中国 去年10~12月GDP プラス4.0% 伸び率縮小 減速続く

中国の去年10月から先月までのGDP=国内総生産の伸び率は、前の年の同じ時期と比べてプラス4.0%でした。前の3か月よりも伸び率が縮小し、中国経済の減速が続いていることを示しています。

中国の国家統計局が17日発表した去年10月から先月までのGDPの伸び率は、物価の変動を除いた実質で、前の年の同じ時期と比べてプラス4.0%でした。

プラス成長は7期連続ですが、伸び率は前の3か月よりも0.9ポイント縮小し、景気の減速が続いていることを示しています。

一方、去年1年間のGDPの伸び率は前の年と比べてプラス8.1%で、新型コロナウイルスの影響で低い成長率だった前の年からは回復が進みました。

先月にかけて中国経済は、不動産大手「恒大グループ」の経営問題が続くなど、不動産の開発投資や販売が減少し、建築資材や住宅用品などの関連業界にも影響が広がりました。

また、徹底して感染を抑え込もうとする「ゼロコロナ」政策の影響で人の移動が制限されたことなどから個人消費が停滞しました。

一方、欧米などの経済の回復を受けて輸出は好調だったほか、各地で起きていた電力不足の状況が改善し、企業の生産には持ち直しの動きも見られました。

ただ、エネルギーや原材料価格の高止まりが重荷になるなどして今後も減速傾向が続くと指摘されていて、政府がどのように景気を下支えするかが焦点になりそうです。

中国 国家統計局「中国経済は『3重の圧力』に注意必要」

中国経済の現状について、国家統計局の寧吉※テツ局長は記者会見で「去年は安定した回復を続けたが、外部環境は複雑さや不確実性を増しているほか、国内経済も需要の収縮と供給のダメージ、それに先行きへの期待の低下という『3重の圧力』を受けていることに注意する必要がある」と述べました。

また、寧局長は不動産業界について「『住宅は住むもので、投機するものではない』という立場を堅持し、短期的な経済の刺激策としては利用しない。地価や住宅価格を安定させ、潜在的なリスクを積極的に防ぐ」と述べ、市場の過熱を防ぐための政策を継続しつつ、不動産企業の経営問題の影響が広がらないように努める姿勢を強調しました。

※テツは「吉吉」(吉が2つ)。

不動産市況の悪化が波及

中国の景気減速の要因の1つとなっているのが不動産業界の開発や販売の減少です。

去年10月から3か月間の中国の不動産開発投資は、前の年の同じ時期と比べておよそ7%減少したほか、全国の不動産の販売面積もおよそ16%減少しました。

経営難に陥っている不動産大手「恒大グループ」は、先月(12月)、大手格付け会社から部分的なデフォルト=債務不履行に陥ったと認定され、その後、コスト削減のため本社も移転するなど、経営の行方は不透明さを増しています。

また、恒大グループ以外でも部分的なデフォルトに認定される会社が相次いでいます。

中国の不動産開発投資は、GDP全体の12%にあたるほか関連産業も含めるとGDP全体の4分の1ほどを占めるとも試算されていて、不動産市況の悪化は建築資材や住宅用品などの関連産業にも波及しています。

南部の広東省仏山にある家具業者が集積する地区では、3000以上の販売店が全国各地に住宅やオフィス向けの家具を出荷しています。

しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で需要が弱まっていたところに、不動産市況の悪化が加わって打撃を受けていて、販売店の1つは、コロナ前と比べて売り上げが3分の1ほどに落ち込んでいるといいます。

店を経営する男性は、「不動産業界の影響はとても大きく、マンションが売れていないのだから家具を買う人もいない。今は以前稼いでためたお金を取り崩して耐えていますが、それがなくなれば田舎に帰って農業をするしかないです」と話していました。

中国政府の「ゼロコロナ」対策も景気の重荷に

中国では、政府が「ゼロコロナ」を目指して厳しい感染対策を続けていることも景気の重荷になっています。

中国では、新型コロナウイルスの感染者が確認された地区は住民の外出が厳しく制限され、厳しい封鎖措置が2週間以上続くこともあり、消費の停滞にもつながっています。

先月、感染者が確認された南部広東省の東莞では、複数の地区で封鎖措置が取られ、周辺にあるレストランや理髪店などは、開店休業の状態が半月ほど続き、経営に大きな影響が出ました。

レストランの経営者は、「売り上げがまったくない状態が続き、家賃の支払いのためには貯金を取り崩すしかない」と話していました。

また、厳しい感染対策の影響は製造業にも及んでいます。

東莞にある靴の素材を生産するメーカーは、コロナ対策の強化によって通関手続きや港の作業が滞るなど、輸出向けの物流が混乱している影響で輸送費が上昇し、業績の悪化につながっているといいます。

感染拡大前と比べて年間の売り上げが2割から3割減少する中、物流コストが2倍近くに膨らんで経営を圧迫しているということです。

メーカーは、コストの削減につなげようと、電気料金が高い昼の時間帯の操業を取りやめていますが、経営状況が回復する見通しは立っていません。

靴の素材メーカーの何家明社長は、「消費の低迷に加え、新型コロナの感染拡大が繰り返し起こる状況で、経営環境は厳しい」と話していました。

厳しい感染対策 日系物流会社にも重い負担に

厳しい感染対策は物流会社にとっても重い負担になっています。

このうち、欧米や日本などとの間で貨物を取り扱っている上海の日系の物流会社では、海外から配送された貨物についてウイルスを除去するため防護服を着た作業員が1つ1つ念入りに消毒しています。

さらに、海外から送られてきた消毒されていない航空貨物に触れる従業員は、二日に1回はPCR検査を受けるなど、厳しく管理するよう当局から求められているということです。

会社によりますと、上海での航空貨物の輸入には、消毒作業などで1か月当たり日本円でおよそ3000万円の追加のコストがかかっているということです。

また、航空貨物やコンテナ船の運賃が高騰していることもあって、上海から日本への輸出の場合、コロナ禍の前と比べて輸送コストがおよそ2倍になっているとし、顧客に負担してもらわざるをえない状況だということです。

このほか、先月、コンテナの取扱量で世界3位の港がある浙江省・寧波で感染が発生し、港に出入りするトラックの運転手はPCR検査の陰性証明の提示が必要となるなど、一時、地域一体で管理が厳しくなり、貨物の運搬にも大きな影響が出たということです。

NX国際物流(中国)の廣田靖 経営戦略本部長は、「ゼロコロナで、安心安全を確保できるものの、あまりにも防疫対策が徹底している面がある。サプライチェーンは守り抜いていくが、コストと時間がかかり、顧客には理解していただきたい」と話していました。