女性の自殺 “家庭内の問題が目立つ” 感染拡大のおととし増加

新型コロナウイルスの感染が確認されたおととし、国内で自殺した人は2万1000人を超え、特に女性の自殺が増えていますが、その理由を分析したところ「子育ての悩み」や「夫婦の不和」など家庭内の問題が目立つことが宮崎大学などの調査でわかりました。

新型コロナの感染拡大以降、悩みを抱えた人の相談に応じる窓口では女性からの相談が増えています。

東京のNPO法人「あなたのいばしょ」では、おととし3月からオンラインでチャット形式の相談に応じていて、相談員が24時間体制で対応にあたっています。

※「あなたのいばしょ」ホームページ相談窓口 https://talkme.jp/

利用者のおよそ7割を占める女性からの相談は増加し続けていて、去年12月には1万6700件に達し、最近は対応が追いつかなくなりすぐにメッセージを返せない時間帯もでているといいます。

例えばある女性からは「義理の親との関係や不妊で悩み、自分の体を傷つけてしまう」という投稿が届きました。

相談員は誰かに相談しても解決は難しいと繰り返す女性に「本気でつらいと夫に伝えたら状況は変わるかもしれない」と根気強く伝え、またいつでも相談してほしいと返信していました。

女性から寄せられる相談は10代で学校や親との人間関係などが、20代以上では子育てや夫との関係、仕事の悩みなどが多いということで、新型コロナが長期化するにつれ深刻な内容が目立つようになってきているということです。
「あなたのいばしょ」の大空幸星 理事長は「もとから育児や家事のストレスを抱えていた女性が休校などでさらに負担が増え、経済的な問題も加わるなどコロナの長期化で問題が増えて悩みが重なり深刻化している。いま余裕がある人は最近会っていない友人や家族にひと言でも連絡をしてほしい。誰かに頼ることは恥ではないというメッセージを社会全体で発信し続けることが重要だ」と話します。

そのうえで「コロナの状況悪化に伴ってどの相談窓口も危機的な状況でセーフティーネットは崩壊しかけている。相談の体制拡充を国が支援し、一刻も早く孤独を防ぐための対応が必要だ」と話していました。

宮崎大学などの研究チームの分析結果は

厚生労働省によりますと2020年、1年間の全国の自殺者数は2万1081人で、男性が1万4055人、女性が7026人で、特に女性は前の年と比べて15%増えました。

宮崎大学などの研究チームは2020年1月から2021年5月までの期間、警察庁が集計している自殺の理由について、過去のデータから推定した値と比較して分析しました。

その結果、男女ともに増えているのが「生活苦」で、最大で男性で10%、女性で26%、それぞれ増えています。

一方、女性だけで特に増加が目立つのが「子育ての悩み」が40%、「夫婦の不和」が39%、「介護・看病疲れ」が25%、「家族関係の不和」が7%、それぞれ増え、家庭内の問題が大きく影響していることがわかりました。
また、健康面でも「アルコール依存症」が46%、「うつ」が34%増加しています。

この調査結果は1日、アメリカの医師会の医学雑誌に掲載されました。
調査を行った宮崎大学医学部の香田将英助教は「コロナ禍で家で過ごす時間が増えることで起きる問題のしわ寄せが女性に向かい、大きな負担となっているのではないか。自殺は複数の理由が重なって起きるため、男女で異なる傾向があることを念頭に重層的にきめ細かい対策をとっていく必要がある」と話しています。

悩みを抱えている方へ

「日本いのちの電話」
▽ナビダイヤル 0570-783-556
午前10時~午後10時

▽フリーダイヤル 0120-783-556
毎日:午後4時~午後9時
毎月10日:午前8時~翌日午前8時

厚生労働省は、悩みを抱えている人に対して相談窓口の利用を呼びかけています。
厚生労働省のホームページでは、自治体などの電話相談の連絡先や複数のNPO法人がSNS上で行っている相談窓口のQRコードなどを掲載しています。
インターネットでは「厚生労働省」「まもろうよ こころ」などで検索できます。