“オミクロン株 爆発的な感染増加” いま必要な対策とは…

「全国的に感染拡大の第6波に入った」
専門家がこう指摘した7日、まん延防止等重点措置の適用が決まった沖縄県で1414人、広島県で429人の感染確認が発表され、いずれも過去最多となったほか、山口県でも180人と過去2番目に多くなりました。さらに東京都でも1週間前の金曜日のおよそ12倍にまで感染者が急増しています。

あす・8日からの3連休、さらなる感染拡大を避けるために専門家は対策の徹底を改めて訴えています。今、必要な対策とはどんなことでしょうか…。

■今月に入って感染急拡大

新型コロナウイルスの新規感染者数を1週間平均で比較すると、全国の感染者数は今月に入って増加のペースが大幅に上がっていて、特にまん延防止等重点措置の適用が決まった3県で急激に拡大しています。
<全国>
▽先月9日までの1週間では前の週に比べて1.10倍
▽先月16日は1.12倍
▽先月23日は1.45倍
▽先月30日は1.60倍と徐々に増加していたのが
▽6日まででは4.86倍と
増加のペースが大幅に上がっています。

<沖縄>
▽先月23日までの1週間は前の週の1.80倍
▽先月30日は3.59倍
▽6日まででは10.86倍と
今月に入って急激に拡大しています。

<山口>
▽先月23日までの1週間は前の週の3.00倍
▽先月30日は5.50倍
▽6日まででは14.30倍と
急激に拡大しています。

<広島>
▽先月21日までは感染者が確認されない状態が続いていましたが徐々に増え
▽先月30日は前の週の3.60倍
▽6日まででは36.67倍と
急激に拡大しています。

■「倍加時間」2日未満か “東京 大阪府も1週間で急増の可能性”

オミクロン株の感染が拡大する中、沖縄県や東京都、大阪府では累積の感染者数が2倍になるまでにかかる期間が2日未満と推定されています。
6日に開かれた厚生労働省の専門家会合で、国立感染症研究所のグループが新型コロナウイルスの感染が広がる速さを示す指標の1つとして感染者数の累計が2倍になるまでにかかる期間「倍加時間」の推定結果を示しました。

それによりますと、今月5日時点のデータをもとにした推定では直近1週間の「倍加時間」は沖縄県で1.3日、大阪府で1.7日、東京都で1.9日になったということです。沖縄県では東京都や大阪府よりも早い段階でオミクロン株への置き換わりが進んだ影響で、倍加時間が短くなっているとみられるということです。

倍加時間は感染状況によって変化しますが、イギリスなどからの報告でもデルタ株中心の流行に比べてオミクロン株では短くなっているということです。

国立感染症研究所の鈴木基感染症疫学センター長は「沖縄県の感染者数の急増が注目されているが東京都、大阪府でもこれから1週間で急増する可能性が高い。オミクロン株はデルタ株よりも重症化リスクが低いとされるが、感染者が増えれば医療のひっ迫や社会活動への影響が大きくなる。速やかに対策を講じる必要がある」としています。

■「感染拡大の第6波に入った」

東邦大学 舘田一博教授(政府分科会のメンバー)
・現在の感染状況について
「一日、二日で一日の感染者数が倍になり、増幅していく感染が広島、山口、沖縄で見られている。それが全国のレベルでも見られていて全国的に感染拡大の第6波に入ったということだと思う。これがオミクロン株による感染の広がりの速さで、欧米で見られているような爆発的な感染の増加が日本でも見られている状況だ」

・今後の見通しについて
「これまでで最も厳しい状況となったのが感染拡大の第5波で東京では一日に5000人を超える感染者数を経験した。感染力の強いオミクロン株が急激に広がっていることを考えると、東京で5000人の倍となる感染者が出てもおかしくない。そういった危機意識を共有することで感染のピークを下げる対策、行動を取っていくことが大事になる。今までの経験をしっかり生かし予防や治療の手段を効果的に使うことでパニックにならないようにしながら、この波を乗り越えていかなければいけない」

