ことしも続く献立の悩み~時短料理研究家の特別レシピ大公開~

ことしも続く献立の悩み~時短料理研究家の特別レシピ大公開~
2022年が明け、新たな1年が始まりました。

でも、家庭を支える皆さんにとって、去年もことしもこれからも、何一つ変わらないものがあります。それが「毎日のごはんづくり」。

日々時間に追われる中、もう少し手際よく作りたい。新しい年の誓いもこめて取材してみました。

(ネットワーク報道部:鈴木彩里・金澤志江・芋野達郎)

※文末に大人気の料理研究家の特別レシピを公開しています。

PART1:ごはんの悩みはエンドレス

2歳の娘をもつ私(鈴木)は、去年5月に育児休業から復帰しました。記者の現場に戻って、日々、取材を続けています。

平日のタイムスケジュールはザッとこんな感じ。
この中に、苦手なものがあるのです。
そう。食事づくり。

朝ごはんを食べる娘に「おいしい?」と聞くと、ニコニコ笑いながら「んまいんまーい!」と叫びます。どうやら「うまいうまい」と言っているようです。
そんな娘の「んまいんまーい!」を聞きながら、すでに私の心は夜に飛んでいます。

「夜ごはんどうしよ…」。

もちろん夫も積極的に手伝ってくれていますが、平日には、毎日、毎日、このループが無限に続いています。

別に料理そのものが嫌いなわけではないんです。

休日に時間を使って準備する料理はどちらかと言えば得意。

でも、時間に追われる中で手際よくこなす料理が昔からどうしても苦手なんです。

自分がダメなんじゃないかと、劣等感に苛まされることもしょっちゅうです。

落ち込んだとき、逃げるように開いたスマホには、同じように嘆くお父さん、お母さんの声がたくさん…。

PART2:みんな悩んでる

子ども相手にしながら料理とか無理
毎日料理する人はすごいし、フルタイム勤務でそれをやってるひとは超人
料理の何がいちばん大変って毎日の献立考えること
冬休み、一日中献立のことばっかり考えるの本当に嫌
鍋とカレーの連続攻撃
ちょっと見ただけでも、思わず「そうそう、わかる!」と叫んでしまいそうな声がたくさん。

あ、私だけじゃなかったんだ!

ちょっと勇気づけられたので、記者の私にできることがあるのではと、「日々のごはんづくり」を取材することにしました。

PART3:頼りになる全農のTwitter

まず助けを求めたのが、Twitterの“リツイート”や“いいね”がものすごい数になっているあの団体です。
全農広報部の公式Twitter、その名も「日本の食を味わう」。

私自身、「ああ、わかるわかる…」ととても共感したツイートがありました。

“食べる”行為は氷山の一角で、その下にこれだけの作業が詰まっているのです。
Twitter発信を行う広報企画課の1人、福田敦子さんは、2020年4月にツイートした「ラッシーの作り方」が突然、バズって驚いたそうです。
福田敦子さん
2019年7月から始めたTwitterでしたが、実はあんまり確たる目的はないまま始めました。新型コロナウイルスで最初の緊急事態宣言が出たときに、学校や飲食店が休みで生乳の需要が一気に落ち込んで、生乳を廃棄しないといけなくなるかもしれないとなって、『ラッシーの作り方』を投稿したら運のいいことに多くの方に見ていただいて。それがレシピを投稿するようになったきっかけですね
生乳余りで困っている生産者を支援しようと考案した牛乳を使った最新のレシピを教えてくれました。
もう1つ、この時期ならでは、多くの家庭で、正月の残りをどうするか気になってくる“お餅”を作ったレシピも。
福田敦子さん
パッとTwitterを読んで『きょうの夜試そうかな』『次の週末試そうかな』と思える気軽さは意識しています。Twitterでバズって有名になることよりは、米、野菜、お肉、農畜産物を皆さんにたくさん食べていただくことが目標です。消費する側と生産する側が両方いて成り立つということなので、その両輪で成り立っている食を大事にしていこうよと訴えていこうと思っています

PART4:Mizukiさん「簡単・時短・節約」は“思いやり”

もう1人、どうしても話を聞きたい人がいました。

向かったのは、和歌山県。

この日は経由地の名古屋が大雪!

8時間をかけてようやくお会いできたのが料理研究家のMizukiさん。
私が日々の食事作りで最も頼りにしていると言っても過言ではない、憧れの人。インスタグラムのフォロワーが80万人を超える、大人気の料理研究家です。

