【詳しく】緊迫ウクライナ ロシアが軍事侵攻? 最新情勢は?

去年11月ごろから、ウクライナとの国境周辺にロシアが大規模な部隊を集結させてからおよそ3か月。

一歩も引かないロシアに対して、アメリカも国防総省がウクライナ周辺の国々などの防衛のため国内の部隊に警戒態勢を強化するよう指示するなど、軍事的な緊張が続いています。

いったい何が起きているのか。その背景には何があるのか。最新の情勢をまとめました。

(モスクワ支局・禰津博人)

ウクライナでいま何が起きているの?

ロシア軍は去年11月ごろから大規模な部隊をウクライナの国境周辺に展開させ、およそ3か月がたった1月でも10万人規模の部隊が集結しているとみられています。

こうした状況にアメリカ国防総省は24日、「ロシアに対して外交と対話を引き続き優先する」としながらも、8500人規模の部隊をウクライナ周辺のNATO=北大西洋条約機構に加盟する国々などの防衛のためヨーロッパに速やかに派遣できるよう備えると発表しました。
また、ホワイトハウスのサキ報道官は「ロシアがウクライナ東部に工作員を送り込んだという情報がある」、「ロシアによるウクライナへの攻撃はいつ起きてもおかしくない」と発言するなど、アメリカ政府は公式にウクライナ情勢への危機感を強調しています。

ロシアとウクライナの関係は?

30年前まで、ロシアもウクライナも、ソビエト連邦という国を構成する15の共和国の1つでした。

とりわけ、ロシアと国境を接する東部は、16世紀からロシアの影響下にあり、ロシア語を話す住民が多く暮らしています。

ウクライナ東部とは、民族や宗教も同じで歴史的なつながりが深いことから、ロシアは30年前のソビエト崩壊後も、ウクライナを“兄弟国”として、特別な存在だと考えてきました。

プーチン政権はウクライナとどうつきあってきたの?

一方、ウクライナ西部は、かつてオーストリア・ハンガリー帝国に帰属し、宗教もカトリックの影響が残っていて、ロシアからの独立志向が強く、同じ国でも東西はまるで分断されているようでした。

ロシアのプーチン政権はこうした状況を利用し東部のロシア系住民を通じて、その影響力を及ぼそうとしてきたのです。

ロシアはどうしてそこまでウクライナにこだわるの?

それを知るカギは、30年前のソビエト崩壊という歴史的な出来事に伴う、NATOの“東方拡大”です。

NATOは、もともと東西冷戦時代に旧ソビエトに対抗してアメリカなどがつくった軍事同盟です。しかし、冷戦が終結し、ソビエト連邦が崩壊するとチェコやポーランドなどかつての“東側陣営”が次々にNATOに加盟。さらに、旧ソビエトのバルト3国までもがNATO陣営に加わりました。

プーチン政権にとって冷戦時代、欧米と対じした、かつての超大国の勢力圏は徐々に失われ、国防上の“防衛線”がどんどん迫ってきているとして脅威を感じているのです。

ソビエト連邦とロシアでそんなに変わったの?

そうなんです。

それに伴って旧ソビエトの盟主・ロシアの求心力も低下しています。いまやEUやNATOの一員であるバルト3国を含め、ソビエト崩壊に伴って15の国が独立しました。
このうちウクライナ以外にも、ジョージアやモルドバなどで欧米寄りの政権が誕生し、NATOにも接近する姿勢を示しています。

また、“ロシアの裏庭”とも呼ばれた、資源豊かな中央アジアのカザフスタンやトルクメニスタンは、石油や天然ガスの輸出先として中国との結びつきを強めています。

求心力の低下に焦りがあるの?

プーチン大統領の危機感はことし初めに、カザフスタンで起きた大規模な抗議活動の際にもかいま見えました。政府を批判する抗議デモが全土に広がるなか、ロシア主導の軍事同盟の部隊をすぐに派遣し、力で抑え込む政権側を強力に支援したのです。

ロシア寄りの周辺国がこれ以上、不安定化するのを防ぎたい。プーチン大統領は、その影響がロシアに及ぶことを強く警戒しています。

こうした中で、特別な“兄弟国”ウクライナのNATO加盟は「レッドライン=越えてはならない一線」であり、NATOがウクライナに関与すること自体、絶対容認できないものなのです。

これまでも同じようなことがあったの?