■“社会機能の維持が難しくなる”

「オミクロン株の感染が急拡大すると重症化する割合が低くても重症者数が一定程度増え、医療従事者を含めた社会や暮らしを支える『エッセンシャルワーカー』で出勤できない人々が増え、社会機能の維持が難しくなる…」

政府分科会の尾身茂会長や厚生労働省の専門家会合の脇田隆字座長など専門家は7日、こうした見通しを示し、必要な対策を早急に実施するよう訴えました。

1. 急速な感染拡大が続くと…

急速な感染拡大が続くと
▽若者では重症化率が低くても早い段階で高齢者に感染が広がって重症の患者が生じる可能性があり
▽軽症者が急増して地域の医療や濃厚接触者を調査する保健所への負荷が増加し
▽医療従事者を含めた社会や暮らしを支える「エッセンシャルワーカー」で出勤できない人が急激に増え
社会機能を維持することが難しくなると指摘しています。

2. 成人式・今週末からの連休に向けて

成人式や今週末からの連休でさらなる感染拡大がありえるとして、次のようなことを求めています。
▽成人式などのイベントにはできるだけ検査を受けて陰性を確認してから参加する
▽感染が拡大している地域では飲み会や食事会について慎重に判断し、もし行う場合は認証を受けた店で短時間、少人数で大声を避ける
▽少しでも具合が悪い場合は外出を控えて速やかに検査を受け医療機関を受診する
▽マスクの着用や換気、密を避けるなどの対策を続ける

3. 高齢者を守るために

感染から高齢者を守るためには、以下のことを求めました。
▽ワクチンの追加接種を前倒しすること
▽医療機関や高齢者施設の従業員について追加接種を行い定期的な検査を再開する

4. 医療体制ひっ迫を防ぐために

医療体制のひっ迫を防ぐために、次のように指摘しています。
▽診療所や医師会などが自宅や宿泊施設で療養する患者への対応に協力する
▽新たに承認された新型コロナの飲み薬を処方する際に必要な医療機関の登録を加速させるなど、軽症者などへの対応を弾力的に行う

5. 企業などに対して

感染が広がった場合に備え
▽「事業継続計画」の準備
▽感染拡大で欠勤者が増える事態を想定し業務の優先順位をつける
▽テレワークの推進が必要

■「追加接種 経口薬の流通など進むまで対策の徹底を」

基本的対処方針分科会の尾身茂会長は「オミクロン株の重症化率は高くない一方で感染拡大のスピードは速く、病院だけで患者のケアができず自宅療養のニーズが高まることが想定される。このまま行けば病院だけにかぎらず地域のクリニックなど地域全体の医療体制がひっ迫するおそれがある状況だ。また感染者数が膨れ上がれば医療機関を含めた多くの業種で欠勤者の数がかなり増えるという問題が生じる。沖縄では実際に医療機関でこうした問題が起きていて社会機能の維持に支障が出る可能性がある。さらに感染が高齢者に行き着いた時、一定の人が重症化するおそれは残っており、高齢者に対するワクチンの追加接種を早急に進めることを最優先課題として取り組む必要がある」と述べました。

また今後の見通しなどについて「きょうの分科会では緊急事態宣言についても状況に応じて出すことを考えるべきだという意見もあった」としたうえで「感染拡大が止まらないアメリカやイギリスのような状況が当たり前のように日本で起こるかというとそうではない。とるべき道はしっかりとした対策や重点措置などで乗り切るというところにあるのではないか」と述べました。

そして「これまでの国内での調査ではオミクロン株の感染の広がりは今までと同じように密や換気が悪い、近くで話してしまったなどの状況で起きていると報告されている。個人レベルでは今までどおりマスクの着用、距離を取ること、換気などの対策が必要だということだ。高齢者へのワクチンの追加接種や経口薬の流通などが進む来月中旬ごろには状況が変わって明るい兆しが見えてくる可能性がある。それまでの間、対策の徹底を行うことが必要だ」と指摘しました。

