深爪にリスクも…爪切りについて専門家に聞いてみた

深爪にリスクも…爪切りについて専門家に聞いてみた
あなたの爪切りの頻度は?
1週間に1回、それとももう少し間隔を空けて?
自分にあった切り方は?
爪の切り方や爪切りの選び方を専門家に聞きました。
(おはよう日本ディレクター・朝隈芽生、ネットワーク報道部記者・馬渕安代、松本裕樹、秋元宏美)

30年以上同じ切り方 これで大丈夫?

記者(秋元)は30年以上、爪先の白い部分を残さず丸いカーブを描くように切ってきました。親からそう教わり、ほかの人も同じだと思っていました。
そして自分が親になった今、4歳の娘の爪も同じ方法で切り続けてきました。
あるときから娘の足の爪の両側の先が湾曲してきたり、先端のラインがガタガタになったりするようになりました。爪の切り方、間違えているのかな…。

不安になってネットで調べてみると、
「指先の白い部分が見えなくなるまで切ってしまうのは深爪」「足の爪は丸形よりもスクエア型がのぞましい」など自分の切り方とは全く異なる方法も紹介されていました。

専門家に聞いてみた

都内で足の治療に特化したクリニックの院長で爪のトラブルにも詳しい桑原靖医師に
子どもの爪の切り方について聞いてみました。
桑原靖医師
「子どもの深爪はそこまで気にしなくても大丈夫です。むしろ爪が長くなると、気になってかきむしったり、靴の中ですれてしまったりするので、少し短く切ってあげるぐらいがよいかと思います」
桑原医師によると大人の深爪には注意が必要だといいます。
具体的には、へん平足や外反母趾のほか、コロナ禍による在宅勤務で歩く機会が減った人。それに体重が増えたり、加齢によって股関節が硬くなった人です。
こうした人は深い位置まで爪を切ることによって、「巻き爪」となったり、爪の先端が周囲の皮膚組織に食い込んで炎症を起こして腫れる「陥入爪」を起こしたりすることがあると指摘します。
桑原靖医師
「陥入爪になると歩くたびに激痛が走り、足をかばうような歩き方になるので腰やひざに負担がかかっています。悪化してしまうと、医療機関に通院しないと完治しないので、予防的な観点から先ほどのポイントに当てはまる方は深爪は注意したほうがいいでしょう」

理想的な爪の切り方は?

では、手や足の爪はどのように切るのがよいのでしょうか。スポーツ系専門学校の講師で爪や指先の手入れに特化した講習を各地で行っている末廣亜紀さんは「爪になるべく負担をかけないで切ることが大切です」と話します。末廣さんが勧める爪の切り方を聞きました。
切る前の注意点
▽爪は適度に潤った状態で

「風呂上がりやプール、サウナのあと、爪がふやけた状態は避けてください。水を含んで膨張している状態なので、その後水分が蒸発すると爪は縮んで思った以上に短くなり、深爪の原因になります。乾燥しすぎても割れやすくなるので、手を洗って清潔にし、爪に水分や油分など潤いを与えてから切ってください」

▽爪切りは切れ味がよいものを清潔な状態で使用して
「爪切りは爪の組織を壊さない切れ味のよいものを使ってください。また家族で爪切りを使い回している人もいるかもしれませんが、爪には雑菌がたくさんついています。使い終わったら、日々の手入れは各自が消毒用のアルコールなどでふくようにしてください」
切る時の注意点
▽一気ではなく、少しずつ

「爪は皮膚に沿って湾曲しているので、広い面積を一気に爪切りの刃で挟むと負担がかかります。切り離した爪が小さな三角形になるようなイメージで、端っこから少しずつ爪を挟んで切ってください」
▽形は「スクエアオフ」がオススメ 指先のカーブに沿った形もOK
「左右対称の「スクエアオフ」といって、四角く角を少し丸めた形がオススメです。特に足の親指は巻き爪を予防するためにスクエアオフがいいと思います。それ以外の指や手の爪については、指先のカーブに沿った形でも構いません」

▽長さは指の先端と同じくらいに
「指先は先端まで骨がなく、爪が指の圧力を受け止めて骨の代わりをしてくれています。このため爪の長さは指の先端と同じくらいが理想と考えています。短くする必要がある人でも爪の白い部分を髪の毛2本分(0.5ミリ)程度は残しておいたほうがよいです。また長すぎても割れたり、折れたり、引っ掛かって剥がれたりするほか、他人やものを傷つける可能性があります」

