北朝鮮 弾道ミサイルの可能性あるもの500キロ飛翔 EEZ外落下か

岸防衛大臣は、北朝鮮が5日午前8時すぎに弾道ミサイルの可能性があるものを発射し、およそ500キロ飛行して、日本のEEZ=排他的経済水域の外に落下したと推定されることを明らかにしました。

岸防衛大臣は防衛省の幹部会議のあと、5日午前11時ごろ記者団に対し、北朝鮮が午前8時7分ごろに、内陸部から弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射したことを明らかにしました。

これまでのところ、日本の航空機や船舶への被害は確認されていないとしています。

そのうえで岸大臣は、「詳細については現在、分析中だが、通常の弾道軌道だとすれば、およそ500キロ飛しょうし、落下したのはわが国の排他的経済水域の外と推定される」と述べました。

発射を受けて岸大臣は、岸田総理大臣の指示に基づき、防衛省・自衛隊に対し、引き続き、情報収集や警戒監視に万全を期すよう指示を出したことを明らかにしたうえで、「アメリカや韓国など関係国と緊密に連携をとりながら、国民の生命や平和な暮らしを断固として守り抜く決意だ」と強調しました。

また岸大臣は、北朝鮮が令和元年5月以降、これまでにおよそ40発もの頻繁な発射を繰り返しており、その目的はミサイル技術の向上にあると指摘し、「昨今の北朝鮮による弾道ミサイルなどの度重なる発射は、わが国を含む国際社会全体にとっての深刻な課題だ」と述べました。

そして岸大臣は今回の発射を踏まえ、いわゆる「敵基地攻撃能力」の保有も含め、あらゆる選択肢を検討し、今後も防衛力の抜本的な強化に取り組んでいく考えを改めて示しました。

防衛省 日本への影響ないか情報収集

防衛省は、発射されたものが弾道ミサイルかどうかや詳しい軌道、それに飛んだ距離や落下地点などについて分析を進めています。

北朝鮮が、弾道ミサイルやその可能性があるものを発射したのが確認されたのは去年10月、新型のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射して以来です。

官房長官「落下は排他的経済水域外と推定」

松野官房長官は、記者会見で「北朝鮮は本日午前8時7分ごろ、北朝鮮の内陸部から弾道ミサイルの可能性があるものを東方向に発射した。詳細については現在分析中だ。現時点で、わが国の航空機や船舶への被害報告などの情報は確認されていない」と述べました。

また松野官房長官は、「詳細は現在分析中だが、通常の弾道軌道だとすれば、およそ500キロ飛しょうし、落下したのはわが国の排他的経済水域外と推定される」と述べました。

そのうえで、「これまでの弾道ミサイルなどのたび重なる発射も含め、一連の北朝鮮の行動は、わが国と地域の平和と安全を脅かすものであり わが国を含む国際社会にとって深刻な課題だ」と非難しました。

そして、「国民の生命・財産を守り抜くため、引き続き情報の収集・分析や警戒監視に全力を挙げ、今後追加して公表すべき情報を入手した場合には速やかに発表する」と述べました。

海上保安庁 被害の情報なし

北朝鮮から弾道ミサイルの可能性がある飛しょう体が発射されたとみられることを受け、海上保安庁が日本周辺の海域で被害などの確認を進めていますが、これまでのところ、日本に関係する船舶への被害の情報は入っていないということです。

韓国軍「北朝鮮が日本海に向け飛しょう体1発を発射」

韓国軍の合同参謀本部は、北朝鮮が5日午前8時10分ごろ、内陸部から日本海に向けて弾道ミサイルと推定される飛しょう体1発を発射したと発表しました。

韓国軍は、飛しょう体の詳しい種類や飛行距離などについてアメリカ軍とともに分析を進めています。

韓国の通信社、連合ニュースは、北朝鮮軍が先月から行っている冬の訓練の一環として発射に踏み切ったとする見方も出ていると伝えています。

これを受けて韓国政府は、午前9時45分から50分間にわたって、緊急のNSC=国家安全保障会議を開いて対応を協議しました。

終了後、韓国大統領府は、「国内外の情勢の安定が重要な時期に行われた今回の発射について憂慮を表明する」としたうえで「南北関係の緊張状態を解消するためには、対話の再開が重要だ」と強調しました。

北朝鮮は、国防5か年計画に沿って、弾道ミサイルを含むさまざまな兵器の開発を推し進める立場を示しており、去年9月、列車からの短距離弾道ミサイルの発射や、極超音速ミサイルの発射実験を行ったなどと発表しました。

