キム総書記立ち会い発射 専門家“軌道曲がるミサイル開発か”

北朝鮮が、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと極超音速ミサイルの発射実験を行ったと発表したことについて、専門家は、迎撃されないよう軌道が曲がるミサイルの開発を急いでいると指摘した上で、実用化に向けて今後も発射実験を続けるという見方を示しました。

12日付けの朝鮮労働党機関紙「労働新聞」はキム・ジョンウン(金正恩)総書記の立ち会いのもと、国防科学院が極超音速ミサイルの発射実験を11日行ったと伝え「弾頭が、1000キロ先の水域に設定された目標に命中した」として発射実験に成功したとしています。
ミサイルに詳しい東京大学先端科学技術研究センターの小泉悠専任講師は、北朝鮮が年明けから相次いで極超音速ミサイルだとするミサイルの発射実験を行っていることについて「短期間で発射実験を繰り返すことで、実用化を急いでいるとみられる」と指摘しました。

ミサイル防衛回避しながら飛ぶシステムか

また、日本政府が通常よりも低い最高高度およそ50キロメートルで飛しょうしたと分析していることについて「人為的に軌道を低く抑えるよう制御していて、迎撃をかわす狙いがある」とする見方を示しました。
さらに、キム総書記の横にある「極超音速ミサイル発射実験計画」と書かれたモニターに映っている地図に注目し「軌道が北側にねじ曲がっていることが分かるほか、高度を上げ下げしてミサイル防衛を回避しながら飛ぶシステムを目指していることが読み取れる」としています。
また、技術的な特性を確認するための最終的な発射実験だったと伝えていることについて「軍事大国が開発にしのぎを削っている最先端兵器を北朝鮮の科学技術力と工業力で簡単にできるとは到底思わない」と指摘した上で、「研究開発段階が終わったという話なのだと思う」として、発射実験を今後も続けるという見方を示しました。

韓国軍 “飛行距離700キロ以上 最高速度マッハ10前後”

北朝鮮は去年9月、国防科学院が新たに開発した極超音速ミサイル「火星8型」の発射実験を初めて行ったと発表しました。

このとき韓国の通信社、連合ニュースは、韓国軍による初期の分析結果として、飛行距離は200キロに満たず、高度は30キロ程度だったと伝え、韓国軍の関係者も、ミサイルの速度について、音速の5倍にあたるマッハ5以上の「極超音速」ではなく、マッハ3前後にとどまったとみられるとしていました。

その後、1月5日に行ったとする極超音速ミサイルの発射実験について朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は、「700キロ先に設定された目標に誤差なく命中した」と伝えました。韓国の通信社、連合ニュースは、今回は「極超音速」にあたるマッハ5以上だったと、韓国軍が推定しているなどとして「技術がますます進化している」とする見方を伝えていました。

そして、キム・ジョンウン総書記の立ち会いのもと、11日行ったとする極超音速ミサイルの発射実験について、「労働新聞」は、技術的な特性を確認するための最終的な発射実験だったと伝えました。

この中で「ミサイルから分離された弾頭が1000キロ先の水域に設定された目標に命中した」として、発射実験に成功したとしています。

これについて韓国軍は、飛行距離は700キロ以上、最高速度はマッハ10前後だったなどと分析し、1月5日のミサイルよりも技術的に「進展している」としています。

防衛省関係者「水平旋回させる技術 短期間で獲得は驚き」

11日、北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、防衛省関係者の1人はNHKの取材に対し、「去年は降下中のミサイルが上昇する『プルアップ』と呼ばれる動きも確認されたが、今回、水平に旋回する動きが加わり、動きがより変則的になった。対処しなければいけないミサイルが多様になっていることに脅威を感じる」と話しています。

また、別の関係者は、「水平に旋回させる技術をこれだけの短期間で獲得したのは驚きだ。北朝鮮は発射を繰り返すことで、技術を着実に進歩させているが高度化した技術がより射程の長いミサイルに応用される可能性もあり、動向を注視する必要がある」と話しています。

元海将の香田洋二さん「非常に悩ましい兵器」

11日、北朝鮮が発射した弾道ミサイルが最大速度およそマッハ10で飛びさらに、水平に旋回したことについて、海上自衛隊で司令官を務めた元海将の香田洋二さんは、「北朝鮮は、ミサイルが飛んでいる間に200キロ以上方向を変えたと主張しており、日本が標的になった場合を考えると、例えば、実際には東京を狙っていても、発射段階では富士山の西を狙っているように見えることになる。変則軌道のミサイルを迎撃するのはそもそも難しいうえ、これだけ方向が変わるとなるとどこを守るかの判断が困難になり、実用化されれば、非常に悩ましい兵器だ」と話しています。

そのうえで、今回の弾道ミサイルが通常よりも低い最高高度およそ50キロメートルだったことをふまえ、「北朝鮮は、多くの迎撃ミサイルの対象外となっている、高度が20キロから100キロの間を狙って、非常に速いスピードで軌道を変えながら飛ぶミサイルの開発を進めていると考えられる。日本としても、現在、保有している迎撃ミサイルでは性能上は対応が難しく、ミサイル防衛上の『空白地帯』になっている。『極超音速ミサイル』の実用化にはまだ数年はかかるとみられるが日本としてはこの『空白地帯』を埋めるための措置を講じる必要がある」と指摘しています。

日米高官 2日連続で協議

北朝鮮が2週続けて弾道ミサイルを発射したことを受け、外務省の船越アジア大洋州局長は、11日に続いて12日もアメリカ国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表と電話で協議しました。

協議はおよそ30分間行われ、両氏は、最新の北朝鮮情勢をめぐって意見を交わしました。

そして、拉致・核・ミサイルといった懸案の解決に向け、韓国も加えた日米韓3か国で引き続き緊密に連携していくことを重ねて確認しました。