▽頻度は手が1週間~10日に1回
 足は3~4週間に1回が目安
「爪が伸びる速さは人それぞれ。指によっても違うので目安をいうのは難しいですが、健康な成人で手の爪は10日で1ミリ伸びると言われています。足は約半分の速度です。そうすると手は1週間~10日に1回、足は3~4週間に1回が目安でしょうか」
切った後の注意点
手足ともやすりの仕上げを忘れずに
「切ったあと、切り口はギザギザになっています。一方向にやすりを滑らせ、なめらかに整えてください。また爪の角がとがったままになっていると、手であればあかぎれの原因に、足であれば巻き爪や隣の指に突き刺さる可能性があるので、両サイドの角はやすりで丸く整えてください。やすりは細かい目がオススメです」
爪の切り方は人によりさまざま。職業によっても違いがあります。

爪の切り方は多種多様

ここまで、爪の切り方やケアについて紹介してきましたが、取材を進める中で、職業によっても爪の長さの考え方はさまざまなことがわかりました。
全体的に短めに整えられた爪。プロのバイオリン奏者で教室で指導にもあたる森田梨理さんです。幼い時から爪を短くするよう教えられてきました。バイオリンは左手の指先で細かく位置を調整しながら弦を押さえるため、爪の長さで演奏に支障が出るといいます。
バイオリン奏者 森田梨理さん
「私の周囲でも、バイオリンをはじめとする弦楽器の奏者で爪が長い人は見たことがありません。多くのバイオリン奏者が子どもの時に師事する先生から『爪を短くしなさい』と言われることが多いと思います。
バイオリン教室の生徒からも爪の切り方について相談されることが多く、深爪にはしなくてもいいですが、『左手の爪は短く整えるように』と指導しています」
同じ演奏者でも爪の手入れの考え方は大きく違ってきます。全体的に長い爪。左右で長さが違う爪。不均等な爪…。すべて異なるギタリストの爪です。児島ちえさんは、福岡市で開いているサロンで、楽器演奏者の爪のケアに特化したコースを設け、きめ細かくニーズに応じています。
児島ちえさん
「同じギター奏者といっても楽器や奏法の違いで希望する爪の長さはさまざまです。0.5ミリ~1ミリの細かい単位で長さを調節したいというプロの方も多いです。演奏家の人にとって爪の長さはとても大事だと感じます。実際にギターを弾いてもらいながら微調整を繰り返すケースが多いです」
また演奏者だけではなく、スポーツ選手にとっても、爪の長短は最大のパフォーマンスを発揮するに欠かせない要素です。一般社団法人「アスリートネイル協会」によると、野球やバスケットボールの選手は、ボールをコントロールして投げるために、爪の長短にこだわりがある人が多く、左右の手だけではなく、指ごとに爪の長さを変えているケースもあるということです。またゴールタッチのわずかな差でタイムが変わる水泳では、大会前に爪をあえて長く伸ばす選手もいます。

コロナ禍で爪切りの需要高まる

コロナ禍で清潔にする意識が浸透する中、国内外で爪切りへの需要が高まっています。約400種類の爪切りを作る刃物メーカーによりますと、国内では高価格帯の商品の売り上げが伸びていて、自宅で過ごす時間が増えたのを理由にあげています。
インドでは2020年度の売り上げが前の年度の2倍以上になりました。素手で食事をすることもあるため、爪の間に詰まる汚れを取り除くための部品が付いた商品に人気があるということです。

取材後記

記者(松本)は子どもの時から深爪なのに手の爪をかんでしまうくせに悩んでいます。心理カウンセラーの椎名あつ子さんによると大人になると習慣となり、治りにくいため、子どもの時に治すのが望ましいとしています。子どもの爪をかむ行為は寂しさやなんらかのストレスに対するサインであることが多いため、怒るのではなくその原因をつきとめ、不安を取り除くことができれば爪をかまなくなると話していました。

奥深い爪切りの世界ですが、“深爪”には気をつけて自分にあった爪切りや切り方を考える機会になれば幸いです。