2013年ころからアプリやブログに毎日レシピをアップし続け、これまでに6000を超えるレシピを生み出してきました。

私がMizukiさんのレシピにひかれる理由は、「簡単・時短・節約」をテーマにしていて「私でもできるかも!?」と思わせてくれるから。

Mizukiさんは日々の料理と向き合い方を優しく丁寧に教えてくれました。
鈴木
「簡単・時短・節約」をレシピのテーマにしているのはなぜですか?
Mizukiさん
以前お店をやっていたときに、私だけでなく一緒に働いている人にも作ってもらえるように「簡単」に。
ランチタイムがすごく忙しいから、とにかく早く作らなくてはいけなくて「時短」。
「節約」は、コストをかけられないから。
これが普通の家のごはんにも完全に当てはまるんじゃないかと思って。自分ができることを考えたときに「簡単・時短・節約」になりました。
鈴木
「簡単・時短・節約」。できるように心がけていることは?
Mizukiさん
家庭にあるものだけで作るっていうのは絶対条件です。
豚こまとか鶏肉などの使いやすい材料、そして、火の通りやすい材料を使います。長時間煮込まないといけないものは平日の仕事終わりにはできないので、今すぐ作れるもの。
あとはほったらかしにできるものを提案したりとか。
時短するためには火の通りやすい材料を使うとか、省ける工程を省くことを考えています。
鈴木
インスタグラムなどのSNSを使っていて、どんな発見がありましたか?
Mizukiさん
皆さんとやり取りするなかで、作る人って食べる人が「おいしい」って言ってくれるとすごい満足感があるんです。
作った人って「すごい簡単でした」っていう感想よりも「娘がすごく喜んでくれた」「息子がおかわりした」そういう感想が多いんですね。
やっぱり自分じゃないなって。食べてくれる人のことを考えているというのが8年ぐらいを通してわかってきて。
なんで「簡単」を求めるかっていうのを考えたとき、「失敗しないでおいしい物を食べさせてあげたい」っていう気持ちがある。
「時短」っていうのはとにかく早く作りたいわけじゃなくて、「待たせたくない」とか、仕事から帰って時間がないけどおいしい物を作ってあげたいとかそういう気持ち。
「節約」っていうのは家計に負担をかけたくないっていうこと。
「簡単・時短・節約」は掘り下げていくと、「思いやり」につながっているのかなって。みんな結局、家族のこととか誰かのことを考えて「簡単・時短・節約」を求めているんだなというところに行き着きました。
鈴木
忙しいときほど料理へのモチベーションが上がらないんですが、どうにか上げるコツってありますか?
Mizukiさん
もう無理なときは無理でいいんですよ。そこはもう諦めてしまってよくて。
肉を焼く、魚を焼くでいいと思うんです。
作り手としてはいろいろ作らないといけないという見えないプレッシャーがあると思うんですけど、たぶん肉を焼いておけば文句は言われないです。
肉を焼いてサラダを添えていれば食べるほうは結構、満足なのかなと思います。そこに1品、お総菜をプラスするとか、そうやってやりくりをしていかないと。
全部を何もかも毎日、ちゃんとやらないといけないとは思わないほうがいいと思います。
モチベーションは上がらない日は上がらないんですよ。
鈴木
目からうろこが落ちすぎてうろこの山ができそうです(笑)
Mizukiさん
私も「もうきょうは無理!」と思うことがありますよ。困ったときのために焼き肉用のお肉をよく冷凍しています。
鶏肉とかを買うと何かしないといけないんですよ。切ったり焼いたりいろいろ味付けしたりしないといけないんですけど、焼き肉用の肉は豚でも牛でも、焼けばタレがあれば食べられる。
誰も嫌な気持ちにならないし、いいことしかないんですよ。
焼き肉用の肉があると思ったら、夕方もあんまり憂うつじゃなくなるんですよ。

PART5:ごはん作りは家事の“王様”

ここまで取材を進めてきて、ごはんづくりに悩んできた気分が少し晴れてきたような気がしました。

私だけでなく、どの家庭でも毎日のごはんづくりが家事の中で大きな負担になっていることはデータからもわかります。

子育て世代向けの事業を展開している会社が、妊娠中や子どもがいる父親と母親を対象にした調査では、1日のうちで家事にかける時間の平均は「4.4時間」。
1日の平均時間については、▽料理が「2.2時間」、▽洗濯が「1.2時間」、▽掃除が「1時間」となっていて、家事の中でも料理にかける時間が圧倒的に多いことが分かります。

やはり料理づくりは家事の“王様”ともいえる存在なのです。

エピローグ:できる範囲で頑張ろう

冬になると鍋、鍋、鍋…鍋三昧になってしまうとMizukiさんにポロリとつぶやくと、「冬は鍋で過ごせばいいと思う。温かいし、部屋も暖まるし。作る人って食べるときには冷めているじゃないですか。鍋は温かいまま食べられる。鍋はいいですよ。いろんなスープが出ているし、鍋はみんな好きなのでいいんですよ」と全肯定され、また肩の荷が下りました。

今回の取材を通じて「もしかすると構えすぎていたのかもしれないな」と思いました。

ことしはまだ始まったばかり。「夜ごはんどうしよう…」と1人遠い目をしてつぶやく日も来ることでしょう。

そのときはできる範囲でやればいい。

無理をしなくても、お肉を焼いて野菜を添えるだけで家族の笑顔が見られるんだ!と自分を励まそうと思います。

Mizukiさんの特別レシピ大公開

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

最後に、今回の取材でMizukiさんから教えていただいた特別レシピを大公開します。いずれも、年明けから日々の献立に悩む私のような人たちにピッタリのレシピです。

まずは、お正月の暴飲暴食で疲れた胃腸を休ませる卵がゆのレシピです。
年末年始は和食を食べる機会が多く、そろそろ味が濃いものを食べたいころでは?

お正月の残りのお餅を使ったグラタンはいかがですか?