首相 新型コロナの感染症法上の扱い変更に慎重 衆院代表質問

国会では20日午後、衆議院で2日目の代表質問が行われました。
岸田総理大臣は新型コロナの感染症法上の扱いについて、オミクロン株の感染が急速に拡大する中で位置づけを変えることは現実的ではないとして、季節性のインフルエンザと同じ扱いに変更することに慎重な考えを示しました。

日本維新の会の馬場共同代表は、新型コロナの感染症法上の扱いについて「『二類相当』に位置づけたままでは瞬く間に保健所の機能がパンクし、患者が医療を受ける権利を阻害する事態になる。社会インフラや経済活動を止めない体制を構築するためにも、季節性のインフルエンザと同じ『五類相当』に引き下げるべきだ」と求めました。

これに対して岸田総理大臣は「オミクロン株の感染が急拡大している中、いまこのタイミングで感染症法上の位置づけを変更することは現実的ではないが、変異を繰り返す新型コロナの特性をしっかり考えたうえで、厚生労働省の審議会で専門家の意見を伺いながら議論していきたい」と述べました。

また、馬場氏は、新型コロナワクチンの5歳から11歳の子どもへの接種をめぐり「接種対象者は原則、接種を受けるという努力義務規定の適用を除外すべきだと考える。接種を希望しない子どもと保護者に対して差別などの扱いをされぬよう、十分な配慮が必要だが見解をうかがう」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「集団予防の観点から『原則として接種の努力義務を課す』としているが、専門家による有効性や安全性の確認など、必要な手続きをしていく中で検討していきたい。接種を強制することや接種の有無で不当な差別的な扱いが行われることがないよう、趣旨をしっかり周知していく」と述べました。
公明党の石井幹事長は、新型コロナワクチンの3回目接種をめぐり「2回目までと比べてモデルナ製の比率が高く、迅速に進めるためには異なるメーカーのワクチンを接種する『交互接種』への理解が欠かせない。また、感染者が増え続けるかぎり後遺症で苦しむ人も増えることになり、後遺症対策をどう考えるか」と質問しました。

これに対して、岸田総理大臣は「高齢者への3回目の接種の前倒しをペースアップするためにはモデルナワクチンの活用が不可欠だ。交互接種の有効性や安全性はイギリスの研究でも確認されていて国民に丁寧に知らせていく。後遺症については診療の手引きを取りまとめ、必要な医療を受けられるよう努めていく」と述べました。

また、石井氏は、子ども政策の司令塔として新たに創設される「こども家庭庁」に関連して「日本は総合的に子どもの権利を保障する法律がない。『こども家庭庁』の設置とともに、すべての政策の基盤として子どもの権利を保障する『子ども基本法』を制定すべきではないか」と質問しました。

これに対し、岸田総理大臣は「『子ども基本法』については現在、与党において議論が行われているものと承知しており、子ども政策を社会のど真ん中に据えた取り組みが強力に推進されるよう議論を深めていただくことを期待している」と述べました。
国民民主党の玉木代表は、賃上げについて「この国会を賃金、給与を上げることに与野党を超えて知恵を絞る『賃上げ国会』にしていこう。20年間で日本の賃金水準を倍にするという、中長期のビジョンを示してはどうか」と求めました。

これに対して、岸田総理大臣は「成長と分配の好循環の流れを大きく加速していくための鍵は日本の未来を担う若者世代、子育て家庭だ。ここに賃上げも含めた大きな意味での人への投資を集中させ、非正規雇用者の正規化や男女の賃金格差の是正を含め、世帯所得の大幅な引き上げを目指した政策を推進していきたい」と述べました。
共産党の志位委員長は「沖縄をはじめとするアメリカ軍基地が水際対策の大穴になっている。この問題の根本はアメリカ軍に治外法権的な特権を保障している日米地位協定であり、抜本改正に踏み切るべきではないか」とただしました。

これに対し、岸田総理大臣は「アメリカ軍関係者に対する入国時の検疫は、他国と比べて特別な扱いをしているという指摘はあたらない。日米地位協定の見直しは考えてないが、日米合同委員会で、感染拡大の防止と沖縄県を含む地元の不安解消に向けて、日米間の連携をより一層強化していく」と述べました。
また、岸田総理大臣は、中国などでの人権侵害に懸念を示す国会決議について「普遍的な価値が中国でも保障されることが重要であるというわが国の立場は、これまでもさまざまなレベルで中国側に直接働きかけている。そのうえで、国会での決議の採択は国会でしかるべくご議論いただくべきものだ」と述べました。

さらに、横田めぐみさんの拉致事件をテーマにした映画をめぐり「ミュンヘン在住の日本人が多くのドイツ国民に見てもらおうと現地の総領事館に上映への協力を要請したが、全く取り合ってくれなかった。協力できない理由があるのか」と問われたのに対し、岸田総理大臣は「対応するよう、改めて指示をした。拉致問題に関する国際世論の理解と支援を得るためにいかなることが効果的かという観点から、今後も不断の検討を行いつつ積極的に取り組んでいく」と述べました。

また、みずからが掲げる「新しい資本主義」について「今後の実行計画で成長分配戦略の施策の内容を具体化し、毎年度、工程表を作成していく」と述べました。

公明 石井幹事長「前向きな答弁」

公明党の石井幹事長は、記者団に対し「『子ども基本法』について与党内の議論が深まることを期待するなどと、前向きな答弁をいただいた。また、オミクロン株の濃厚接触者の待機期間の短縮についても、科学的知見を集めて実効性のある対策をとるということで、政府の取り組みを期待したい」と述べました。

維新 馬場共同代表「参院選終わるまで すべてが慎重」

日本維新の会の馬場共同代表は、記者会見で「『安全運転国会』との指摘どおり、岸田総理大臣の答弁はすべてが慎重で、頭や腹の中にはいろいろな考えがあっても、参議院選挙が終わるまでは封印するつもりなのだろう。国内外で難題が山積しているのに、とにかく選挙を無事に乗り切って、長期政権を狙うようなやり方では、国民の信任は得られない」と述べました。

国民 玉木代表「提案を行うことで突き上げていく」

国民民主党の玉木代表は、記者会見で「岸田内閣の政策は、総論では賛成のことが多いのも確かだが、具体的な内容が乏しかったり、実行が遅かったりするところがある。『対決より解決』という党の方針にもとづき、引き続き、どんどん提案を行うことで、政府を突き上げていきたい」と述べました。

共産 志位委員長「ほとんど答弁不能だ」

共産党の志位委員長は、記者会見で「コロナの問題では、ワクチンも検査も医療体制も、すべてが遅れている理由をただしたが、一切答えがなかった。また、日本が経済成長できない国、賃金が上がらない国になってしまったことを追及したことにも、一切答えず、ほとんど答弁不能だ」と述べました。

一方で、「男女の賃金格差の公表を提起したことに対し、『有価証券報告書の開示項目にする』と明言したのは一歩前進であり、率直に評価したい」と述べました。