新型コロナ テレワーク・時差出勤実施は限定的 NHK世論調査

新型コロナウイルスに対する不安や生活、仕事への影響などについてNHKは世論調査を行いました。繰り返す感染の拡大で対策が長期化するなか、「生活に影響がある」「心身の疲れを感じている」と回答した人がそれぞれ7割にのぼる一方、コロナ対策で呼びかけられるテレワークや時差出勤を「したことがある」という人は2割から3割程度にとどまり、働き方の変化は限定的な範囲にとどまっていることが浮き彫りになりました。

NHKは、去年11月3日から12月7日にかけて全国の18歳以上3600人を対象に、郵送法で世論調査を行い62.6%にあたる2253人から回答を得ました。

調査結果によりますと新型コロナウイルスの生活への影響について、「大いに影響がある」25%、「ある程度影響がある」49%を合わせて、74%が「影響がある」と回答しました。

収入の変化については『減った』が30%、「変わらない」が66%、『増えた』が2%で、1年前の調査といずれも同じ水準でした。

さらに感染の長期化で日常生活の制約が続くなか、心身の疲れについて「かなり感じている」「ある程度感じている」と回答する人が合わせて69%にのぼりました。

「疲れを感じている」と回答した人は、女性が74%、男性が63%と女性のほうが多く、雇用形態別でみると正規雇用の65%に比べ非正規雇用が73%と上回っています。

一方、働き方への影響についてコロナの感染が起きてからどのような取り組みをしたか尋ねたところオンライン会議を「したことがある」が31%、「したことはない」が66%。

在宅勤務を含むテレワークは、「したことがある」が22%、「したことはない」が76%。

時差通勤を「したことがある」が17%「したことはない」80%となりました。

感染拡大前に比べて働き方に変化があった人は、いずれの項目でも全体の2割から3割程度にとどまり、働き方の変化は限定的な範囲にとどまっていることが浮き彫りになりました。

日常生活・収入への影響

今回行ったNHKの世論調査の結果を詳しく見ていきます。

まずは、日常生活や収入への影響についてです。

▼新型コロナウイルスの感染拡大によって現在(調査時)、生活にどの程度影響があるか聞いたところ、
◇「大いに影響がある」が25%、
◇「ある程度影響がある」が49%、
◇「あまり影響はない」が24%、
◇「全く影響はない」が2%で、
『影響がある』という人が合わせて74%にのぼりました。

▼具体的にどのような影響があるか複数回答で尋ねたところ、
◇「親や友人など会いたい人に会えない」が61%、
◇「一日中、家で過ごすことが多い」が40%、
◇「気持ちが落ち込むことが多い」が17%、
◇「イライラすることが多い」と
◇「仕事の負担が増えている」がともに16%、
◇「収入が減って生活が苦しい」が15%でした。

▼家事をする時間に変化があったか、尋ねたところ、
◇「増えた」が24%、
◇「変わらない」が67%、
◇「減った」が1%、
◇「家事はしていない」が7%でした。

家事の時間が「増えた」という人を男女別にみると、
◇女性は29%で、
◇男性の19%を大きく上回りました。
▼収入の変化については、
◇「大幅に減った」(8%)と「やや減った」(22%)をあわせた『減った』が30%、
◇「変わらない」が66%、
◇「大幅に増えた」(0%)と「やや増えた」(2%)をあわせた『増えた』が2%で1年前の調査といずれも同じ傾向でした。

収入が『減った』という人は、雇用形態別にみると、
◇「非正規雇用」が35%で
◇「正規雇用」の29%よりも多く、
職業別にみると、
◇「自営業者」が64%、
◇「販売・サービス職」が42%、
◇「技能・作業職」が37%となっています。

長期化への懸念

▼新型コロナウイルスの感染が長期化し日常生活でさまざまな制約が続く中で、心身の疲れをどの程度感じているか尋ねたところ、
◇「かなり感じている」と答えた人が15%、
◇「ある程度感じている」が54%、
◇「あまり感じていない」が26%、
◇「ほとんど感じていない」が5%でした。

▽心身の疲れを「かなり感じている」「ある程度感じている」と答えた人を男女別にみると、
◇女性が74%、
◇男性が63%と女性が男性を大きく上回り、女性はすべての世代で7割を超えていました。

▽また、雇用形態別でみると、心身の疲れを感じていると回答した人は、
◇正規雇用の人の65%に比べて
◇非正規雇用の人は73%と上回り、
▽職業別で見ると、
◇販売・サービス職が76%、
◇自営業者が72%、
◇事務・技術職が70%、
◇技能・作業職が63%、
◇経営者・管理者が55%などとなりました。

▼医療機関が患者を受け入れられなくなる「医療崩壊」に対する不安をどの程度感じているか尋ねたところ、
◇「大いに感じている」と答えた人が39%、
◇「ある程度感じている」が46%、
◇「あまり感じていない」が12%、
◇「全く感じていない」が1%でした。

また、自分が新型コロナウイルスに感染した場合、▼適切な治療を受けられるかどうか不安を感じているか尋ねたところ、
◇「大いに感じている」と答えた人が41%、
◇「ある程度感じている」が45%、
◇「あまり感じていない」が12%、
◇「全く感じていない」が2%でした。

医療崩壊や感染したときに適切な医療が受けられるかどうかの不安について「大いに感じている」「ある程度感じている」と答える人の割合は、男女ともほとんどの年代でおよそ8割から9割に上りました。

また、▼後遺症についての不安をどの程度感じているかどうか尋ねたところ、
◇「大いに感じている」と答えた人が51%、
◇「ある程度感じている」が39%、
◇「あまり感じていない」が9%、
◇「全く感じていない」が1%でした。

