接種を受けられる年齢や時期は自治体によって異なるため、居住する自治体に問い合わせるか、ホームページなどで確認してほしいとしています。

3回目接種や交互接種 街の人は

新型コロナウイルスの3回目のワクチン接種や交互接種について、街ではさまざまな声が聞かれました。

81歳の男性は「接種券が届いたら早く接種したいですが、できるなら接種したことがあるファイザーを選びたいです。接種したことがないワクチンを打ったときに、どんな副反応が出るか少し心配なので慣れたものが安心できます」と話していました。

79歳の女性は「外出するのが楽しみなので少しでも早く3回目を接種して安心したいと思い、すぐに予約をとりました。どちらのワクチンがよいかは自分ではよく分からずこだわりもないので、指定してもらったほうが早いし面倒もないので助かります」と話していました。

若い世代でも3回目接種に期待する声が聞かれました。

34歳の女性は「オミクロン株は重症化しにくいとも聞きますが感染が拡大しているので早く接種したいです。もし副反応が出ても乗り切れると思うのであまり心配はしていません」と話しました。

また、45歳の会社員の男性は「別の種類のワクチンを接種するほうが効果が高くなるというデータを見て、過去2回はモデルナだったのでできればファイザーにしたいです。ただ、人気が偏って待つ時間が長くなるようなら、早く接種できるほうを選ぶかもしれません」と話していました。

クリニック「安心感からファイザーの希望多い印象」

東京 目黒区のクリニックでは、高齢者の3回目接種が本格化した1月以降、かかりつけの患者から2回目までと異なるワクチンを接種する「交互接種」についての相談が増えています。

高齢者からは「モデルナを打ったことがないため副反応が心配だ」という声や「どちらの社のワクチンを打つのがよいか」といった相談が寄せられているということです。

特にこれまで接種したことのあるファイザーを希望する人が多いということで、モデルナの予約がすぐに可能でも1週間ほど待ってファイザーを接種したり、予約の空きが見つかるまで会場を数日間探した人もいたということです。

一方、すぐには接種しないという人もいるということで、過去2回の接種で副反応が出たことで様子を見ていたり、電話やオンラインでの予約を難しく感じて後回しにしたりする人もいるということです。

清水クリニックの清水泰樹院長は「以前、接種して慣れているという安心感からファイザーを希望する高齢者が多い印象だ。今後、高齢者以外でも希望がファイザーに偏れば、予約を待つ時間が長くなり全体の遅れにつながることもありうる。接種を希望する人には、どちらかにこだわらず早めに接種できるほうを選択することが大事だと伝えていきたい」と話しています。

モデルナ枠に空き目立つ 64歳以下にも対象拡大 東京 目黒区

東京 目黒区は高齢者などの3回目のワクチン接種で、モデルナの予約枠に空きが目立つことから、64歳以下にも対象を広げ接種を促進しています。

高齢者などの3回目の接種が進む中、目黒区では、ファイザーに予約が偏り、モデルナの予約枠は先週の段階で3割程度しか埋まらず、空きが目立っています。

このため、先週からは2回目から6か月たった64歳以下の一般の区民に前倒しの対象を拡大してモデルナの接種を促進していて、1日も集団接種会場には予約をした人たちが訪れ接種を受けていました。

52歳の男性は「2回目まではファイザーでしたが、モデルナで問題ないです。接種を終えて少し安心しました」と話していました。

区によりますと、3回目は2回目までと比べて早めに接種を受ける人が比較的少ないということです。

1月31日の時点で、接種券を持つ高齢者のうち、接種が終わったり、予約を済ませたりした人は78.5%でファイザーの予約枠にも空きが出始めているということです。

このため急きょ、31日からは、モデルナだけでなくファイザーについても64歳以下の人が前倒しで接種を受けられるよう対応を切り替えたということです。

目黒区保健所新型コロナ予防接種課の吉田武広課長は「枠に余裕がある以上、年齢などに限らず、早く接種したいという人が接種できるように体制を敷きました。券が届いていて接種を考えている人は早めに予約してほしいです」と話しています。

「交互接種」の安全性は

新型コロナウイルスのワクチンの副反応について、アメリカの研究グループは、3回目の追加接種でそれまでとは異なるワクチンを使っても、接種後の副反応とみられる症状はいずれも2回目までと大きな違いはなかったと報告しています。

この分析結果は、アメリカのベイラー医科大学などのグループが先月、医学雑誌の「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表しました。

グループではワクチンを接種済みのおよそ450人を対象に、追加接種でファイザーやモデルナなど異なるワクチンを接種した際の症状などについて詳しく調べました。

なお、現在、モデルナの追加接種は2回目までの半分の量となっていますが、今回の研究では2回目までと同じ量で接種した場合のデータとなっています。
その結果、いずれも56歳以上の分析で、副反応とみられる症状は、
▽3回ともファイザーのワクチンを接種した26人では、注射した部分の痛みが85%、けん怠感が77%、頭痛が50%、寒気が15%、発熱が8%などでした。

▽2回目までファイザーのワクチンを接種して、3回目にモデルナのワクチンを接種した25人では、注射した部分の痛みが72%、けん怠感が56%、頭痛が52%、寒気が28%、発熱が8%などでした。

一方、▽3回ともモデルナのワクチンを接種した25人では、注射した部分の痛みが76%、けん怠感が76%、頭痛が44%、寒気が40%、発熱が16%などでした。

また、▽モデルナのワクチンを2回接種して、ファイザーのワクチンを追加接種した29人では、注射した部分の痛みが62%、けん怠感が62%、頭痛が48%、寒気が3%、発熱が3%などでした。

グループは、まだ対象となった人数が少ないとしたうえで、いずれの場合でもほとんどは軽症から中等症で、予想外のものはみられなかったほか、2回目までに接種したワクチンの種類によって明らかな傾向の違いはみられなかったとしています。

専門家「3回目接種後の症状 それほど変わらず」

新型コロナウイルスのワクチンのいわゆる「交互接種」について、ワクチンに詳しい北里大学の中山哲夫特任教授は「3回目の接種後に出る症状はファイザーのワクチンでもモデルナのワクチンでも全体的にはそれほど変わりはないと思う。どういった反応が出るかは個人によって異なるので、3回目の接種のほうが副反応が軽く済む人もいれば、同じ程度の人もいて、重くなる人もいるかもしれない。モデルナの場合、3回目の追加接種では、ワクチンの量が半分に減っているので、2回目までよりも副反応は少なくなると考えられる」と話していました。

そのうえで「今はオミクロン株が流行していて、いつどこで感染するか分からない状況になっている。3回目の接種をすることで、重症化する割合はとても低くなるので、高齢者や基礎疾患のある方はぜひともチャンスを逃さずに3回目の接種を受けるようにおすすめしたい」と話していました。

3回目接種 オミクロン株への有効性は

厚生労働省によりますと、主にファイザーとモデルナのワクチンで交互接種を行っているイギリスの健康安全保障庁が先月、オミクロン株に対する3回目接種の有効性を報告しました。

それによりますと、18歳以上のオミクロン株の感染者76万人を対象に分析した結果、発症予防効果は2回目接種から20週以降は10%程度に低下していましたが、3回目接種の2週間後から4週間後には65%から75%に上昇したとしています。

入院予防効果についても、2回目接種から25週以降は44%に低下していたのに対し、3回目接種の2週間後から4週間後には92%に上昇したとしています。

特に3回目接種を受けた65歳以上の高齢者について分析した結果、入院予防効果は3回目接種の2週間後から9週間後で94%、10週以降は89%だったとしています。