新型コロナ専門家会合 “今後さらに急拡大するおそれ強い”

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ、現在の感染状況について、大阪府や沖縄県などで新たな変異ウイルス、オミクロン株への置き換わりが進みつつあるなど、今後さらに急拡大するおそれが強いとして、検査や医療体制の強化、基本的な感染対策の徹底の必要性を強調しました。

専門家会合は現在の感染状況について「急速に増加している」としたうえで、オミクロン株の感染がおよそ8割の都道府県で確認され、特に大阪府や沖縄県などではすでにデルタ株から置き換わりが進みつつあるとしています。

そして、年末年始の帰省などで人の移動が増えたほか、今週末の3連休や今後のさらなる気温の低下で屋内の活動が増えることから「さらに感染が急拡大するおそれが強い」と警戒を呼びかけました。

また、オミクロン株ではデルタ株と比べて重症化しにくい可能性が示唆されているものの、急速に感染が拡大すれば自宅などでの療養者や入院患者も増え、軽症や中等症患者の医療提供体制が急速にひっ迫する可能性があるほか、重症化リスクの高い人たちに感染が広がれば重症者や亡くなる人の割合が増えるおそれがあると指摘しています。

その上で専門家会合は、オミクロン株による急速な感染拡大の想定を広く共有することが必要だと強調し、ワクチンを接種した人を含めてマスクの正しい着用や手指の消毒、換気といった基本的な感染対策を徹底するほか、「密集、密閉、密接」の3密のうち、1つの密でも避けるほうがよいとしています。

また、新年会や成人式で飲食店を利用する際は換気などがしっかりしている第三者の認証を受けた店を選んで、少人数・短時間で行い、飲食時以外はマスクを着用すること、軽度の発熱やけん怠感など少しでも体調が悪ければ外出を控えて積極的に医療機関を受診し検査を受けることが推奨されるとしました。

自治体に対しては、感染者数や重症者数の予測に基づいて、病床の確保や検査、保健所の体制の強化、それに自宅療養者に対する訪問診療などの体制を作ることや、医療従事者や重症化リスクが高い高齢者などを対象にした追加接種の前倒しを円滑にするなど、接種を進めることが求められるとしています。

さらに医療機関や介護施設、保健所や交通機関など社会機能の維持に関わる職場で、感染や濃厚接触によって多くのスタッフが離れざるをえなくなる事態が想定されるため、業務を継続するための計画を点検するよう求めました。

脇田座長「大都市圏でも感染拡大進むか」

専門家会合のあと記者会見に出席した脇田隆字座長は「感染者が急増している沖縄県、山口県、広島県ではオミクロン株への置き換わりが進んでいるとみられ、それが急速な感染拡大につながっていると考えられる。東京、大阪など大都市圏でも一定程度、オミクロン株への置き換わりが見えてきているので、今後、大都市圏においても感染拡大が進むだろうという議論があった」と話しました。

その上で、オミクロン株について「日本国内での感染者を見てもオミクロン株で軽症者が多いのは間違いないと思う。ただ、今は若い人の感染が非常に多く、今後、高齢者や重症化のリスクが高い人に感染が広がったときに重症者が増える可能性が懸念される。感染対策についてすでに実施調査に入っているが、オミクロン株でも感染様式はこれまでと大きく変わってはいない。換気をしっかりと行うこと、マスクの着用や手洗いなど、基本的な感染対策を今まで以上に気をつけることが重要だ」と話していました。

必要な対策 早急に実施を

オミクロン株の感染が急拡大すると、重症化する割合が低くても重症者数が一定程度増えたり、医療従事者を含めた社会や暮らしを支える「エッセンシャルワーカー」で出勤できない人々が増えたりするなど、大きな影響が出るとして、新型コロナ対策にあたる専門家は、高齢者へのワクチンの追加接種の前倒しや、今週末からの連休での感染対策徹底の呼びかけなど、必要な対策を文書で示し、早急に実施するよう訴えました。

文書は、6日開かれた専門家会合の中で示されました。

この中では感染状況について、特に沖縄県で若者を中心に感染が増加していて背景として、オミクロン株の感染力が強いことやワクチンの感染予防効果が明確に減少していること、クリスマスから年末にかけてふだん会わない人と接触する機会が増加したことがあり、今後、感染者数の報告がさらに増加する可能性があると指摘しています。

そして感染者の特徴として、多くの人は軽症でオミクロン株では比較的重症化率が低い可能性があり、潜伏期間が短いとしていて、急速な感染拡大が続くと、若者では重症化率が低くても早い段階で高齢者に感染が広がって重症の患者が生じる可能性があり、軽症者が急増して地域の医療や濃厚接触者を調査する保健所への負荷が増加し、医療従事者を含めた社会や暮らしを支える「エッセンシャルワーカー」で出勤できない人が増え、社会機能を維持することが難しくなると指摘しました。

その上で、医療のひっ迫を防ぎ、社会機能を維持するために効果的な対策をとる必要があるとしています。

具体的には、感染から高齢者を守るために高齢者へのワクチンの追加接種を前倒しすることや、医療機関や高齢者施設の従業員について追加接種を行い、定期的な検査を再開するよう求めています。

また、成人式や今週末からの連休でさらなる感染拡大がありえるとして、少しでも具合が悪い場合は外出を控えて速やかに検査を受け、医療機関を受診すること、飲み会や食事会は認証を受けた店で短時間、少人数で行うこと、マスクの着用や換気、密を避けるなどの対策を続けるなど、基本的な感染対策の徹底が必要だとしています。

さらに、医療体制のひっ迫を防ぐために、診療所や医師会などが自宅や宿泊施設で療養する患者への対応に協力すること、新たに承認された新型コロナの飲み薬を処方する際に必要な医療機関の登録を加速させるなど、無症状の感染者や軽症者への対応を弾力的に行うことを求めています。

さらに、企業などに対して感染が広がった場合に備えて「事業継続計画」の準備を求め、感染拡大で欠勤者が増える事態を想定し、業務の優先順位をつけることやテレワークの推進が必要だとしています。

新規感染者数 全国で前週比 3.26倍

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、5日までの1週間の新規感染者数は、全国では前の週と比べて3.26倍と急速な増加となっています。

感染の急拡大でまん延防止等重点措置の適用が検討されている地域では、
▽広島県が24.69倍
▽山口県が11.11倍
▽沖縄県が6.95倍と特に急速な増加となっています。

首都圏の1都3県では
▽東京都で3.02倍
▽千葉県で3.96倍
▽埼玉県で3.32倍
▽神奈川県で1.50倍といずれも増加しています。

関西では
▽大阪府で3.01倍
▽京都府で2.04倍
▽兵庫県で1.91倍
▽奈良県で15.29倍
▽滋賀県で5.80倍
▽中京圏でも愛知県で3.78倍と増加しています。

現在の感染状況を人口10万当たりの直近1週間の感染者数でみると
▽沖縄県が最も多く80.07人
▽山口県が22.35人
▽広島県が14.11人
▽滋賀県が10.26人と大幅に増加しています。

このほか
▽京都府が8.38人
▽奈良県が8.08人
▽大阪府が7.97人
▽東京都が6.76人などとなっていて
▽全国では4.86人でした。