変異ウイルス・ワクチン

▼感染力が強まるなどウイルスの性質が変化した「変異ウイルス」について、どのくらい不安を感じているか尋ねたところ、
◇「非常に不安だ」と答えた人が47%、
◇「ある程度不安だ」が44%、
◇「あまり不安ではない」が7%、
◇「全く不安ではない」が1%でした。

▼また、変異ウイルスについて知りたい情報を複数回答で尋ねたところ、
◇「ワクチンの効果」が77%、
◇「感染力の強さ」が76%、
◇「重症化率や死亡率」が59%、
◇「国内の感染状況」が58%、
◇「感染を予防する方法」が43%、
◇「子どもに感染しやすいかどうか」が23%、
◇「海外の感染状況」19%となりました。

▼新型コロナウイルスのワクチンについて、接種した人と「接種するつもりだ」と答えた2083人について、その理由を複数回答で尋ねたところ、
◇「家族など周囲の人にうつしたくないから」が82%、
◇「自分が感染して重症化するのを防ぎたいから」が81%、
◇「多くの人が接種すれば感染拡大が収まると思うから」が60%、
◇「接種して当然という雰囲気があったから」が28%、
◇「政府や感染症の専門家がすすめているから」が21%、
◇「どのようなワクチンであっても接種したほうがよいと思うから」が16%、
◇「職場などで接種するように言われたから」が14%、
◇「家族や友人など身近な人にすすめられたから」が10%となりました。

一方、「接種するつもりはない」と答えた114人に、その理由を複数回答で尋ねたところ、
◇「副反応が心配だから」が68%、
◇「ワクチンの効果がよくわからないから」が39%、
◇「持病やアレルギー体質などのために接種を受けられないから」が25%、
◇「どのようなワクチンも接種したくないから」が22%、
◇「マスクや手洗いなどの対策をしていれば感染しないと思うから」が10%、
◇「手続きや接種会場に行くのが面倒だから」が9%、
◇「忙しくて接種しに行く時間がないから」が9%、
◇「自分は感染しても重症化しないと思うから」が4%でした。

また、任意で行われているワクチン接種について海外の一部の国では特定の職種や学校の教員や生徒などに対し接種を義務づけています。

こうしたワクチン接種の義務化についてどう思うか尋ねたところ、
◇「職種などに関わらず、より多くの人に義務づけたほうがよい(持病などで接種できない人は除く)」と答えた人が40%、
◇「職種などによっては、義務づけてもよい(持病などで接種できない人は除く)」が32%、
◇「個人の選択に任せて、義務づけないほうがよい」が28%でした。

働き方への影響

働き方への影響です。

調査に回答した2253人のうち、「仕事をしている」と回答した1374人に、尋ねました。

新型コロナウイルスの感染が起きてからどのような取り組みをしたか聞いたところ、▼オンライン会議を
◇「したことがある」が31%、
◇「したことはない」が66%。

▼在宅勤務を含むテレワークについては、
◇「したことがある」が22%、
◇「したことはない」が76%。

▼業務・営業時間の短縮を、
◇「したことがある」が26%、
◇「したことはない」が72%。

▼時差通勤を、
◇「したことがある」が17%、
◇「したことはない」が80%でした。

コロナ対策で呼びかけられているテレワークや時差出勤など働き方に変化があった人は、いずれの項目でも全体の2割から3割程度にとどまり、働き方の変化は限定的な範囲にとどまっていることが浮き彫りになりました。

このうち、『テレワーク(在宅勤務を含む)』を「今(調査時)している」という人は、▼雇用形態別にみると、
◇「正規雇用」が19%で、
◇「非正規雇用」の3%よりも高く、
▼世帯年収別では、
◇「900万円以上」の人が25%だったのに対して、
◇「300万円未満」の人では3%で、収入が多い人のほうが高くなる傾向がみられました。

▼地方別にみると
◇東京都では30%だったのに対し、
◇それ以外の地域は9%でした。

また、◇東京都と大阪府をあわせると24%だったのに対し、それ以外は9%で大都市圏とそれ以外の地域との間で差があることもわかりました。

専門家「長期化で生活や心身への影響二極化も」

産業医で企業の感染対策に詳しい産業医科大学の森晃爾教授はコロナ対策が長期化するなか生活への影響や心身の疲れを感じている人が多かったことについて、「コロナ対策で生活や仕事の環境が大きく変化し、変化に対応できた人は新たな環境のなかで自分自身のリズムを作り始めている。その一方で、変化にうまく対応できなかった人はたとえば酒の量が増えるなどいまでも問題を抱えていてこれからさらに深刻になっていく可能性がある。コロナの長期化でそうした二極化のようなことが進んでいくのではないか」と指摘しました。

また、感染拡大前に比べて働き方に変化があった人が2割から3割程度にとどまったことについては、「私たちが行った調査でも、企業の規模によってテレワークの導入率に差があり、小規模の職場では、テレワークなどが円滑にできるような設備を整えられていないということも考えられる」と指摘しました。

そのうえで「感染力の強いオミクロン株の急激な拡大で、職場で1人、感染者が出るとその何倍、何十倍の濃厚接触者が出てしまい、業務が立ちゆかなくなるという事態が想定できる。これまで新たな働き方を導入しなくても感染の波を乗り越えられていた企業でもそうした事態が起こる可能性があり、『濃厚接触者を作らない』という観点から、企業でできることを早急に話しあってほしい。設備投資だけでなく、従業員の評価のシステムやコミュニケーションが減ることによる不安を解消する仕組みを整えていくことも重要だ」と話しています。