拘束のウイグル族男性の中国送還停止を 国連特別報告者が声明

北アフリカのモロッコで拘束されているウイグル族の男性が、中国に送還されれば「拷問などの人権侵害を受けるリスクがある」として、国連の特別報告者4人は声明を発表し、送還の手続きを停止するようモロッコ政府に呼びかけました。

各国の人権状況を調査している国連の特別報告者4人は、今月16日、モロッコで拘束されているウイグル族のイドリス・ハサンさん(33)について声明を発表しました。

それによりますと、イドリスさんはウイグル族の人権活動家で、新疆ウイグル自治区の独立を主張するテロ組織と関わりがあると中国政府から疑いをかけられ、ICPO=国際刑事警察機構を通じた国際手配に基づいて、モロッコのカサブランカで拘束されたということです。

声明では、モロッコの裁判所が今月、イドリスさんを中国に送還すると決定したことに対し「送還されれば拷問などの深刻な人権侵害を受けるリスクがある」として、強い懸念を表明しています。

そのうえで「そうしたリスクを検討することなく進んでいるこの送還手続きは、人権や難民に関する国際法に反している」として、イドリスさんの送還手続きを停止するようモロッコ政府に呼びかけています。

イドリスさんの家族などによりますと、イドリスさんは中国の大学を卒業したあと、10年近くトルコに住んでいましたが、4回にわたって理由を示されずにトルコ当局に拘束されたとして、ヨーロッパへの亡命を決意したということです。

しかし、ヨーロッパへ向かう経由地のカサブランカの空港で、ことし7月に拘束され、中国への送還に向けた手続きが進んでいます。

モロッコ総領事館前 妻「解放されるまで立ち続ける」

トルコでは、イドリス・ハサンさんの妻、ゼイヌーレ・オブルさん(33)が、7歳と5歳、それに2歳の子どもたちとともに、夫の帰りを待ち続けています。

ゼイヌーレさんは、ことし7月にイドリスさんが拘束されて以来、たびたびイスタンブールにあるモロッコ総領事館で、ウイグルの同胞たちとともに、夫の解放を求めて声を上げ続けてきました。

ゼイヌーレさんによりますと、イドリスさんはグラフィックデザイナーとして生計を立てるとともに、その技術を生かして、家族が行方不明になったウイグル族のためのポスターを制作したり、独自の言語であるウイグル語を次の世代に伝えようと、教科書作りにも関わったりしていたということです。

イドリスさんが拘束されている間は週に2回ほど電話がかかってきて、およそ15分間、話すことができたといいます。

先月4日にはイドリスさんから「寒いので冬着を送ってほしい」と電話があり、ゼイヌーレさんは夫が劣悪な環境に置かれているのではないかと心配になったといいます。

今月15日にモロッコの裁判所がイドリスさんの中国への送還を認める判決を出したと、人権団体がゼイヌーレさんに伝えると、翌16日にはウイグル族やトルコ人の支持者100人以上がモロッコ総領事館の前に集まり「イドリス・ハサンに自由を」などと抗議の声を上げました。

ゼイヌーレさんは「夫は何の犯罪も犯していないのに5か月も拘束されています。夫が解放されるまで、子どもたちとともにこの場に立ち続けます」と話していました。