「いったいいつ感染したのか?」オミクロン株 対策の難しさ

感染力が強いとされ、急速に拡大している変異ウイルス「オミクロン株」。感染した患者の多くが持つ疑問があります。

「いつ感染したんだろう?」

オミクロン株に感染した40代の女性の話からは、オミクロン株の特性と対策の難しさが見えてきました。

出発前のPCR検査は2回とも陰性だったが

オミクロン株に感染したのは、ふだんはケニアで働いていて、休暇を利用して去年12月19日に一時帰国した、40代の会社員の女性です。

ケニアのナイロビからドバイを経由し日本に向かいましたが、ケニアを出発する48時間前と6時間前の2回、PCR検査を受け、いずれも陰性でした。

ところが、ケニアを出発しておよそ20時間後、成田空港の検疫での検査で、一転、新型コロナウイルスへの感染が確認されたといいます。

女性は「日本に帰国する数週間前から感染しないようにと、仕事でも私生活でも特に慎重に対策をとっていました。自覚症状もなかったので、結果に驚きましたし、ショックでした」と話します。

38度の熱とせき 熱下がった後ものどに痛み

感染が確認されたことを受けて、療養用の空港近くのホテルに滞在しましたが、夜になると徐々にのどの痛みを感じるようになり、その翌朝、38度の熱とせきの症状が出ました。

解熱剤を服用し、1日ほどで熱は下がったものの、のどの痛みとせき、鼻水が続きました。

ホテル療養から4日目、解析の結果、オミクロン株の疑いが強いことがわかり、全員入院という国の当初の方針に沿って、入院しました。

女性は「入院するころには、のどの痛みや鼻水などは少しずつ和らいできていて、CT検査の結果、肺の炎症も見つからず、軽症という診断で、ほっとしました」と振り返ります。

その後、順調に回復し、1月4日に退院しました。

「いつ感染したのか?」

女性には疑問が残っています。

出発前2回の検査では陰性だったのに「いつ感染したのか?」ということです。

「南アフリカでオミクロン株が見つかり、ケニアは出発の数日前から感染が広がっていました。そのため現地では、会食はもちろん、対面でミーティングすることもありませんでした。常にマスクを着用していましたし、人と長く話すこともなく、感染のタイミングは思い当たりません。そもそもPCR検査の結果が正しかったのかということもありますが、心当たりがあるとすれば、PCR検査の会場やケニアからドバイまでの機内が混雑していたことでしょうか。オミクロン株の感染力の強さを感じました」

医師「心当たりがないという患者は少なくない」

女性の主治医で国際医療福祉大学成田病院の津島健司副院長は、今回の感染について、検査の精度の問題や機内での混雑なども考えられるとしながらも、同じように心当たりがないという患者は少なくないといいます。

そのうえで、感染の広がりやすさにはオミクロン株の特性があると話します。

国際医療福祉大学成田病院 津島健司副院長
「デルタ株では、肺や肺の近くの場所、いわゆる『下気道』で炎症が起き、息苦しさを訴える患者が多かったのに対し、オミクロン株は、鼻やのどなど『上気道』に炎症が現れる特徴がある。このため、酸素吸入器が必要になるような患者は今のところほぼいないが、せきや鼻水などの症状が出やすく、周囲にウイルスを飛散しやすい。軽症の人が多いが、そうした人が行動することで知らず知らずのうち感染を広げるおそれがある」

最近は中等症の患者も

12月からオミクロン株の患者を受け入れているこの病院では、当初は軽症が多かったものの、感染の拡大に伴い最近、中等症の患者も見られるようになったといいます。

病院では1月13日までに、基礎疾患を持つ70代の男性と、ワクチンを未接種だった20代男性の、合わせて2人が酸素吸入器が必要な中等症と診断されました。

津島医師は「患者の母数が増えれば、一定数悪化する人は出てきて、それが徐々に増えていく。寝たきりや基礎疾患のある高齢者など、リスクの高い人の感染が増加することが懸念される」と指摘します。

感染力が強いといっても「気をつけることは変わらず」

では、感染力の強いオミクロンを食い止めるために、私たちはどうしたらいいのか。

津島医師は、とにかく基本的の対策を徹底することだと強調しました。

国際医療福祉大学成田病院 津島健司副院長
「感染力が強いといっても、気をつけることはこれまでと変わりません。マスクの着用と手洗い、食事は時間を分けるなど、基本的な対策をしっかりやる。そして、高齢者の3回目の接種も急ぎ、重症化のリスクの高い人への感染を抑えていくことが重要だと思います」

(取材:社会部 記者 高橋歩唯)