スキージャンプ 小林陵侑 「ジャンプ週間」2回目の総合優勝

スキージャンプ男子の小林陵侑選手が6日、年末年始の4試合で争う「ジャンプ週間」で3シーズンぶり2回目の総合優勝を果たしました。日本選手が「ジャンプ週間」で2回の総合優勝を果たしたのは、小林選手が初めてです。

小林選手は年末年始のワールドカップ4試合で争う伝統の「ジャンプ週間」を3連勝で迎えた6日、オーストリアでヒルサイズ142メートルのラージヒルで行われた最終戦を兼ねた個人の第13戦に、2回目の全勝での総合優勝をかけて臨みました。

小林選手は1回目にジャンプに不利な追い風の中で飛距離を伸ばすことができず、133メートル50でトップと6.8ポイント差の5位につけました。

逆転を狙った2回目も133メートル50で合計ポイント277.8となり、残り4人の時点でトップに立ちました。

しかし、このあとの選手たちがさらに飛距離を伸ばしたため、小林選手は5位にとどまりました。

それでも小林選手は4戦で3勝という強さを見せて、3シーズンぶりにジャンプ週間で総合優勝を果たしました。

小林選手は2018年から19年のシーズンのジャンプ週間で総合優勝をしていて、2回目の総合優勝を成し遂げたのは日本選手で初めてです。

ワールドカップ第13戦でのこのほかの日本勢は、▽佐藤幸椰選手が今シーズン最高の4位、▽小林選手の兄の潤志郎選手が14位、▽佐藤慧一選手は上位30人による2回目に進むことができませんでした。

ダイナミックなジャンプが持ち味

小林陵侑選手は、岩手県八幡平市出身の25歳。クロスカントリー選手だった父親の影響で、6歳の時からジャンプ競技を始めました。

岩手県にある盛岡中央高校では、ジャンプとクロスカントリーで競うノルディック複合にも取り組みましたが、高校卒業後は、葛西紀明選手が監督を務める札幌市の土屋ホームに所属し、ジャンプ競技に専念しました。

その後は徐々に力をつけてピョンチャンオリンピックのノーマルヒルで7位に入るなど、飛躍のきっかけをつかみました。

そして、2018年から2019年にかけてのシーズンのワールドカップ第2戦で初優勝を果たし、年末年始に行われる伝統の「ジャンプ週間」では、4戦全勝で総合優勝という史上3人目の快挙を達成しました。

このシーズンではワールドカップで13勝し、圧倒的な強さでスキージャンプ男子で日本選手初のワールドカップ総合優勝も成し遂げました。

2020年から2021年の昨シーズンは開幕戦で27位、その後も1回目のジャンプで上位30人以内に入れない日や、ふた桁順位となる日もあるなど苦戦しましたが、終盤には4戦連続で表彰台に立つなど復調して3勝を挙げ、ワールドカップの勝利数で師匠の葛西選手を抜いて日本の男子では単独最多となる通算19勝としました。

北京オリンピックを控えた今シーズンは、新型コロナウイルスの検査で陽性と判定されたほか、スーツの規定違反で失格になるなど欠場した試合が多い中、ジャンプ週間の最終戦までにワールドカップで6勝を挙げていて、日本男子のワールドカップ最多勝利数を通算25勝に更新して好調を維持していました。

持ち味は高い運動能力を生かしたダイナミックなジャンプで、プレッシャーのかかる2回目にヒルサイズを超えるような大きなジャンプを出す勝負強さも持ち合わせています。

兄の潤志郎選手や姉の諭果選手、弟の龍尚選手もジャンプの選手で、スキー界では「小林4きょうだい」としても知られています。

また「ジャンプをもっとメジャーな競技にしたい」と、動画投稿サイト、YouTubeに私生活や競技についてなど積極的に発信を続けています。

“総合優勝は五輪の金メダルに匹敵”

「ジャンプ週間」は、年末年始にドイツとオーストリアで行われるワールドカップ4試合で争う大会です。

ワールドカップが始まる20年以上前の1952年に始まった伝統のある大会で、「ジャンプ週間」の総合優勝は、オリンピックの金メダルや世界選手権の優勝にも匹敵すると言われています。

特にウインタースポーツが盛んなヨーロッパでの人気は非常に高く、新型コロナウイルスが流行する前は1試合の観客数は2万5000人にのぼっていましたが、今シーズンは無観客で行われています。

選手が獲得する賞金も通常のワールドカップより高く、「ジャンプ週間」の総合優勝には10万スイスフラン(日本円でおよそ1260万円)が贈られ、予選トップの選手にも賞金が支払われます。

「ジャンプ週間」で日本勢が総合優勝したのは、1997年から98年シーズンの船木和喜選手と、2018年から19年シーズンの小林選手の2人だけです。

ジャンプ週間で2回の総合優勝を果たしたのは、日本勢では小林選手が初めてです。

“力まず飛ぶ” 自然体貫き偉業達成

小林陵侑選手は自然が相手のジャンプ競技でどのような条件の中でも「力まず飛んで飛距離を出す感覚」をつかみ、2回目の「ジャンプ週間」総合優勝の快挙を成し遂げました。

昨シーズン、小林選手は新型コロナの影響で予定どおりに雪上でのトレーニングができず、スタートから踏み切りまでの「助走姿勢の感覚」をつかみきれなかったことから、序盤はワールドカップでふた桁の順位に低迷しました。

ジャンプをミリ単位で修正しながらもたどりついたのは、「シンプルに飛ぶ」ことでした。

そのうえで「力強く踏み切ろうとか、そういうイメージだったが、そんなことをしなくても、むださえなくせば飛んでいく」と意識をし始めました。

後半戦からは力まずシンプルに飛ぶことを徹底した結果、助走路から空中に飛び出した時、スムーズに腰を前に出して体をまっすぐにした美しい空中姿勢を取ることができるようになりました。

今シーズンの小林選手は「オフの夏から続けてきた、いいジャンプのイメージがかみ合っている。ダメでも次の試合までには修正ができている」と状態のよさを維持できていることを明かしていました。

去年11月に新型コロナウイルスの検査で陽性と判定されたほか、スーツの規定違反で失格になったため、ワールドカップを3試合も欠場しましたが、“力まず飛んで”不利な追い風の中などでも力を発揮し、ここまで出場した9試合のうち6試合で優勝しています。

ワールドカップでの目標については「先のことは考えずにまず1勝」と必ず答えて、あくまで目の前の大会だけを見据える姿勢もプラスに働いています。

その日その日で状況が変化するジャンプ競技に対して自然体を貫いて臨む小林選手の姿勢が、2回目の偉業達成につながったと言えそうです。