共通テスト不正疑い 出頭の19歳女性「スマホ上着に隠し撮影」

今月行われた大学入学共通テストの問題が試験中に撮影されて外部に送られ不正が行われた疑いがある問題で19歳の女子大学生が香川県内の警察署に出頭し、関与を認めたことが分かりました。
「スマートフォンを上着の袖に隠して撮影しました。1人でやりました」などと話しているということで、警視庁が詳しいいきさつを調べています。

今月15日と16日に行われた大学入学共通テストのうち、初日の15日の午前中に行われた「地理歴史」の中の世界史の問題用紙が試験中に撮影され、インターネットを通じて外部に送られていたことが分かりました。

警視庁のこれまでの捜査によりますと家庭教師紹介サイトを通じて依頼を受けた東京大学の学生など少なくとも2人が共通テストの問題とは知らずに解答したということです。

警視庁は、サイトに登録した受験生とみられる人物の特定を進めていましたが、27日昼前、大阪府内に住む19歳の女子大学生が香川県内の警察署に出頭したことが捜査関係者への取材で分かりました。

警察に、本人から電話があったあと出頭してきたということで「ニュースで報じられている件は私がやりました。お母さんと相談して警察に連絡することにしました」などと話しているということです。
また「スマートフォンを上着の袖に隠して撮影しました。1人でやりました」とも話し、大阪府内の試験会場で受験したと説明しているということです。

女子大学生は、別の大学に入学するために共通テストを受けていたということで「成績が上がらず魔が差してしまいました」と反省している様子だということです。

警視庁は今後、詳しいいきさつを調べることにしています。

これまでの経緯

今回の問題が発覚したのは、文部科学省に寄せられた情報がきっかけでした。

今月15日と16日に行われた大学入学共通テストのうち、15日の午前中に行われた「地理歴史」の中の世界史の問題用紙が試験中に撮影されて外部に送られ、不正が行われたという内容でした。

情報提供者は東京大学の学生で、家庭教師の紹介サイトで知り合った受験生とみられる人物から問題用紙の画像が送られてきたため解答したものの、その後、共通テストの試験中に実際の問題が送られていたことに気付いたということです。

また、SNS上にも受験生とみられる人物から送られてきたという問題用紙の画像が投稿されていて、大学入試センターは詳しい経緯の確認を進めるとともに、警視庁に相談しました。
警視庁は、公平に実施されるべき試験を妨害したり、大学入試センターに本来の業務ではない調査を行わせたりした偽計業務妨害の疑いがあるとして捜査を開始。

これまでに東京大学の学生など少なくとも5人が、家庭教師などを紹介するサイトを通じて受験生とみられる人物から問題の解答を依頼されていたことが分かりました。

この人物は、サイトでは高校2年生の女子生徒と名乗っていて、少なくとも2人の大学生が共通テストの問題とは知らずに解答したということです。

警視庁は、依頼を受けた大学生から話を聞くなどして関係する人物の特定を進めていました。

依頼された大学生「安心した」

先月、受験生とみられる人物から問題の解答を依頼されたという東京大学の男子学生は、19歳の女子大学生が出頭し関与を認めたことについて「もやもやしていた気持ちが解消され、安心しました」と話しました。

この大学生はスケジュールが合わず、実際に解答することはなかったということですが、今回の問題について「テストでいい点をとりたいという気持ちは誰もが同じで、そこで歯止めをかけられなかったのは悲しいことです。まじめに勉強している受験生だけでなく、指導をしている私たちに対しても失礼な行為だと感じています」と話していました。

共通テスト 監督と所持品の扱いは

大学入試センターによりますと、共通テストは全国の大学のほか、一部の高校などが会場になっています。

大学などには全国共通のマニュアルが配られ、各会場ではこれに基づいて試験の監督を行っているということです。

マニュアルには、監督者の選出方法や人数、試験中の業務内容、それに不正行為があった場合の連絡体制などが記載されていますが、不正防止の観点から詳しい内容は公表していないということです。

一方、試験中の所持品の取り扱いについては、受験生に事前に配られる資料に明記されています。

それによりますと、スマートフォンやウエアラブル端末、電子辞書、それにICレコーダーなどの電子機器類は試験会場への持ち込み自体は認められていますが、必ず電源を切ったうえで、かばんなどにしまうこととされています。

電子機器類の使用やカンニングなどの不正行為が発覚した場合は、受験した共通テストのすべての教科や科目の成績が無効になるということです。

試験監督の経験者「その場にいて 発見できたか自信がない」

今月行われた大学入学共通テストの試験監督を務めた男性がNHKの取材に応じ、今回の問題について「受験生がスマートフォンの操作に慣れていたとすれば、不正を発見できたかどうか正直自信がない」と語りました。

この男性によりますと、共通テストの試験監督は大学入試センターのマニュアルに基づき、会場となる大学などの教職員が数人ごとの班を作って行うケースが多いといいます。

不正行為が疑われる場合は、複数で確認したうえで警告を出すなどの手順が定められているということです。

男性は、試験会場では通常、問題用紙から目を離すなど不自然な動作をする受験生は目立つとする一方、通信機器が発達する中、操作に慣れた受験生が不正を行った場合、発見することは難しいのではないかとしています。

男性は「スマートフォンなどの性能が向上し、不正はあり得るという前提で臨んでいるが、具体的にどんな点に注意すべきかという情報が共有されているわけではない。受験生がスマートフォンの操作に慣れていて手をあまり動かさずに撮影できたとすれば、自分がもしその場にいたとしても不正を発見できたかどうか正直自信がない」と話していました。

専門家「試験監督だけで不正防ぐこと困難に」

今回の問題について、インターネットの犯罪などに詳しい神戸大学大学院の森井昌克教授は、通信技術が発達する中、試験の監督だけで不正行為を防ぐことは難しくなっていると指摘しています。

森井教授は「インターネットの時代になり、東京大学の学生と連絡を取って情報をリアルタイムに入手するといったことが簡単にできるようになった。また、スマートフォンに限らず、小型カメラが付いたメガネやペンなども販売されている。こうした状況の中、試験会場の数人の監督者だけでカンニングなどの不正行為を防ぐことは難しく、今回の問題は起こるべくして起こったと言えるのではないか」としています。

そのうえで「試験監督は受験生が不正をしないという性善説に基づいて行われている面があるが、通信技術が発達した今の状況に合わせて対策を考える必要がある。今後はスマートフォンなどの機器を試験会場に一切持ち込ませないようにすることも1つの方法だと思う」と話していました。

大学入試センター「事案の全容解明に向け警視庁と協力」

大学入学共通テストを実施する大学入試センターは「受験生とみられる19歳の女性が出頭したことについては報道で承知しているが、詳しい事実確認を行っている段階だ。今回の事案の全容解明に向けて警視庁と協力して参りたい」とコメントしています。