2004年に行われたウクライナの大統領選挙では、プーチン大統領が2度も現地に乗り込み、東部を支持基盤にロシア寄りの政策を掲げた候補をあからさまに応援するなど、ロシアは、大統領選挙のたびに表面化する西部と東部の確執に関与してきました。

2014年に欧米寄りの政権が誕生すると、プーチン大統領は、ロシア系の住民が多く、戦略的な要衝でもあったウクライナ南部のクリミアにひそかに軍の特殊部隊などを派遣。軍事力も利用して一方的に併合してしまいました。
その1年後、プーチン大統領は、当時、情勢が不利になった場合に備えて、軍に核兵器の使用も視野に準備を進めるよう指示していたことまで明らかにしています。

クリミア併合に続いて、ウクライナ東部では、ロシアが後ろ盾となって支援する武装勢力とウクライナ政府軍との間で武力衝突がおき、今も散発的に戦闘が続いているんです。

ウクライナ国境周辺での動き、ロシアはどう主張しているの?

プーチン大統領はウクライナに軍事攻勢をかける意図はないと一貫して否定しています。むしろ、ロシアとの国境付近で、緊張をエスカレートさせているのは、アメリカなどNATOの加盟国だと批判しているのです。

20年以上、権力の座に君臨するプーチン大統領の真意を知ることは不可能です。しかし、その考えの一端をうかがい知る「論文」が去年7月、話題となりました。
論文はプーチン大統領自身が発表したということで、ロシア人とウクライナ人の関係について「精神的、文化的な結び付きは何世紀にもわたって形づくられてきた」と、同じ民族であることを強調しています。

そして「ウクライナの真の主権は、ロシアとのパートナーシップがあってこそ保持できる」と主張し、ウクライナをロシアの勢力圏に取り戻したいという、強い意向をにじませたのです。

専門家はどう見ているの?

ロシアとウクライナの関係に詳しい、ウクライナ人の政治評論家、タラス・ベレゾベツ氏は、プーチン大統領の戦略について「ウクライナ国内をできるだけ不安定にさせ、ウクライナ政府の政治的・軍事的な指導力を失わせることに重点を置いている。欧米寄りの政権の信用を失わせ、唯一、生き残る方法はロシアとの同盟しかないと示したいと考えている」と分析しています。
また、米ロ関係に詳しいロシアの国際政治学者、ドミトリー・ススロフ氏は「バイデン政権は中国への対応に力を注ぐなか、ヨーロッパ情勢を安定させることに関心がある」として、中国への対応を優先させるバイデン政権がロシアに譲歩する可能性があるとプーチン政権がみていることが、その強気の姿勢の背景にあると指摘しました。

そして、現時点ではウクライナに侵攻する可能性は高くないという見方を示す一方で、「ロシアは、NATOの拡大阻止という要求の重大性を示すためにウクライナ国境で大規模な軍の部隊を維持し、軍事的な緊張を保とうとすることは間違いない」と分析しています。

事態の打開は見られるの?

プーチン大統領は12月に2度、バイデン大統領とオンラインや電話で会談を重ねました。
1月に入ってもロシアのラブロフ外相とアメリカのブリンケン国務長官が直接話し合うなど、双方の協議はさまざまなレベルで続いています。

しかし、ウクライナの加盟などNATOがこれ以上東へ拡大しないことを、合意文書という形で法的に保証するよう求めているロシア側に対して、アメリカ側は「NATO不拡大」に関しては拒否する姿勢を鮮明にしていて、双方の主張の隔たりは埋まっていません。

こうした中、ロシア国防省は2月にベラルーシ国内のウクライナ国境付近で合同軍事演習を実施することを明らかにし、旧ソビエトの共和国の1つであるベラルーシとの軍事面での結束を強調しました。
年末恒例の記者会見で「われわれはアメリカの国境近くにミサイルを配備しただろうか?アメリカこそがミサイルを持ってこちらに近づいてきたのだ」とメディアの質問に答えたプーチン大統領。

1月に入ってキューバやベネズエラなどの首脳と相次いで電話会談し、中南米にある反米の国々との連携を通じて、バイデン政権に揺さぶりをかけようとしているとの見方も出ています。

中国との覇権争いの中でロシアと軍事的に正面切って対じすることは避けたいアメリカ。

そうした足元を見るかのようにプーチン大統領は次の一手を打ってくるとみられ、緊張緩和の道筋はまだ見えていません。