オミクロン株 “地域で一定規模の感染か” 厚労省 専門家会合

新型コロナウイルス対策について助言する厚生労働省の専門家会合が開かれ新たな変異ウイルス、オミクロン株について、地域で一定規模の感染が起きている可能性があり、今後、急速な感染拡大を想定すべき状況だとして、年末年始の休暇などをきっかけとした感染拡大に注意するよう呼びかけました。

専門家会合は、現在の感染状況について、新規感染者数は依然として非常に低い水準が続いているものの、都市部を中心に感染者数の増加傾向がみられ、一部の地域では医療機関などでのクラスターや感染経路不明の事例の発生による一時的な増加がみられるとしました。

オミクロン株については、国内の複数の地域で感染が確認され、感染経路が分からないケースも出ているとして、国内でも地域で一定規模の感染が起きている可能性があり、今後、急速な感染拡大を想定すべき状況だという認識を示しました。

オミクロン株に感染した際の症状については、これまで国内で経過観察となっている感染者は全員が軽症か無症状で、海外の研究でもデルタ株と比べ重症化しにくい可能性が示されているとしましたが、今後、感染者数が急速に増加すると、入院が必要な人も急増し、医療提供体制がひっ迫する可能性があることに注意が必要だと指摘しました。

また、今後の対応についてオミクロン株の水際対策を重点的に行うことに加え、国内のすべての感染者に対し、オミクロン株かどうかを調べるゲノム解析などの検査を続け、国内での早期探知や迅速な感染ルートの調査などが必要だとしました。

そして、年末年始に向けてふだん合わない人との交流や帰省などによる人の移動が増え、感染が急拡大するおそれがあるとして、感染リスクの高い行動を控え、できるだけ少人数での活動に抑えることが必要だとしました。

さらにオミクロン株の急速な感染拡大も想定し、ワクチンを接種した人を含めて、消毒や手洗い、密を避けること、換気などの徹底など基本な感染対策のほか、年末年始に混雑した場所への外出を避けるなど、感染拡大を防ぐための行動をとってほしいと呼びかけました。

後藤厚労相「機動的 スピード感持って取り組む」

後藤厚生労働大臣は、専門家会合で「国内外でオミクロン株への評価が少しずつ明らかになってきており、きのう、空港検疫において、機内の濃厚接触者でオミクロン株の感染が判明する割合が、それ以外の場合と同水準だったという科学的知見に基づき、機内の濃厚接触者の取り扱いを見直した」と説明しました。

そのうえで「今後の対策については、オミクロン株の科学的な評価や国内のオミクロン株による感染状況を踏まえて適時適切に検討し、引き続き機動的かつスピード感を持って取り組んでいきたい」と述べました。

1週間の新規感染者数 増加傾向続く

厚生労働省の専門家会合で示された資料によりますと、27日までの1週間の新規感染者数は、引き続き低い水準ではあるものの、全国的には前の週と比べて1.51倍と増加傾向が続いています。

一方、13の県では、27日までの1週間で感染者が1人も報告されませんでした。

首都圏の1都3県では、東京都で1.54倍、神奈川県で1.19倍と増加となっていて、埼玉県は0.97倍で横ばい、千葉県では0.78倍で減少しています。

関西の2府1県では、大阪府で1.90倍、兵庫県で2.83倍、京都府で2.21倍といずれも増加となっています。

また、愛知県では1.00倍と横ばいとなっています。

このほか、沖縄県が5.00倍、福岡県が4.75倍、栃木県が3.79倍、石川県が2.33倍、北海道が2.11倍などと増加している地域があります。

現在の感染状況を人口10万当たりの直近1週間の感染者数でみると、沖縄県が最も多く8.86人、群馬県が5.16人、石川県が3.71人、栃木県が2.74人、北海道が2.62人、東京都が1.92人などとなっていて、全国では1.27人でした。

専門家会合 脇田座長「重症化リスク小でも医療負荷」

厚生労働省の専門家会合のあと記者会見に出席した脇田隆字座長は、新型コロナウイルスのオミクロン株の重症化リスクについて「現在まで、国内での症例はすべて無症状か軽症で、海外からの報告でも重症化しにくいという情報がある。しかし、重症化しにくいといっても、感染が拡大すると入院患者が増加する可能性がある。また、感染した人の数が多くなると自宅療養や宿泊療養での管理が必要となり、医療提供体制や公衆衛生、保健所体制の負担が大きくなる。オミクロン株の重症化リスクがデルタ株に比べて低くてもそれによって直ちに医療の負荷の軽減にはつながらないのではないかという議論があった」と述べました。

また、オミクロン株の感染者が相次いで確認される中、年末年始の自治体や医療機関での対応について「地域によっては、クラスターの発生などにより、医療機関や宿泊療養施設の負荷が急速に増えてくるおそれがある。重症度に応じた入院判断が必要ではないか。議論の中では、例えば、アルファ株やデルタ株の流行でもあったように、医療機関で全員を個室にすると対応が難しくなるので柔軟に対応すればいいという意見や、濃厚接触者の検査も抗原定性キットを活用してはどうかという提案があった。状況に応じて臨機応変に対応できる体制が必要だ」と述べました。