■沖縄 山口 広島 「まん延防止措置」適用

政府は沖縄、山口、広島の3県に9日から今月末まで、まん延防止等重点措置を適用することを決めました。3県では感染の急激な拡大によってさまざまな影響が出ています。

<沖縄>初の1000人超 “社会の機能維持 難しい”事態も…

沖縄県では7日、新たに1414人の感染確認が発表され、初めて1000人の大台を突破し過去最多を2日連続で更新しました。

専門家は沖縄県での感染急増の背景として
▽オミクロン株の感染力が強いこと
▽ワクチンの感染予防効果が明確に減少していること
▽クリスマスから年末にかけてふだん会わない人と接触する機会が増加したことを
指摘し、今後さらに増加する可能性があるともしています。

そして「社会機能を維持することが難しくなる」という専門家の指摘は、沖縄の医療現場で実際に起きつつあります。

1. 働くことができない医療従事者300人超

沖縄県内では新型コロナに感染したり濃厚接触者になったりするなどして働くことができない医療従事者が300人を超え、一般の救急診療がひっ迫しているということです。
沖縄県の新型コロナ対策本部で医療コーディネーターを務めている沖縄赤十字病院の佐々木秀章医師は、7日午後3時現在、県内で新型コロナの感染者を受け入れている21の病院で医療従事者合わせて313人が感染したり、濃厚接触者になったりするなどして働くことができていないことを明らかにしました。

佐々木医師によりますと、このうち新型コロナへの感染が確認されたのは88人で▽医師が5人▽看護師が54人▽その他の医療従事者が29人だということです。

佐々木医師は、多くは病院ではなく家庭内などで感染したり家族が感染したりするケースだとしていて「デルタ株の時とは明らかに違い驚くスピードで増えている。こんなに早く医療従事者の感染者が増えるとはまったく予想外だった」と述べました。

そのうえで「新型コロナは先んじて病床を確保してきたので何とかなっているが、一般の救急の受け入れがひっ迫している状況だ。救急車も通常より遠い病院で受け入れてもらっている。救急の受け入れ制限が続き制限をかける病院が増えると一般の救急の受け入れがより困難になる」と強い懸念を示しています。

また感染状況はピークに達しておらず医療従事者の感染がさらに進むことを想定し、職員の3割から4割が働けない場合に病院をどう運営するのか考えておくべきだと指摘しています。

そして「医療従事者だけでなくエッセンシャルワーカーと呼ばれている方々が働けなくなったら社会をどうしていくのかというところまで沖縄では考えなければいけない状況だ」と訴えています。

2. 病院で一部の診療制限

また沖縄県内の病院では急激な感染拡大に伴う病床のひっ迫などに対応するため救急診療や一般診療の受け入れを制限する動きが相次いでいます。

▽うるま市「中部病院」
6日から産科と小児科以外で救急診療を制限しています

▽南風原町「南部医療センター・こども医療センター」
一般診療や入院を7日から当面、制限するとしています

▽名護市「北部病院」と宮古島市の「宮古病院」
今月11日以降、緊急性の低い手術や検査を延期することを決めています

▽那覇市「沖縄赤十字病院」(※県立病院以外)
6日から今月11日まで救急診療をすべて停止しているということです

沖縄県によりますと、急激な感染拡大に伴う新型コロナ病床の確保や医療従事者に感染者や濃厚接触者が出ていて人手が足りなくなっていることから、患者の受け入れを制限しているところが増えてきているということです。

厚生労働省は災害派遣医療チーム「DMAT」の医師の派遣を決めるなど支援の動きを始めました。

<沖縄>成人式 13市町村で中止・延期

沖縄県内では8日と9日、24の市町村が式典の実施を予定していましたが、新型コロナウイルスの急激な感染拡大を受けてこのうち13の市町村が中止や延期を決めました。

<中止決定>
▽渡嘉敷村▽渡名喜村▽粟国村▽久米島町▽八重瀬町▽座間味村▽与那原町
このうち八重瀬町などは式典で使う予定だった会場をオープンにして新成人の記念撮影に使ってもらうということです。

