円安どこまで進む?裏には「ドル不足」【経済記者コラム】

ことし最初の取り引きが行われた4日の東京外国為替市場。急速に円安が進み、およそ5年ぶりの円安水準となりました。日本とアメリカの金利差が広がるとの見方から、このところ円安傾向が続いていますが、実はほかにも円安になる要因が指摘されています。それは『ドル不足』。ドルが足りないとは、一体どういうことなのでしょうか?(経済部記者 仲沢啓)

ことし最初の取り引きが行われた4日。

日経平均株価は4年ぶりに値上がりで始まる好調な滑り出しだったこともあり、株価の動きに気をとられていましたが、午前の取り引きが終わってしばらくした頃、外国為替市場で1ドル=115円台後半まで急速に円安が進みました。
昼休みの時間帯に円相場が大きく動くことは、個人的にはあまり経験していなかったため早速、市場関係者に取材してみました。

すると、聞こえてきたのが『ドル不足』です。
ドル不足とは、ドルの需要と供給を比較して、需要のほうが過多になっている状態のことです。

財務省が年に2回発表している、貿易取引の通貨別の比率を見てみると、去年の上半期の貿易に占めるドル決済の割合は、日本からの輸出では47%、日本への輸入では66.6%。つまり、輸出入が同程度だとした場合、輸出企業がドルを売って円を買う動きと比べ、モノを輸入する企業が円を売ってドルを買う動きのほうがざっと1.4倍も大きいという状況を示しています。

しかも、去年8月以降、原油高などを背景に日本は4か月連続の貿易赤字で、輸入が輸出を上回る状態が続いています。ことしもこの傾向は続くという見方もあり、さらにドルの需要が高まっていくことが想定されます。
エネルギーや食糧、金属などの多くを輸入に頼っていますが、これらの多くはドル決済です。航空会社や食品メーカーなどは、ビジネスを続けるためにいくら円安が進もうとも、燃料や小麦粉を仕入れるためにドルを調達しなければなりません。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストの試算によると、ことし1年間の「ドル不足」=需要過多は、およそ12兆円にものぼると見られ、計算上は1年間で6円程度の円安につながる規模になるということです。

また、植野氏は1月4日の昼休み時間帯に円相場が大きく円安に振れた要因も、このドル不足が背景にあると指摘します。

この時、日米の長期金利が動いたわけでも、市場に影響を及ぼすような要人の発言があったわけでもありません。植野氏はこの時間帯に、国内の輸入企業が支払いに必要なドルを買う動きに出たのではないかと見ています。

ドル不足による円安の動きは、ふだんは目立ちにくいですが、市場の底流にある要素だけに、年間単位でみると円相場に大きな影響を及ぼすことになります。

世界的な資源高・食料高の中で円安が進むことは、輸入物価の上昇に拍車をかけます。

すでに身近な食品などの値上げも相次ぎ、デメリットの方が大きくなる「悪い円安」を懸念する声も根強いだけに、ことしは円相場の動向から目が離せない1年となりそうです。

注目予定

11日、ことし4月の東証の市場再編を前に、企業がプライム・スタンダード・グロースのどの市場を選んだか発表されます。現在の1部2100社余りのうち、9割程度が最上位のプライムとなる見通しです。

このほか、軍事的な緊張が続くウクライナ情勢をめぐって、アメリカとロシアの2国間協議に続き、NATO=北大西洋条約機構とロシアの協議も行われる予定です。地政学リスクの緩和につながるか、注目です。