核保有5か国「核戦争に勝者なし」声明 核戦争回避と軍縮を強調

国連安保理の常任理事国で、核保有国のアメリカやロシア、中国など5か国は共同声明を発表し、「核戦争に勝者はいない」として、軍事的な対立を避けるため、外交的なアプローチを追求する姿勢を示すとともに、核の拡散防止の重要性を訴え、軍縮に努めていく姿勢を強調しました。

アメリカ、ロシア、中国、フランス、イギリスの5か国は3日、核戦争や軍拡競争を防ぐための共同声明を発表しました。

この中で5か国は、「核兵器の保有国どうしの戦争の回避と、戦略的なリスクの軽減が最も重要な責務だとみなしている」としたうえで「核戦争に勝者はおらず、決して戦ってはならない」と強調しました。

そして、「核兵器は、防衛や侵略の抑止、戦争を防ぐという目的のために存在しなければならない。われわれの核兵器は、他のいかなる国も標的としていない」としています。

そのうえで、「こうした兵器のさらなる拡散は防がなければならないと確信している。NPT=核拡散防止条約の義務を果たしていく」として、核保有国として、核の拡散防止に取り組む姿勢を強く打ち出しました。

さらに、衝突の防止や相互理解の推進のため、「2国間や多国間の外交的なアプローチを追求し続ける」と強調しました。

今回の声明は、今月4日から開催が予定されていたものの、新型コロナウイルスの影響で、延期が決まったNPTの再検討会議に合わせて用意されたものとみられます。

前回の会議で、核保有国と非保有国の立場の違いが浮き彫りとなったことを踏まえ、共同声明では安全保障面で対立を深めるアメリカと中国も、核保有国として核軍縮に協力して取り組む姿勢をアピールした形です。

米国務省「各国は核兵器について自制する責任ある」

今回の共同声明について、アメリカ国務省の報道担当者はNHKの取材に対し「各国は緊張状態にあるときでさえ、特に、核兵器については自制する責任があることを明確にしている」と述べ、意義を強調しました。

そのうえで、バイデン政権が安全保障上の核兵器の役割を縮小する方向でとりまとめを進めている新たな核戦略の指針「核態勢の見直し」の方針とも一致しているとしています。

アメリカは核兵器の役割の縮小を目指す一方で、非保有国が主導した核兵器禁止条約については、現在の安全保障情勢を考慮しておらず、核軍縮を進める現実的な方法ではないとして一貫して反対の立場を示しています。

アメリカとしては、核保有国が核軍縮に取り組む姿勢をアピールすることで非保有国からの批判を避けるとともに、核軍縮に向けた議論をリードしたい思惑もあるものとみられます。

ロシア外務省「文書はわれわれのイニシアチブで作成」

共同声明について、ロシア外務省のザハロワ報道官は、メディアの質問に答える形で「文書はわれわれのイニシアチブで作成された」と述べました。

そのうえで、「今の厳しい国際安全保障環境において、核保有国の首脳がこうした政治的声明に賛同することは、国際的な緊張を緩和し、軍拡競争を抑制し、信頼の強化につなげて、将来の相互の軍備管理やリスク低減への基礎を築くことにつながると信じている」と、その意義を強調しています。

中国外務省 核兵器について初の共同声明の意義強調

核保有国の5か国による共同声明について中国外務省の傅聡軍縮局長は4日、記者会見し「5か国が初めて出した歴史的な声明で、このとりまとめに中国は積極的な役割を果たした」と述べ、声明の意義を強調しました。

一方で、中国が急速な軍備増強を進めているとアメリカが指摘していることについては「アメリカは今後30年で何兆ドルも費やして、核戦力をアップグレードしようと計画している。安全保障環境の変化に中国が対応するのは自然なことだ」と述べ、反論しました。

さらにアメリカとイギリス、オーストラリアが新たに設けた安全保障の枠組み「AUKUS」でオーストラリアへの原子力潜水艦の配備が計画されていることについて「核不拡散のリーダーと常に主張している3か国が、政策のダブルスタンダードを示したもので、多くの国が同じことをすればNPT=核拡散防止条約の崩壊につながる」と述べ、アメリカなどをけん制しました。

国連事務総長「今後のより具体的な取り組みに期待」

核保有国5か国の共同声明について、国連のグテーレス事務総長は3日、歓迎するとした声明を発表し、「NPT=核拡散防止条約で課せられている義務を含め、不拡散や軍縮に関する合意などを順守する必要があるという核保有国の認識を高く評価する」としました。

そして、核戦争を防ぐための措置を追求する姿勢を示したことについて、「今後のより具体的な取り組みに期待している」として、核保有国の実際の行動に期待を示しました。

そのうえで、グテーレス事務総長は「核をめぐるすべてのリスクを取り除く唯一の方法は、すべての核兵器を取り除くことだ。この目標をできるだけ早く達成するため、核保有国を含むすべての加盟国と協力していく考えを改めて表明する」と強調しました。

ICAN「実際は正反対の行動」

核保有国5か国の共同声明について、2017年にノーベル平和賞を受賞した、国際NGOのICAN=核兵器廃絶国際キャンペーンのベアトリス・フィン事務局長は、3日、自身のツイッターで「彼らは『よい内容』の声明文を書くが、実際は正反対の行動をとっている。多額の金を投入して近代化を進めながら、核兵器の開発競争を行い、常に核戦争に備えている」と批判しています。

専門家「核軍縮の議論の方向性 主導権とるためではないか」

アメリカやロシアなど、核保有国5か国が出した共同声明について、核軍縮に詳しい長崎大学核兵器廃絶研究センターの広瀬訓 副センター長は「アメリカとロシアは依然として6000発前後の核弾頭を保有しており、中国は拡張してきているなど、5か国に対しては核軍縮に熱心ではないという批判が根強くある。さらに、核兵器の非人道性に注目した核兵器禁止条約が成立、発効したことで、核保有国に対する非常に強い逆風が吹いている。今回の共同声明はNPT=核拡散防止条約の再検討会議を前に、核保有国の立場を明らかにし、3月に予定されている核兵器禁止条約の第1回の締約国会議の前に核軍縮の議論の方向性を決め、主導権をとるために出されたのではないか」と話しています。

そのうえで「声明では、核軍縮は単純に核兵器を削減すればよいという問題ではなく、安全保障が基盤になるという議論の枠組みを確認しておきたいということがにじんでいる。核戦争に勝者はいないことを確認し、核兵器が使われた場合に、どのような恐ろしい結果がもたらされるのか、核保有国も十分に理解し、懸念を共有しているという姿勢を見せている一方、核兵器禁止条約が国際社会の潮流になることを警戒して、あくまでも自分たちが認めている核軍縮の議論の舞台がNPTであるという姿勢を鮮明にしたいということだと思う」と指摘しました。

また、広瀬副センター長は「共同声明が出されたからといって、各国間の関係が急に改善されることは期待できないが、声明は核保有国だけではなく、すべての国々が安全保障環境の改善に向けて協力すべきだというメッセージになっている。日本もNPTの加盟国として、東アジアの安全保障環境の改善に向けて最大限の外交努力を行うべきだ」と述べました。

公明 山口代表 “NPT運用検討会議いずれ開催の必要”

公明党の山口代表は、党の仕事始めであいさつし「声明が出された以上、NPT運用検討会議をいずれ開催し、非保有国も含めた共通認識に高まるよう努力する必要がある。日本は核保有国との信頼関係をつくり上げたうえで、非保有国との橋渡しをさらに前進させていくべきだ」と述べました。