中国海軍の艦艇 海警局の船に転用のため10隻余を大規模改修か

中国海軍の艦艇を中国海警局の船に転用するため、10隻余りの大規模な改修が進められているとみられることが関係者への取材で分かりました。
中国海警局の船が沖縄県の尖閣諸島周辺で領海侵入や日本漁船への接近を繰り返す中、専門家は「武装化が一層強化され、少しずつレベルを上げている」と指摘していて、海上保安庁が動向を注視しています。

尖閣諸島周辺では、中国海警局の船による領海侵入が去年は34件確認され、日本の漁船に近づこうとする動きも増えています。

こうした中、現在、中国国内の複数の造船所で海軍のフリゲート艦、合わせて12隻を、中国海警局の船に転用するための改修が進められているという情報が、海外の情報機関から海上保安庁に寄せられたことが関係者への取材で分かりました。

12隻の改修は短期間で終了して就役する可能性があるほか、将来的には20隻余りが転用される計画とみられるということです。

転用はこれまでも確認されていて、分析の結果、フリゲート艦に搭載されていたミサイルは撤去された一方、機銃や76ミリ砲、射撃管制レーダーなどは維持されているということです。

中国海警局は、2018年に軍の指揮下に編入されたほか、中国は去年2月、自国が管轄するとした海域で外国の船が停船命令に従わない場合などに海警局に武器の使用を認める「海警法」を施行しています。

軍の艦艇の大規模な転用計画について、専門家は「武装化が一層強化され、少しずつレベルを上げている。力で現状変更しようとする動きとみられる」と指摘していて、海上保安庁が動向を注視しています。

76ミリ砲 30ミリ機銃 射撃管制レーダーなど装備

中国版ツイッターの「ウェイボー」などには、去年から先月にかけ、中国海軍の艦艇が海警局の船として塗装されたなどとする画像が、複数、掲載されています。

撮影日時や撮影者は不明ですが、海上保安庁はSNS上に掲載されている船は、船の形状から中国海軍の「056型」フリゲート艦を海警局の船に転用するため改修されているものと見ています。

海上保安庁の分析によりますと、白く塗装された船体には中国海警局の記章がつけられ、海軍艦艇のときに船体の中央から後方付近にあった対艦ミサイルや対空ミサイルは撤去されています。

一方、船体の前方付近にあった76ミリ砲や30ミリ機銃、射撃管制レーダーや対空レーダーはそのまま装備されています。

武装化強める海警局 急激に船を大型化

海上保安庁によりますと、中国では2013年、漁業の取締りや沿岸部の警備などを担う複数の行政機関を統合して「海警局」が設置されました。

海警局は、海上での警察活動を統一的に行ってきましたが、2018年の機構改革で軍の指揮下にある武装警察に編入され、トップにも軍の出身者が就任しました。

また、去年2月に施行された「海警法」では、軍の命令に基づいた任務を行うことが規定されました。

さらに、これまでに、海軍の退役した駆逐艦などが海警局に引き渡されたことが確認されているほか、ここ数年で急激に船の大型化が進んでいます。

海上保安庁の分析では、海警局に所属する1000トン以上の大型船は、おととしの時点で131隻と、10年前に比べて3倍以上に増えていて、海上保安庁が所有する大型巡視船の2倍近くの隻数となっています。

専門家「中国が現状を力で変更しようとしている動き」

中国海警局が、大規模な軍艦の転用を進めていることについて、中国の政治情勢に詳しい慶應義塾大学の加茂具樹教授は「中国海警局は所属する船舶が大型化し、武装化が一層強化されている。東シナ海における実際の活動も増加し、少しずつレベルを上げていて、その傾向は今後も変わらないだろう」と指摘しています。

そのうえで「軍艦の転用は中国が現状を力で変更しようとしている動きとみられ、どのような国際秩序を作ろうとしているのかを観察する1つの手がかりだ。日本は十分に警戒しなければならず、国内法、国際法に基づいて、東シナ海の海洋秩序を維持していくという意思と能力を中国に示し、広く国際社会の中で明確に説明していくことが必要だ」と話しています。

松野官房長官「予断許さぬ厳しい状況」

松野官房長官は、午後の記者会見で、報道へのコメントは控えるとしたうえで「尖閣諸島の周辺海域では、連日、中国海警局に所属する船舶による活動が確認され、昨今、これら船舶の大型化・武装化も進んでおり、予断を許さない厳しい状況にある」と述べました。

そして「政府としては、引き続き、大型巡視船の整備など、警察機関、自衛隊の体制強化と能力向上を図り、国民の生命・財産やわが国の領土、領海、領空を断固として守り抜く方針のもと、冷静かつ毅然と対応していく」と述べました。