埼玉 立てこもり事件の容疑者 診療方針めぐり医師に罵声や苦情

埼玉県ふじみ野市で起きた医師を人質にとった立てこもり事件で、殺害された医師に対して、容疑者が母親の診療方針をめぐって、過去に罵声を浴びせるなどしていたことが捜査関係者への取材でわかりました。

埼玉県ふじみ野市の住宅で起きた人質立てこもり事件で、渡邊宏容疑者(66)は、母親の訪問診療を担当していた医師の鈴木純一さん(44)を散弾銃で殺害した疑いが持たれています。

警察によりますと、調べに対し「母が死んでしまい、この先いいことがないと思った。医師やクリニックの人を殺して自殺しようと思った」と供述しているということです。

捜査関係者によりますと容疑者は事件当日、鈴木医師などを自宅に呼んで、死後1日以上が経過した母親に心臓マッサージをするよう求めましたが、蘇生はできないことを説明され、その後、銃を発砲したとみられています。

容疑者は数年前から鈴木医師に訪問診療を依頼していましたが、納得がいかないことがあると罵声を浴びせたり地元の医師会にたびたび苦情を寄せたりしていたということです。

また、地域の医療関係者によりますと容疑者は他の医療機関でも母親の診療方針をめぐって不満を訴え、病院側が対応に苦慮するケースがあったということです。

警察は、診療方針をめぐって一方的な不満を募らせていたとみて、当時の状況やいきさつを調べています。

東入間医師会 “鈴木医師は地域の医療に大きく貢献”

鈴木医師が入会していた東入間医師会によりますと、鈴木医師は地域で訪問看護を必要とする人のおよそ8割にあたる300人ほどを受け持ち、地域の医療に大きく貢献していたということです。

東入間医師会の関谷治久会長は「鈴木先生は熱い方で患者にもその家族にも寄り添っていました。医師会としても先生を失ったことはことばに表せないくらいショックです」と話していました。

訪問看護師アンケート “患者や家族からの暴力被害相次ぐ”

これまでにも医療の現場では患者やその家族からの暴力被害が相次いでいて、対策の必要性が指摘されています。

「全国訪問看護事業協会」は平成30年に訪問看護師を対象に利用者や家族からの暴力行為に関するアンケートを実施し、およそ3200人から回答を得ました。
それによりますと、これまでに利用者や家族から
▽身体的暴力をうけたことがある人は45%、
▽精神的暴力を受けたことがある人は53%、
▽セクシャルハラスメントを受けたことがある人は48%に上りました。
また、訪問看護を行う事業所側へのアンケートでは、およそ97%が対策をとる必要性があると答えた一方で、およそ6割の事業所の管理者が暴力に対する「具体的な対策がわからない」と回答したということです。

専門家「安全性を最大限に優先を」

訪問診療の現場での暴力行為などに詳しい関西医科大学の三木明子教授は、「訪問先では病院と異なりすぐに応援を呼ぶことができないため、安全性を最大限に優先する必要がある」と述べました。

海外では安全対策として警備員や警察が同行するケースもあるということで、「安全の体制を整えることは利用者への治療やケアの質を担保することにもつながる。事業所だけで対策を行うことには限界があるので国や自治体による支援についても考えていく必要がある」と話していました。