東京都 感染状況の警戒レベル 最も深刻なレベルに引き上げ

急速な拡大が続く東京都内の感染状況について、都の専門家は最も深刻な警戒レベルに引き上げました。
専門家は「社会活動の停止を余儀なくされる可能性がある」などと述べ、強い危機感を示すとともに重症化リスクの高い高齢者の感染が増えているとして、家庭内や高齢者施設などで対策を徹底するよう呼びかけました。

20日開かれた都のモニタリング会議で、都内では、19日までの新規陽性者の7日間平均が4555.3人となり、1週間前の1135.7人からおよそ4倍に増加したことなどが報告されました。

またこのままの増加比が続けば、1週間後の1月27日には、感染確認が1万8266人になるという推計が明らかされました。

専門家は「第5波の立ち上がりをはるかに上回るスピードで増加しており、これまでに経験したことのない危機的な感染状況となる可能性がある」と指摘しました。

また「感染拡大が急速に進んでおり、社会活動の停止を余儀なくされる可能性がある」などと述べ、強い危機感を示しました。

専門家は都内の感染状況の警戒レベルを1段引き上げ、4段階のうち最も深刻なレベルにしました。

感染状況の警戒レベルは3週連続で引き上げられ、最も深刻なレベルになるのは去年9月24日以来です。

また会議では、1月17日までの1週間に65歳以上の高齢者の感染が1184人確認され、前の週の4倍余りに増えていることが報告されました。

専門家は「高齢者は重症化リスクが高く、入院期間も長期化することが多い」として、家庭内や高齢者施設などで対策を徹底するよう呼びかけました。

一方、会議では、都内の、
▽入院患者が19日時点で1805人と、1週間前より851人増え、
▽重症患者も10人となり、1週間前より6人増加したことが、
報告されました。

専門家は、医療提供体制の警戒レベルを1段引き上げ、4段階のうち上から2番目のレベルにしました。

レベルの引き上げは2週連続で、上から2番目になるのは去年10月14日以来です。

専門家は、このままの水準で新規陽性者が増加した場合、新たに発生する入院患者は、都が確保している病床数を超えるおよそ7160人に上るとみられると指摘し「医療提供体制のひっ迫が危惧される」と述べ、強い危機感を示しました。

都内感染者 95%余がオミクロン株疑い(17日までの1週間)

東京都内の感染者を対象に1月17日までの1週間に行われたスクリーニング検査で、オミクロン株の疑いが95%あまりにのぼったことがわかりました。

20日開かれた都のモニタリング会議で、今月17日までの1週間に検査を行った6112人のうち、判定不能だった376人を除き、95.3%にあたる5466人がオミクロン株に感染している疑いがあるということです。

前の1週間の87.1%からさらに8ポイントあまり増えました。

都の「専門家ボード」の座長で、東北医科薬科大学の賀来満夫特任教授は「都内で最初に確認されてから5週目で9割に達した。デルタ株よりも10週早く達しており、これまでにない速いスピードでオミクロン株に置き換わっている」と述べました。

そのうえで「長時間にわたる会食、特にマスクなしでの会食をできる限り避けるなど対策を徹底することで感染のリスクを減らすことが重要だ」と指摘しました。

「通常医療含め医療提供体制ひっ迫が予測される」

モニタリング会議の中で、東京都医師会の猪口正孝副会長は「冬は緊急対応を要する脳卒中や心筋梗塞、骨折などの救急受診が多い。しかし、それぞれの病院では新型コロナの患者の病床確保を進めているため、これらの患者の入院の受け入れが非常に難しくなっている。感染者や濃厚接触者となり就業制限を受ける医療従事者が多数発生すれば、病床が空いていてもマンパワー不足で患者の受け入れができなくなり、通常の医療も含めた医療提供体制がひっ迫することが予測される」と話していました。

「生活を守るための対策早急に講じる必要」

モニタリング会議の中で、国立国際医療研究センターの大曲貴夫国際感染症センター長は、感染拡大が急速に進んでいるとして「社会活動を維持し、都民の生活を守るための対策を早急に講じる必要がある」と述べました。

また「人との接触の機会を減らすため外出や買い物の回数を減らすことや、自分や家族が感染者や濃厚接触者となり外出できなくなった場合を想定して生活必需品を準備することなどを、都民に呼びかける必要がある」と述べました。

そのうえで「新規感染者のうち10歳未満と10代の割合が上昇している。12歳未満はワクチン未接種であることから、保育園や幼稚園、学校生活で感染防止対策の徹底が求められている」と呼びかけていました。

小池知事「オミクロン株 皆さんのすぐ隣に」

モニタリング会議のあと小池知事は記者団に対し「オミクロン株は、皆さんのすぐ隣にいる。『自分が感染しているかも』、『大切な人を感染させてしまうかも』という意識も含めて、行動を決めてもらいたい」と述べました。

そして、21日からまん延防止等重点措置が適用されることについて、「『感染を止める、そして社会を止めない』という考え方のもとで、何としても感染を抑え込んで、社会活動の基盤を守り抜いていく。一人ひとりの集合体としての結果にもなるので、是非とも協力をお願いしたい。これは法律に基づいた要請だ」と述べました。

東京都医師会 猪口副会長「一般医療も含めかなり大変な状況に」

医療提供体制の警戒レベルが1段引き上げられ、4段階のうち上から2番目のレベルになったことについて、東京都医師会の猪口正孝副会長は「通常医療を制限し、体制の強化が必要な状況だ」と指摘しました。

その上で「冬場は脳卒中や転倒による骨折などの患者がものすごく多く、救急はかなり大変な時期だ。その上で、新型コロナのために病床を押さえている。病床を確保し続けたり、新型コロナの患者が増えると、一般医療も含めてかなり大変な状況になる。ギリギリのところでやっている印象だ」と述べました。

また、65歳以上の高齢者の感染が増えていることについて「高齢者は重症化する率が非常に高い。第5波の経験からも、重症化したあと、長い期間の入院になっていく。高齢者の感染は、若い方たちの感染と比べて、医療機関にとっては長い期間にわたってかなりの負荷がかかってくる」と述べ、懸念を示しました。