オミクロン株 “自覚ない感染者”からの拡大に医師が危機感

各地で広がりをみせるオミクロン株。大学病院の医師は、無症状や軽い症状のいわば“自覚のない感染者”から、知らず知らずのうちに感染が広がるおそれがあると、危機感を募らせています。

川越市にある埼玉医科大学総合医療センター、感染症科の岡秀昭教授は7日、新型コロナの診療方法などを指導している地域のクリニックを訪れ、オミクロン株の特徴について説明しました。

この中で、海外の研究でオミクロン株がデルタ株と比べて重症化の割合が低くなっていると報告されている一方で、感染力は従来の変異ウイルスと比べて非常に増していて、無症状や軽い症状のいわば“自覚のない感染者”から、知らず知らずのうちに感染が広がるおそれがあると指摘しました。

このクリニックは訪問診療に特化していて、ホテルや自宅療養のコロナ患者への対応を予定しているということです。

岡教授はふだんから患者に接する際は互いに感染しているかもしれないという仮定のもと、手袋やマスクの着用、手指消毒などの対策を徹底したうえで、医療スタッフは少しでもかぜのような症状があれば検査を受けてほしいと話していました。

そうすれば、いずれかが感染していても、それ以上感染を広げずに済むと伝えていました。

クリニックのスタッフは「症状がなくても実は感染しているかもしれない、感染を広げてしまうということがこわいと思いました」と話していました。

岡教授は「感染していてウイルスを放出しているのに、あまり症状が出ず、自覚がなければ働いてしまうかもしれない。そのうえ、空気感染に近い感染力を持っている。重症化率が下がっていると言っても、デルタ株と比べて下がっているだけで、インフルエンザと同等、またはそれ以上であり楽観できない。第5波から医療体制が上積みされているとはいえ、患者の数が倍になれば医療のひっ迫は起こりえるので、最悪の事態を想定して準備を急がないといけない」と話していました。

高齢者施設では 「面会制限」再び検討も

埼玉県東松山市の高齢者施設には、70代から100歳代まで40人余りが入所していて、家族との面会を入り口の窓越しに行うなど制限してきました。

こうした対策の結果、これまでに施設内で感染者は出ておらず、先月からは感染状況が落ち着いたことを受けて、家族との対面での面会を始めていました。

一方、家族から「年末年始を自宅で一緒に過ごしたい」という要望が相次ぎましたが、今回の年末年始では自宅への外出や外泊は見送り、年明けの状況を見て判断することにしていました。

こうした中、再び感染が急拡大しているうえ、埼玉医科大学総合医療センターの岡教授から無症状や軽い症状のいわば“自覚のない感染者”から知らず知らずのうちに感染が広がるおそれがあると知らされたことで、再び面会を制限するなど、対策を検討せざるをえないとしています。

施設長の山田浩幸さんは「年末まで少ない感染者数で推移していたのに、年が明けて一気に緊張感が高まっています。入所者にとっては一日一日が大切で、家族との面会の機会をたくさん設けたいのですが、クラスターが起きれば元も子もないので、慎重な対応を取らざるをえない」と話していました。