コロナ禍の株価回復、2022年はどうなる?

コロナ禍の株価回復、2022年はどうなる?
株式相場の格言では、2021年と2022年は「うしはつまずき、とら千里を走る」。2021年は、バブル景気以来の日経平均株価3万円台を一時回復しました。しかし、その後は変異ウイルスへの警戒感などもあり、まさにうしのように足取りは重くなりました。来年度・2022年度は、日本経済の成長率は2021年度を上回るプラスが予想されていますが、株価も格言のようにさらなる上昇基調に乗ることができるのでしょうか。(経済部記者 仲沢啓)

大納会に“近代日本経済の父”

12月30日、東京証券取引所で開かれた「大納会」に登場したのは、近代日本経済の父と言われる渋沢栄一。NHKの大河ドラマ「晴天を衝け」で渋沢役を演じた俳優の吉沢亮さんが鐘を打ち鳴らして、関係者とともに来年の株価上昇を願いました。
大納会の日、日経平均株価の終値は2万8791円71銭。年末の終値としては、バブル経済最盛期の3万8900円台以来の、32年ぶりの高値となりました。

しかし、1年の株価の動きを振り返れば、いったんは3万円の大台を回復したものの、その後は値を下げ、上昇の足取りが重い展開となっています。

コロナに翻弄

2月:3万円超え
2021年の日経平均株価は、2万7000円台からスタート。

1月には2回目の緊急事態宣言が出されましたが、ワクチン開発への期待感や、経済を下支えするための各国の巨額の財政出動などが追い風となって、上昇傾向が続きます。
そして、2月15日には日経平均株価の終値が3万円の大台をつけました。1990年8月以来、実に30年6か月ぶりのことでした。
4月:“宣言”懸念で2日で1100円下落

しかし、その後は、新型コロナの感染拡大が相場の重しとなります。

3回目の緊急事態宣言が出されることへの懸念から、4月には2日間で1100円以上の下落となるなど、株価は下落傾向に転じます。
8月:コロナと自動車ショックで最安値
7月以降は変異ウイルス「デルタ株」の感染が、国内外で拡大。

東南アジアでの感染拡大などの影響で、部品調達が滞ったとしてトヨタ自動車が大規模な減産を発表。

日経平均株価は大きく下落して、8月20日には、最安値となる2万7013円25銭となりました(終値ベース)。
9月:再び3万円台回復
一方、9月に入ると、当時の菅総理大臣が自民党の総裁選挙への立候補を断念したことをきっかけに、新しい内閣による経済対策への期待感が高まりました。
ワクチン接種も順調に進んだことから株価は急ピッチで上昇し、9月14日には3万670円10銭と最高値まで上昇しました。
11月:オミクロンショック

ところが株価の上昇は続きません。

中国経済の先行きへの懸念、原油価格の高騰、それにアメリカの金融政策の転換などを受けて、一進一退。
11月、感染力が強い新たな変異ウイルス「オミクロン株」が発生し瞬く間に世界に広がったことで先行きへの警戒感が高まり、株価は一時2万8000円を割り込みました。
12月:霧が晴れぬ年末
オミクロン株について、重症化のおそれが低いという見方も出るなか、アメリカの年末商戦が堅調だったことなどから、いくぶん警戒感が和らいでいますが、先行きが不確実という「霧」が晴れたわけではありません。

上昇の足取りは重く、12月30日の大納会は値下がりして、2021年の取り引きを終えました。

2022年は?

2022年はどうなるのか?

株価を見るうえでのポイントについて、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストは、次の3つを挙げています。
1 インフレ
2 選挙
3 コロナ
ポイント1 インフレ

藤戸さんが懸念材料として最初に挙げるのは、欧米でのインフレの進行です。

11月のアメリカの消費者物価指数は前年同月比の上昇率が6.8%と1982年以来、39年ぶりの高い水準です。

EU=ヨーロッパ連合の11月の消費者物価指数も、前年同月比で4.9%の上昇と、統計をさかのぼることができる1997年以来最も高い伸び率です。

今後こうしたインフレをうまく抑制できるかがポイントになると指摘します。
藤戸さん
「アメリカの中央銀行であるFRBが、利上げでうまく物価を抑え込むことができるかどうか。もし物価がさらに高い水準を続けていくことになった場合は、FRBが想定されている3回ではなくて、もっとやるかもしれない。利上げというのは株価の大敵ですから、予想以上に高物価が続いた場合というのは株価にとっても相当重しになってくる。やはり各国の中央銀行の金融政策がカギを握ってくる年になると考えます」
ポイント2 選挙

2つ目に挙げたのが選挙です。

夏には日本で参議院選挙が、秋にはアメリカで中間選挙が行われます。

選挙の結果、安定した政権運営ができるかも焦点だとしています。
藤戸さん
「政治が混迷してしまうと政策発動がうまくできなくなってしまう。これは必ず経済そして企業業績にも影響を与えるので、当然のことながら株価にとってもマイナスということになる」
ポイント3 コロナ

3つ目はコロナです。

足もとではオミクロン株の感染が世界で広がっているため、経済活動が正常化するにはまだ時間がかかり、企業のビジネスも「ポストコロナ(コロナ後)」ではななく、「ウィズコロナ(コロナとともに)」になると指摘します。
藤戸さん
「例えば航空会社や鉄道会社、世界ではクルーズ船の運営会社、カジノ、レジャーあるいは旅行関係。こういった業界がいわゆるノーマルなビジネスに戻れる、コロナのことを心配しなくていいよという状況になるのには相当時間がかかる。経済自体が腰折れして、例えばマイナス成長になってしまうシナリオを描く必要はないと思うが、依然としてコロナの影響はわれわれの生活や企業業績にも反映してくるだろう。このシナリオを考えておく必要がある」

“壬寅”は地政学リスクの年!?

2022年のえとは「壬寅(みずのえとら)」です。
前回60年前の壬寅は1962年で、冷戦時代のさなか、ソビエトがキューバにミサイル基地を建設しようとしたことから、アメリカとの対立が激化し、世界が核戦争の危機に直面した「キューバ危機」が起きました。

ウクライナをめぐるロシアと欧米の緊張。台湾や人権をめぐる米中の対立などを念頭に、2022年はこうした「地政学リスク」が焦点となると指摘する専門家もいます。

さまざまな懸念を乗り越えて、株価の上昇につなげられるのか。

2022年は、「ウィズコロナ」になるとしても、経済を着実に成長させていく工夫がより重要になる1年となりそうです。
経済部記者
仲沢 啓
2011年入局
福島局 福岡局を経て
現所属で経済産業省・金融業界を担当