ウクライナ情勢でアメリカとロシアの高官が協議 隔たり大きく

軍事的な緊張が続くウクライナ情勢をめぐって、アメリカとロシアの政府高官による協議が行われました。NATO=北大西洋条約機構を拡大させないというロシア側の要求に対し、アメリカ側は譲歩する姿勢を見せず緊張緩和を強く促すなど、双方の隔たりの大きさが改めて浮き彫りとなりました。

ウクライナ国境周辺では、隣国のロシアがおよそ10万人とされる軍の部隊を展開し、軍事的な緊張が続いています。

ロシア側は、NATOが加盟国を増やして拡大を続けるなど、欧米が緊張した状況を作り出しているとして、NATOが拡大しないことを法的に保証するよう要求しています。

こうした中、アメリカのシャーマン国務副長官とロシアのリャプコフ外務次官による協議が、10日、スイスのジュネーブで、8時間近くにわたって行われました。

終了後、双方はそれぞれ記者会見を行い、リャプコフ次官は、ロシアはウクライナを侵攻する意図はないと繰り返し強調しました。

そして「アメリカ側は、ロシアの提案を真剣に深く考えている印象を受けた」と述べましたが「NATOの拡大を防ぐという議題については進展はない。これは大きな問題だ」として、アメリカ側に譲歩を促しました。
一方、シャーマン副長官は、NATOをめぐる問題は受け入れられないと強調したうえで「ロシア側には緊張を緩和することなく建設的で生産的な外交を行うことは非常に困難だと伝えた。ロシアが緊張緩和に努めるのか見極める」と述べ、まずはロシア軍を撤退させることが重要だと強調しました。

さらに「もしロシアがウクライナに侵攻すれば、巨大な代償を払うことになる」と述べ、対抗措置を用意していると改めて警告しました。
ウクライナ情勢をめぐっては、12日にベルギーのブリュッセルでNATOとロシアとの間で会合が開かれるなど、このあとも協議が続く予定で、双方の隔たりの大きさが改めて浮き彫りとなる中、緊張緩和に向けた糸口を見いだすことができるかどうかが焦点です。

米 元駐ウクライナ大使「いくつかの複雑な問題 解決には時間」

ウクライナ情勢をめぐる欧米とロシアの一連の協議について、アメリカの元駐ウクライナ大使で、ブルッキングス研究所の上席研究員を務めるスティーブン・パイファー氏は「バイデン政権の目的は、もしロシアがウクライナに武力行使をした場合、巨大な代償を払うことになると伝えるとともに、ロシアが真剣に交渉する用意があるのか見極めることだ」と述べました。

そのうえで「いくつかの複雑な問題があり、解決には時間がかかる。望むことは、一連の協議のあとにも明確な議論が行われることだ」と述べ、難しい交渉になるとしたうえで、対話の継続で一致できれば、成果だと評価できるという認識を示しました。

また、ロシアが、NATO=北大西洋条約機構がこれ以上拡大しないよう求めていることについて、パイファー氏は「本当に大きな疑問だ。目的は、要求を拒否させ、ウクライナへの武力行使の口実にすることかもしれない」として警戒感を示しました。

一方、ロシアがウクライナに侵攻した場合、欧米が検討している対抗措置について、パイファー氏は、ウクライナや東ヨーロッパへの軍事支援の強化や銀行間の国際的な決済の通信網を運営する、SWIFT=「国際銀行間通信協会」からロシアの銀行を遮断する経済制裁などが考えられると指摘しました。

ウクライナ情勢をめぐる経緯

ウクライナでは、2014年に、ロシアがクリミア半島を一方的に併合し、その後も、東部地域で親ロシア派の武装勢力とウクライナ政府軍との間で戦闘が続いています。

このウクライナ国境周辺では、去年11月ごろから、ロシア軍が9万人以上とされる大規模な部隊を展開し、ウクライナのほか、アメリカなどNATO=北大西洋条約機構の加盟国は警戒を強めてきました。

先月には、アメリカの有力紙、ワシントン・ポストが、アメリカ政府の分析として、ロシア軍が今後、部隊を最大17万5000人規模にまで増強し、ことし初めにもウクライナに攻勢をかける可能性があると伝えました。

アメリカのバイデン大統領は先月7日、ロシアのプーチン大統領とオンラインで首脳会談を行い、ロシアが軍事的な攻勢に出れば経済制裁で応じると警告し、緊張の緩和を求めました。

これに対しプーチン大統領は、ロシアの国境付近で軍事力を増強するなど緊張を高めているのは、むしろアメリカなどNATO側だと強調しました。

さらにロシア側は、アメリカとNATOに対して、NATOのさらなる拡大やウクライナなどでのいかなる軍事活動も行わないと法的に保証するよう求めて、新たな協定などの草案まで公開することで、アメリカ側に交渉に応じるよう迫りました。

プーチン大統領は先月23日に行った年末恒例の記者会見で「ボールは相手側にある」と述べ、アメリカから譲歩を引き出したい考えを示したのに続いて、先月30日にはバイデン大統領と電話会談を行い、緊張緩和に向けた話し合いを続けていくことを確認しました。

今月10日にはスイスのジュネーブでアメリカとロシアの双方の高官による協議が行われたのに続き、12日にはベルギーのブリュッセルでNATOとロシアとの間でウクライナ情勢をめぐって会合が開催されます。

さらに13日にはオーストリアのウィーンで、欧米とともにロシアも加盟し、ウクライナ東部の停戦の監視にあたっている、OSCE=ヨーロッパ安全保障協力機構の会合も開かれる予定です。

こうした話し合いを通じて双方が妥協点を見いだし、緊張の緩和につなげられるかが、カギとなっています。