東証再編 1部上場企業の8割超が最上位のプライムに

東京証券取引所は、ことし4月に今の東証1部などを再編して新しい市場を作ります。
これに伴って、1部上場の企業のうち8割を超える1841社が、引き続き、最上位のプライムに上場することになりました。

現在、東京証券取引所の1部には2185社、2部には474社、マザーズには424社、ジャスダックには694社が上場しています。

これが、ことし4月に3つに再編されますが、11日の発表では、最上位のプライムには1部から1841社が移行することになりました。

それに次ぐスタンダードには、1部と2部、それにジャスダックから合わせて1477社が移行し、3つめのグロースには、マザーズとジャスダックから合わせて459社が移行することになりました。

1部上場企業の大半がプライムに

このうちプライムは、海外からより多くの投資資金を呼び込むため、上場の基準を今の1部よりも厳しくしています。

去年6月末の時点では、1部上場のおよそ3割に当たる660社余りがプライムの基準を満たさず、各企業の対応が注目されていました。

基準を満たさない企業には、改善に向けた計画書を提出すればプライムに移行できる経過措置が用意されているため、296社がこの経過措置を活用することを選び、1部上場の企業の大半がプライムに上場する結果となりました。

一方、基準を満たしていてもプライムではなく、それに次ぐスタンダードでの上場をあえて選択した企業もあり、1部上場のうち344社がスタンダードに移ることになりました。

東証の山道裕己社長は「変化の時代に成長に向けて挑戦する企業と、企業を投資によって支える投資家という好循環を形成することこそが、区分見直しが目指すゴールだ。わが国の経済の持続的な成長、成長の果実の適切な分配を通じた豊かな社会の実現に結び付いていくと考えている」と述べました。

プライム基準満たさずも上場決めた会社は

1部上場のシステム開発会社ニーズウェルは、プライムの上場基準を満たしていませんが、経過措置を活用してプライムに上場することを決めました。
この会社は、市場に流通する株式の時価総額が去年6月末時点で27億円にとどまり、100億円以上というプライムの上場基準を満たしていません。

2017年にジャスダックに上場した後、2019年には1部に昇格し、より上位の市場区分に移ることで新卒採用での応募が増えたり新規顧客の開拓につながったり、さまざまなメリットがあったとしています。

このため、引き続き最上位の区分に上場することが欠かせないと考え、経過措置を活用してプライムに移ることにしました。

来年9月末までに基準を達成することを目指して計画書をまとめ、ロボットなどを活用した倉庫管理システムを開発して新たに物流ビジネスに参入するほか、AI=人工知能の技術を持った企業との提携や買収を進めていく方針です。
ニーズウェルの船津浩三社長は「プライム市場の上場基準は、われわれにとってハードルが高く、今までの事業のやり方では達成が難しい。東証の再編は、他社との関係を深めるなど従来考えてこなかった事業拡大の取り組みを実施するきっかけを作ってくれた」と話しています。

あえてスタンダードを選択した企業も

一方、1部上場で、プライムの基準を満たしていても、あえてスタンダードを選択した企業もあります。
調味料メーカー、エバラ食品工業は焼き肉や鍋料理に使う家庭用調味料の販売が主力で、販売促進や新たな商品開発に力を入れ、業績を伸ばしてきました。

去年6月末の時点でプライムの上場基準を満たしていますが、プライムを選択した場合、気候変動のリスクについて情報の開示が求められ、そのための新たな作業にコストがかかることがわかりました。

このため、会社では限られた経営資源を商品開発や人材育成に集中させたいとして、あえてスタンダードへの上場を選択しました。
エバラ食品工業の森村剛士社長は「われわれとして世に問うのは、株価だけではなく商品やサービス、知名度や信頼であり、それを重要視した。経営資源を集中して成長戦略を描き、確実に遂行するため、スタンダード市場を選択した」と話していました。

このほか、今の1部の新生銀行や大正製薬ホールディングス、ジャスダックの日本マクドナルドホールディングスなどがスタンダードに上場することになりました。

世界の主要市場の時価総額は

東証としては、最上位のプライム市場の上場基準を厳しくし、国際的に競争力を持つ企業に絞り込むことで、海外の投資資金を呼び込み、取り引きを活性化させたいねらいがあります。

世界の主要な取引所との競争は厳しくなっていて、国際取引所連合によりますと、上場企業の発行する株式数と株価を掛け合わせた取引所全体の時価総額は、去年11月末時点で東証が6兆4000億ドル余りとなってます。

これに対して、世界トップのニューヨーク証券取引所は28兆4000億ドル余りで大きく差が広がっています。

上海の取引所は7兆9000億ドル余りで東京を上回り、香港の取引所は5兆4000億ドル余りとなっていて、アジアの市場にも追い上げられる形になっています。

専門家「さらなる市場の改革が必要」

みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは、市場再編について「経営者が真摯(しんし)に株式市場に向き合って、投資家に対して前向きな対応を始める企業も出ていて、一定の効果はあった」と話しています。
一方で、1部上場の企業の大半がプライムを選択したことについて「日本的な緩やかな改革で、変化は遅すぎるし小さすぎる。これをきっかけに海外投資家が日本株を積極的に買うことはあまり期待できない」と指摘しています。

そのうえで「国際比較でも日本企業の時価総額は小さくなりすぎていて、海外投資家からあまり注目されていない。業界再編や企業買収といった選択と集中の経営を推進し、企業の数を絞っていく必要がある」と話し、上場企業の魅力向上や、さらなる市場の改革が必要だという認識を示しました。

また、基準を満たさず、経過措置を活用してプライムを選択した企業については「機関投資家も事業計画の実現性が本当に高ければ、投資するはずだ。今後は事業計画が達成できるのかが問われることになる」と指摘しました。