<延期>
▽浦添市▽糸満市▽うるま市▽宜野湾市▽北谷町
浦添市は「山の日」で旧盆の中日になる8月11日に実施する予定です。

那覇市は中学校の17の校区ごとに開催の判断を委ねていますが、午後6時までに14の校区が延期を、残る3つの校区が中止か延期を決めています。

<予定どおり実施>
▽名護市▽豊見城市▽南城市▽南風原町▽嘉手納町▽北中城村▽中城村▽西原町▽本部町▽沖縄市▽読谷村
名護市は式典の様子を屋外に用意された大画面で車の中から見てもらうドライブインシアター方式と、インターネットで配信する方法を併用するほか、北中城村は青年会のメンバー30人の協力を得て出席者全員に抗原検査を行うことにしています。
新成人向けに着物の販売や着付けを行っている着物店にはキャンセルや延期の連絡が相次いでいます。

このうち沖縄本島中部にある西原町の着物店では新成人合わせて12人から着付けの予約を受け付けていましたが、7日昼すぎまでに半数からキャンセルや延期の連絡を受けたということです。

「ら・たんす西原店」の内間太一店長は「中には成人式が中止になっても写真だけでも残したいという人や、振り袖姿をおばあちゃんたちに見せたいという人もいます。着物を着られる機会は少ないので式が中止になったのはかわいそうですが、着物を着たいという新成人をしっかりサポートしたい」と話していました。

<山口>岩国 “米軍と感染対策協力を確認”

山口県では180人の感染確認が発表され、6日の181人に続いて過去2番目に多くなりました。岩国市は対策本部会議を開き、福田市長が大規模な感染が起きているアメリカ軍岩国基地のルイス司令官と会談し感染対策での協力を確認したことを明らかにしました。
福田市長はアメリカ軍岩国基地を訪れてルイス司令官と会談したことを明らかにし
▽基地の感染者はほとんどが軽症であることや
▽基地の外に住む関係者が感染した場合は軍の医療担当者が健康観察を行っていることなどの説明を受けたとしたうえで
「まん延防止等重点措置について伝え、マスク着用の徹底を求め今後も感染対策で協力していくことを確認した」と述べました。

会議のあと福田市長は、基地関係者から感染が広がったのではないかという記者団からの質問に対して直接は答えず「アメリカ軍も同じ方向を見て収束に結び付けていくことが大切だ。重点措置の適用で市民の皆さんに不安や不便をかけることになるがご理解とご協力をお願いしたい」と話しました。

<広島>観光に影響も…

広島県では429人の感染確認が発表され、一日に発表された新規の感染者数としては去年8月21日の381人を超えてこれまでで最も多くなりました。多くの観光客が訪れる宮島の宿泊施設には予約のキャンセルが相次いでいます。
宮島にある「ホテル菊乃家」では緊急事態宣言が解除された去年10月以降、県内や近隣の県からの家族連れを中心に宿泊客が増えて年末年始は満室が続き、予約は回復傾向にありました。しかし6日からキャンセルの連絡が相次ぎ7日の昼時点で今月末までの宿泊予約のおよそ4分の1がキャンセルになったということです。

「ホテル菊乃家」の松本浩志専務は「ようやく客が戻ってきたのにまたかという感じで非常に残念です。収束したあとに政府にはできるだけ長い期間観光キャンペーンを打ち出してもらい業界を救ってもらいたいです」と話していました。

宮島観光協会によりますと、6日以降、土産物店や飲食店がたち並ぶ通りを訪れる観光客は少なくなっているということで、中村靖富満会長は「島ににぎわいが戻り収束に向かえばと思っていましたが、またしばらく我慢が続きそうです。事業者どうし協力しながら何とか乗り越えたい」と話していました。