また、去年10月には、東部シンポ(新浦)の沖合から新型のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイルを発射しました。

キム・ジョンウン(金正恩)総書記は、先月末に開かれた、重要政策を決定する朝鮮労働党の中央委員会総会で「朝鮮半島の軍事的環境は日増しに不安定になっている」と指摘し、軍事力を強化する姿勢を強調していました。北朝鮮としては、年明け早々に再び発射に踏み切ることで、核・ミサイル開発の進展を印象づけ、米韓両国をけん制するねらいもあるとみられます。

北朝鮮の発射 去年10月以来 前回はSLBMか

北朝鮮が弾道ミサイルやその可能性があるものを発射したのが確認されるのは、去年10月19日以来です。

防衛省によりますと、前回は東部のシンポ付近から東方向に1発の弾道ミサイルを発射しました。

最高高度が50キロ程度に達し、変則的な軌道でおよそ600キロ飛んで、日本の排他的経済水域の外側の日本海に落下したと推定されています。

このミサイルは、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルと推定されています。

相次ぐ北朝鮮の新型の弾道ミサイル発射

北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記は去年1月、朝鮮労働党の党大会での演説で「国防科学技術をより高い水準に引き上げ、最強の軍事力を確保しなければならない」と述べ、新型の弾道ミサイルの開発計画を盛り込んだ、国防5か年計画を打ち出しました。

そのあとの3月、北朝鮮は、東部のハムギョン(咸鏡)南道から日本海に向けて弾道ミサイル2発を発射し、日本の防衛省は軌道が比較的低かったことなどから、新型の弾道ミサイルだと分析しました。さらに北朝鮮は9月から10月にかけて、4回にわたり立て続けにミサイルを発射しました。

このうち9月には新たに開発した長距離巡航ミサイルの発射実験に成功したとして「だ円や8の字の軌道に沿って2時間6分20秒飛行し、1500キロ先の目標に命中した」と主張しました。

その3日後には、西部のピョンアン(平安)南道から日本海に向けて短距離弾道ミサイル2発を発射し、日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下しました。

国営メディアは山岳地帯で列車からミサイルを発射する映像を公開し、新たに組織された「鉄道機動ミサイル連隊」が射撃訓練を行ったと伝えました。

そして、およそ2週間後には北部のチャガン(慈江)道から弾道ミサイル1発を発射し、新たに開発した極超音速ミサイル「火星8型」の発射実験を初めて行ったと主張しました。

さらに10月には、東部のハムギョン南道シンポから新型のSLBM=潜水艦発射弾道ミサイル1発を発射しました。北朝鮮がSLBMを発射したのはおよそ2年ぶりで、国営メディアは「水中での作戦能力の向上に寄与するだろう」と強調しました。

こうした中、キム総書記は10月、ミサイルなどの兵器を集めた展示会を訪れて演説し、対話を呼びかけるアメリカへの不信感を表すとともに、核・ミサイル開発を推し進める姿勢を強調しました。

キム総書記は先月30日で、軍の最高司令官に就任してから10年となり、ことしの国政運営の方針を示した演説では「朝鮮半島の軍事的環境は日増しに不安定になっている」と主張し、軍事力を強化する姿勢を改めて示していました。

専門家「国防力の強化を実行」

北朝鮮が弾道ミサイルと推定される飛しょう体を発射したことについて、北朝鮮情勢に詳しい慶應義塾大学の礒崎敦仁教授は「キム・ジョンウン(金正恩)総書記は、朝鮮労働党の総会で国防力の強化を継続していくことを指示していたので、その方針にのっとって発射実験が行われたとみられる」と述べ、先月末の党中央委員会総会で示された方針が、早速実行に移されたという見方を示しました。

また「アメリカや韓国に対して、北朝鮮と交渉する必要があるんだという存在感を示す意味合いもあるとみられる。米韓両国の対応を見ながら対話のタイミングを見計らっていて、対話が進んでいない間は国防力の強化に徹するというのが、いまの北朝鮮の姿だ」と分析しました。

さらに、日本の対応について礒崎教授は「北朝鮮が国防力の強化を掲げている以上、ミサイルの発射実験を続ける可能性が高いため、日本はこれまでの対北朝鮮政策が、どのくらい効果をもたらしたのかということを、きちんと精査したうえで、次の段階に進んでいかないといけないように思う」と指摘しています。